0クラスの存在理由
「今日はこれで終了だ。皆よく頑張った。明日も今日みたいにやるからよろしく頼む」
あれから、カティナとプゥを御影が担当し、美夜と種次を舞先生が担当して三人一組で、二つずつ、一つ上のダンジョンで、比較的短時間で攻略できるダンジョンに潜った。尚、風花はサポート役として舞先生のところに入った。
基本的にはソロと同じで、他の二人は遠くから見ているだけだった。
どんなに苦戦し傷をおっても助けにはいかず、致命傷を負っても即座に回復させ、即死級の場合のみフォローに入った。といっても自分の最高レベルの一つ上なだけなので、そんなことになる事態は無いに等しく、皆無事にクリアすることができた。
空もすっかり暗くなり、御影と舞先生以外は心底へとへとになった状態で解散した。
ちなみに、今回のクラブ収益はクラブカードに入金され、個別の場合は生徒証に入金されるが、0クラスの人物は生徒証を持っていない。
月末にフェリスのもとにクラブ月収の何割か自動的に入金されるのだがそれはまた別の話だ。
垂れウサギ状態のプゥを背負い、眼鏡がずり落ちている種次に肩を貸し、御影は0クラスの拠点、プレハブ小屋につき、強い違和感を覚えた。
人数が明らかに少ないな。
正確に数えたわけではないが、明らかに人数が少なく、クラブ活動中きれて出て行った三下が先に戻っていて、青ざめた表情で御影に駆け寄り、プゥも種次も震えていた。
「旦那ぁ~、今日はすいませんした。これから心機一転頑張りますので、除名だけは勘弁してくだせぃ」
矢継ぎ早に懇願する三下に、御影は訳が分からず、とりあえず人が減ったことに関係していることだけは分かり、種次に視線を向けた。
「噂には聞いたことはあるのだよ。不定期に指揮科が主として、ゼロクラスの人間を肉壁としてダンジョンに連れて行く。その大半は生きて帰ってこれず、悪しき習性として、確か禁止されたはずなのだよ」
そう前置きした後で、種次は険しい顔で数十年前の話を始めた。
数十年前、ゼロクラスは今よりももっと待遇が悪かった。
四月こそ脳筋の強者が入ることもあり、なにもないのが暗黙の了解だったが、次の月からダンジョンの罠を意図的に発生させるため要員、宝箱に罠がないか開けるための要員、モンスターに突撃して、足止め要員。
カースト制度の最下層で、いなくなっては補充され、酷いときにはゼロクラスに一人もいない月もあった。
クラスが落ちたりパーティーの戦力が下がるにつれダンジョンでの生還率が下がるが、当時の0クラスは、一年で九割の人物がいなくなる。
それがなくなったのは、ボブじいさんが入ってからだ。
当時なにがあったか、ごく一部の人間しか知らず、語り手の種次自身も知らなかったが、それから、0クラスの人数の減少は劇的に押さえられ、年間でのいなくなる率が、他のクラスよりかは多いが、平均より、二割~三割ほどの増加ですんでいた。
ほとんどのものが目に生気が無く、無気力でだらだら過ごしていても、とりあえず、こんな夜更けの時間はプレハブ小屋にいた。
そんな時が長く続き、今日の突然の大量消失。
昔に戻ったのでわないかと心配するのも無理はなかった。
「そういうことで、皆が不安になっているのだよ。僕達が幸運なのは、クラブに入っていて、顧問が癒杉舞教諭という点なのだよ。大量消失の原因は僕にも分かりかねるが、とりあえず僕達の安全は八割方保証されている」
クラブの人間が誰かの思惑でいなくなれば、顧問やメンバーは当然原因を探し出し、その人物の派閥と敵対関係になり、自派閥だけで勝てそうもないなら、何処か利害が一致する派閥と結託して蹴落としにかかる口実ができる。
だから、クラブや派閥に入っているものを狙うのはナンセンスだ。
なので、三下が御影に縋りついたのも、無理のない話だ。
御影はボブじいさんの方をみると苦悩と苦渋に満ちた表情で、とても声をかけるような状態ではなく、三下を安心させ、この日はお開きとなった。
眠れないだろうと思い、御影は床に入った仲間に向かって、催眠魔法をかけたのはご愛敬だ。
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