新入部員の紹介といつものウォーミングアップ
「みんな、新たに三人クラブに入ってくれることになった」
放課後、クラブ練習場で、御影の横に三人勧誘に成功したメンバーが緊張した面持ちでたっていた。入ってきた新メンバーに一同驚きを見せ、カティナや美夜は、噂や学生新聞で知っていた『奇跡の一日』の人達と戦えると、すでに好戦的な視線を向け、プゥは純粋に好奇心的な視線、舞先生はよくもまぁトラブルになりそうな人物達を連れてきたと御影に対し呆れた視線、種次は理知的な視線で風花はまたしても凄い人がきたと目が回るような視線で三下はまだきていなかった。
「わっちの名はシンリィなのじゃ。皆のものよろしく頼むのじゃ」
「水凪水流」
「でじ子の名前はデジュでし。気軽にでじ子と呼んで欲しいでじ。宜しく頼みますでじ」
三人に対し、暖かい拍手を送った後、メンバーの紹介になった。
「すでに知っていると思うが、このクラブの部長を務めている、戦闘科一年H組御影友道だ」
「このクラブの副部長にして御影師匠の一番弟子、戦闘科一年S組カティナよ。宜しくね」
「副部長の美夜、さっきのは偽で私こそが御影の一番弟子。宜しく」
「ぷ、み、よ(私の名前はプゥって言います。クラスは御影さんと同じだよー。みんな宜しくね~」
「顧問を務めている癒杉舞だ。後の事を考えると頭が痛いが、まぁ、宜しく頼むぞ」
「御影と同じクラスの目垣種次という。かねてから魔法科と鍛冶科から人材がほしいと思っていたのだよ。分からない所があったら、戦闘関係は御影、その他の事は私に聞いてほしい」
自己紹介が終わり、アップに移ると御影が言い、クラブメンバー達は新規のメンバー達に同情の視線を送り、シンリィ達は不思議がっていたのだが・・・・・・。
これは十回は死ねるのじゃ。
まずは軽く走ると言うことは、御影から事前に聞いていた。新規達以外は手足プロテクターみたいな物を装着していたが、初めてだと言うことで、そのまま走る。
最初だから周りは気にせず走ってくれて言われたのじゃが、とりあえず水流には勝ちたいのじゃ。
こう見えても、体を動かすのには自信はあったのじゃが、クラブの面々はすごい速いのじゃ。
三十分が経過し、カティナと美夜は競い合うようにトップを争い、一周遅れでプゥ、五周遅れで種次、十五周遅れで水流とシンリィ、二十周遅れででじ子となっている。
おかしいのじゃ、わっちは身体強化魔法に加え、風魔法を背中に送り、水流もおそらく火の強化魔法を使っておるのじゃ。だというのに差が開く一方じゃ。全力を出しているというのに、ひょろひょろの眼鏡にすら追いつけんのじゃ。
追いつけない。
水流は淡々と今の事実を口にした。元々感情の気丈は薄く、ある一点のこと以外どうでも良かった。
火を極めればそれでいい。
もちろん、今走っているのを、今できる魔法と身体能力をフルに使い、全力でやっているが、それも全ては火を極める過程。そして・・・・・・。
ちらりと水流は併走しているシンリィを見る。
汗だくになり、のじゃのじゃ言いながら隣で必死に走っていた。
ここでの勝ち負けで教え方に差がでると仮定して、隣の人物には負けられないと水流は冷静に思っていた。
みんな速すぎるでじ。でじ子の足では追いつかないでじ。
身長は一番低かったプゥよりも二回りほど低く、小学生ほどの身長。体力や力には自信があるが、速さには自信がない。
しかし、先ほど何回か何十回目かの、シンリィと水流に抜かされたが、限界ぎりぎりに見えた。
未だ全く疲れを見せない、カティナ達に比べれば、持久戦になればなるほどでじ子にチャンスはあった。
まだまだ負けないでじよ。
変わらないリズムで、全く疲れのないでじ子は、気と魔法と能力を駆使し、新メンバーで一番になるべく走っていた。
「それまで」
御影の終了の合図で、ウォーミングアップは終了した。
「っち、又引き分けかよ」
「それはこっちのセリフ」
同率一位はカティナと美夜で、少し意気が上がっており、お互いの視線から火花が散っていた。
「よ、う(よし、前より記録があがったよ~)」
三位のプゥは、記録があがったとぴょんぴょん飛び上がって喜んでいた。
「もう、だめなのだよ」
四位の種次はふらふらになり、毎回の如く倒れるように壁にもたれ床に座って貝になった。
「やったでじ、新規で一番早いでじ」
五位のデジ子は、少し疲れた様子だが、まだまだ走れるといった様子で、喜びをかみしめていた。
「「・・・・・・」」
負けた、水流とシンリィは物言わぬ種みたいに、疲れすぎて何も言えなかった。
最下位のデジ子に大幅リードしていた水流とシンリィだったが、魔力と気力が切れた時点で、徐々に追いつき、残り三十分の時点で追いついた。
「準備運動はこれで終了だ。皆は模擬戦をやっててくれ、俺は新入りを個別で教える」
水流とシンリィ、水と油みたいな二人がこの時ばかりは考えが一致する。
鬼だ・・・・・・と。
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