クラス替え試験03~種次対アジ~
「おぉぉぉぉと、第一試合から大番狂わせだぁ~、のっけからやってくれましたぁ~。Hクラスの殺戮ショーがはじまるかとかと思いきや、伏兵も伏兵も伏兵もいいところの三下選手がやってくれましたぁ~。いやいや、まさかまさかの最後はリーゼントが面だったとは私も予想がつきませんしたした。次の試合に期待です」
今日子の興奮した実況をバックに、種次は壇上にあがった。
第二試合に御影が選んだのは種次だった。
「大丈夫か」
御影が声をかける。確認のためだ
やれるのかやれないのか。
「さっきはみっともない姿を見せてしまったのだよ」
種次は反省する。
ここに入った時五月のその光景が脳裏にちらつき、不覚にも呑まれ動けなかった。第一試合に選ばれてなくて良かったと心底思う。
そうしたら、五月にやられた人達の様に負けていた。
不様に、涙と鼻水を垂らしながら許しを乞い、慈悲を願い、そしてやられている。
僕の理解がそういっているから間違いはない。
順番を決めるとき、自信過剰になり、一番先といった自分を殴りたくなる。
思えばいつもそうだ。
肝心な時に実力が出せない。
たとえ勝ちパターンを何十通りと理解し、実行すれば九十九%勝てる。そう実行すればの話だ。
肝心な時に緊張する。
昔からそうだ。二つ上に兄がいる。
二人そろって神童と呼ばれるほど頭が良かった。
兄と自分とでは、一つ明確な差がある。
それは戦闘面だ。
いくら勝ち筋が見えていたとしても一回も勝てていない。
なぜだか分からない。見えた勝ち筋が消えていく。
そんな現象が他の相手でも見られた。そして俺は失敗作の烙印を押され、それを返上しようと兄が入った学校に入ってこの様だ。
実に笑える。
しかしそこで運命の出会いが待っていた。
御影友道。見ただけでピンときた。これほどまでに勝ちパターンが見えない相手はいなかった。
誰でも最低五こぐらいは見えていたはずなのに。
迷わず御影のクラブに入り、初日が終わった後自分の特性の考察と今後の方針について、舞先生も交えて、相談しにいった。
そして御影は言った。当たり前だと。
相手の行動が分かっていたとしても、何通り必勝パターンがあっても、その通りにできなければ、それは負けも同じだと。
まず、体を鍛え、闘気を覚え、魔法の種類を増やし、できることの手段を増やせと。
「もう大丈夫なのだよ」
思考はフラットだ。種次は振り返り、いつもの冷静で理知的な表情で御影を見る。
「大丈夫なのだよ。勝ちは見えている。では行ってくるのだよ」
相手はモヒカン頭の顔が長い、百八十センチの長身の男。三十センチのダガーそれそれの指に五本はさんでいる。
ダガーには刃があり、審判を見て見ぬ振り。
初戦のHクラスの失態で上からの指示だ。
それを見ても、種次動じない。
最初の試合での三下の勇姿を見て、恐怖を硬直も怯みも緊張も消え去った。
もはや、前方にいる相手に勝つのみだ、
「第二試合、0クラス目垣種次対Hクラス、アジの試合を始める」
コインを落とし、試合は始まった。
「おっと、それは投げない方がいいのだよ」
種次はアジを手を前に翳し牽制する。
「べはぁ、観客は血に飢えてんだよぉ~。おとなしく刺されぇ」
アジは手に挟んだ全てのナイフを投げ、全て自分に刺さった。アジには訳がわからなかった。
先月の時の様にそうそうに、投げたダガーで手足に突き刺し、そこからじっくりといたぶるつもりだった。しかし刺さったのはアジの方で、手足に突き刺さり、立っていられず地べたに這い蹲った。
種次が行ったことは簡単だ、ナイフの軌道を予測し、反射の魔法をナイフの個数設置し、アジに当てる場所を指定した。
「だから言ったのだよ。投げるなと。最も貴様に勝つには五百六十通りあったのだよ」
当てなかったナイフを手に取り、種次はアジの首もとにピタリとあてる。
「生憎、私はいたぶる趣味はないのだよ。審判、判定を頼む」
もはや、アジに戦える余力はなく、第二試合も0クラスの勝利に終わった。
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