クラス替え試験04~プゥ対セル~
「おぉぉぉと、またしても、またしてもまたまたしても、勝ったのは0クラスです! 一体全体どうしてしまったんでしょうか。しかももしかも第一試合の様な泥仕合ではなく、圧倒的な力の差を感じました。さすがかすが眼鏡、伊達ではないのか。はたして第三試合はどうなるのでしょうか、二度あることは三度あるのか、毒牙にかかってしまうのか注目の一戦です」
第三戦。御影が一番悩んだところだ。
これはプゥから聞いた話だ。といってもプゥがあまり喋らないことに起因する話で、身振り手振りを交えて。
プゥ北海道、獣森国の小さな村で生まれた。
活発でよく動きよく喋る、ダンジョンとは無縁の足が速い普通の女の子だった。
このまま、農業を生業としている親の手伝いをし、いい人を見つけて結婚し、子供が産まれおばあちゃんになりやがて果てる。外の世界を知らないまま。
ダンジョンの事冒険者の事、世界の海の壁のこと。両親や村の大人達、常駐している冒険者から知識として教えられていたが、時々くるモンスターを見るだけで、何処か他人事だった。
ダンジョンやモンスター達は冒険者に任せて、私は私のできることをしようと。
レベル九十以上のダンジョンをクリアするとか、壁を解放するとか、そんな大それた事は考えていない。ただ普通の生活がしたかっただけだ。
二年前のその日、私の世界が崩壊した日、ちょっとした好奇心で森に行き、少しの幸運で村で唯一私だけが助かった。
五月にあった試験に怯えている訳じゃない。
フラッシュバックとして蘇る。
脅威はモンスターではなく人間だと。
その時いやというほど思い知った。
風の噂でとある人物がはいったと聞き、迷わず入学した。
目的は・・・・・・。
しかし独学で頑張っていたが、普通の村娘だったものにはこの学校はあまりにも厳しすぎた。
落ちぶれ、目的も果たせず、悔しかった。
そんな時、同じ眼をした人物に出会った。
御影友道。深い深い、奈落より深い眼を瞳の奥に宿し、0クラスに入った新人。
きっとプゥよりも酷い目にあったことがあるだろうとすぐに分かった。
私と違う点は、御影は隔絶した強さを持っていることだ。
だからだろう、御影のクラブに入ったのは。
きつくて、きつくて、絶叫し吐いたことも数え切れないほどあったが、遙か遠くにあった人影が近づいていく感覚があった。
私の長所は速さだ。魔法の適正も風が最も相性がよく、闘気や身体強化も速度より。だから一週間たった段階で瞬間の速さは、美夜やカティナに匹敵する。
「殺すなよ」
「ん、わ、み(うん、分かってるよ~。みんなで一緒にあがるんだからころさないよ~」
プゥは相手を見る。
小柄でプゥと同じ速度タイプの男、そして女を嘲る様なげひた眼。
眼が赤黒くなり、手を顔に当て気を静める。
兎族にとって眼が赤黒くなるのは殺人衝動だ。
御影の心配は種次の時とは異なる。
種次は、実力を出せるかの心配。
プゥが相手を殺さないかの心配だ。
さっきまであった濃厚な殺気が、御影の忠告で一旦は静まったが、開始したらどうなるか分からない。
クラス替え試験で、殺しは厳禁で即失格となり、問答無用で監獄につれてかれる。それぐらい殺しは重罪なのだが、それは余所の人が見ているからの対外的もので、審判を買収すれば殺さなければなにをしても許され、ダンジョンや他の日で証拠がなければ罪に問われない。
「第三試合、0クラス、プゥ対Hクラス、セルの試合を開始する」
勝負は一瞬だった。
コインが落ちたと同時に勝敗は決していた。
プゥのスピードにセルは全く反応できていない。
殺せる。刃引きされた短剣でも首に全力の一撃を加えればなんの造作もなく。
プゥとフェリスの似ている部分がある。
それは人間を憎んでいることだ。
しかし決定的に違う部分もある。
フェリスは憎しみの対象を人間全員に対してで、プゥはある特定の人物に対してだ。
フェリスには相手を殺せる力はないが、プゥにはあった。
そしてスイッチが入ると。
殺す殺す殺す殺す。
頭がそれで埋め尽くされ、唇を噛む。
だけど・・・・・・駄目、みんなと一緒に、Hクラスにいくのー!。
殺人衝動を押さえ、鳩尾を薙ぎ、セルは悶絶しながら泡を吹き失神する。
「セルの失神を確認、よって第三試合0クラス、プゥの勝利とする」
「おぉぉぉぉぉと、またまたまたたましても0クロスの勝利です。かわいくプリティーな兎っ子が、目にもとまらぬ速さやさで勝利を収めました。0クラスの3連勝は、六月のクラス替え試験では、私の知る限りありません。このままいってしまうまなのか次に期待です」
今日子がそう煽るが、現実はそう甘くはない。
四~九番手は、仲間じゃない人物達だ。
なにも力のない、すでに諦めている目。御影は降参を進めたが、審判がそれを許すはずがないと言わんばかりに力なく首を振り、五月の再現、あるいはそれ以上に鬱憤がたまっていたHクラスの面々は蹂躙する。
残虐なショーの様に手足を折り、歯を抜き、ただひたすらいたぶった。
これが待っていたと言わんばかりで、興奮して歓声を上げる一部の観客達。
虫の息で運ばれた六人。
六人目が担架で運ばれ、十人目、最後の選手がリングにあがった。
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