修行の成果
大量消失が起こった日から一週間が経過した。
0クラスの人間は半数近くに減り、御影のおかげで、仲間達は眠りはできているが、顔色が優れない。最も猛特訓で毎日へとへとなのと関は否めないが。
そして、ボブじいさんの口数が減り、プレハブ小屋内は雰囲気的に暗くなった。
一度大量に0クラスの人物が連れてかれるのを見て御影は止めに入ったが、古くからあるかび臭い契約書を見せられて、黙るしかなかった。
その契約書にはこう書かれている。
〇0クラスの代表者は年に三回契約者の命令を聞かなければならない。
〇契約者やクラス代表者は年に一回、双方合意の元変えることができる。
〇命令に失敗すれば0クラスの人間を差し出さなければならない。
〇差し出す人間の条件として、他者と契約していないこと、クラブに入っていないこと、他の派閥に入っていないこと。
〇差し出した人間の生死は問わないこと。
〇契約書の期限は無期限。
そこで少し一悶着があったのだが、種次がとりなし、事なき事を得た。
しかし根本的な解決にはならない。
黒幕も、なぜ昔こんな契約をしたのかも、ボブじいさんが知ってることも。
ボブじいさんは黙して語らず、御影達では全て分からずじまいだった。
次の日、クラブの面々にもこの事を話し、舞先生を筆頭に何か分かるんじゃないかと期待したが結果は同じ事で、憤慨していたカティナや、静かに怒っていた美夜、朝手伝いに来ていて、ショックを受け、沈んだ表情の風花。
とりあえず、生徒達は何もするなということで、舞先生が調べてくれることになったが、御影達以外全員が消えるのが先か、黒幕を見つけるのが先か、正直微妙なところだ。
悶々とした日々を過ごしていても、それを振り払うかのように、課題に集中し、御影も指導に熱が入った。
そして・・・・・・。
ノンダンジョン:レベル十:洞窟型:十階層
洞窟型は最もポピュラーで、一般的なダンジョンとされ、十階層毎にボスが一体設置されており、その間の五階層毎に中ボスが一体設置されている。次の階層から通常モンスターの強さがあがり、六階層や、十一階層があるダンジョンは注意が必要とされる。
この間フェリスと行った一階層のみの自然型ダンジョンはその広大な広さから、ダンジョンレベル十五でも、平均二~三日攻略に時間がかかり、レベル五十にもなると広いダンジョンは北海道ぐらいの大きさになる。
十階層はブロック型のダンジョンと同じで、階を降りると、何人も泊まれるぐらい広いセフティースペースがあり登録用のオーブと帰還用のオーブがある。
その奥には大きな扉があり、一パーティーが中に入ると、クリアするか全滅するか、帰還石と呼ばれる、購買部等で売っているダンジョン離脱用の高価な石やかなり高難易度の離脱魔法等で離脱するかしないと扉は開かない。
使用中やそうでないかは、四メートルほど上にある、埋め込まれている大きな宝石で分かり、使用中の場合は赤く光り、未使用中の場合は青く光り、ボスが倒されいない場合は黄色く光る。
ボスのリポップは五時間に一回で、次の階層がある場合には、そのまま進む事ができるが、ボスの討伐登録はされず、そのまま進んだものは、臆病者や腰抜けと揶揄されるので、するものはほとんどいない。
そして、今は扉の宝石は赤く光り、十階層のボスモンスターとプゥが戦っていた。
全長五メートル、全身が黒で目が赤い鋭く尖った犬歯が特徴的な犬型モンスター『ブラッディドック』。
ここが最初の壁となる所以は速さと状態異常にある。九階層までのモンスターより三倍ほど速く、初回の攻撃でやられる。
仮に致命傷を避けたとしても、ブラッディドックの攻撃をうけたものは、体が重くなり、攻撃を避けられなくなるため、離脱しなければやられる。
最もレベル十のノンダンジョンはいくつもあり、他の系統のダンジョンをあわせるとそれこそ星の数ほどあるが、どれも似たような感じで、冒険者や野良も含め、挑戦するパーティー全体で、初回でレベル十のダンジョンをクリアしたものは三割、離脱やパーティーの誰かが重傷や引退、亡くなったものは四割、全滅は三割。
学生の場合、生還率は上だが、大半の者が最初につまづく所だ。
プゥはレベル十のダンジョンに挑戦するのは初めてだ。
しかもパーティーではなく実質ソロ。
しかし、プゥは落ち着いた様子でブラッディドックを見ていた。
それを隅の方で気配を消し見守る御影と美夜。
じりじりと時間は過ぎていき、先に動いたのはブラッディドック。
いつもと同じように、持ち前の早さで、プゥを噛み千切ろうと動き出す。
重圧がかかる場面だが、それを難なくかわした時点で、もはや勝敗は決していた。
ブラッディドックの機動力を止めるべく、かわしながら、四つの両足を腱を気と魔力を込めたナイフで切り裂く。
「ぐぉぉぉぉぉんんん」
痛みで絶叫をあげる、ブラッディドックの前足をつたい、空中で回転し眉間に突き刺す。
成長したプゥの早さは、ブラッディウルフが死んだのを認識できないほどになっている。
初めてのレベル十ダンジョンのボス戦なのに、プゥはさほど疲れておらず、耳も垂れていなくピンとしている。
その成長にプゥ自身も驚いていた。
あの地獄の一日から一週間御影にとにかく無茶ぶりをさせされた。
闘気を使えなかったプゥと種次と三下は、二日目の日にカティナと同じ方法で御影に教えてもらい、案の定のたうちまわり気絶した。
一時間も走れなかったが、気付けば、カティナや美夜が着けていたサポーターを着け、五倍の重力化で二時間近く走れる様になった。
そこまでは、御影いわく準備体操で、最低限の体力はついたと判断され、昨日プゥはようやく個別の訓練に入った。御影以外五人いるメンバーの中の三番目の速さで、種次は、プゥと同じでサポーターを着けており後二~三日以内に合格をもらえると言われていて、三下は未だになにも着けてないない状態でひぃひぃ言っていた。
「まずは個別訓練レベル一だ。まずは緩急をつけることだ。それだけで、相手には何倍も速く見える。と、いうわけでこれだ」
御影が取り出したのは数本の木でできた練習用の投げナイフだ。
「このナイフを様々な速度で、三十分間投げる。それを全てよけきれれば、レベル一クリアだ。そして、俺が投げる場所を本能的に覚えろ。俺が投げる場所は、相手の急所と機動力を落とす場所と戦力を削ぐ場所だ」
遅いスピードで投げられたと思ったら、避けた場所に速いスピードのナイフが投げられてくる。
ここ一週間で五十回以上(それ以上は数えていない)プゥは気絶しているが、この日も足の腱の断裂、喉、心臓、と容赦なく投げられ、呼吸ができず気絶し、断裂のあまりの痛みにやはり気絶した。
凄く痛くてきついが、辞めたいと思ったことは一度もなかった。
三下は、直ぐにさぼろうとするし、愚痴をこぼしているが、カティナは尊敬と爛々とした眼で、美夜は信頼と真剣な眼で、種次は疲れていながらも意志のこもった冷静な眼で訓練していた。
その後の模擬戦で、まだまだカティナや美夜には勝てないが、手傷を負わせたり、本気の彼女達の技にもいくらか反応できるようになった。もっとも舞先生や御影には相変わらず手も足もでなかったが。
ここ一週間の出来事を考えながら、プゥは振り向きグゥサインとともに三下を除く全員が課題をクリアした。
かくいうプゥは、訓練の時、自分はどんな眼をしているのかと考えるが、答えはでなかった。しかし着実に力は上がっているとプゥは実感していた。
だから、それでいいとプゥは思っている。
だってそれは、他人の主観で、自分がその時、何を思っているのか分からないのだから。
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