フェリスと一緒にダンジョン探索01~技ダンジョンレベル十:自然型:森~


 時間の流れは速いか遅いかはおいといて、放課後になった。


 とりあえず、御影は受付の所に行こうと思っていたのだが。


「あなたにはお似合いの所なの、いい気味なの」


 フェリスが、三人の人物を伴ってやってきた。


 一人は虎系の男の獣人、立派な縦髪に彫りが深い顔、身長は2メートルを越す巨人で筋肉は盛り上がっており、体と顔には幾重にも傷がある。


 人のことは言えないけど初対面の女の子には怖がられそうだなと思った。


 二人目は豹系の女の獣人、顔の半分ぐらいが毛で覆われており、しなやかな体つきをしている。


 身長は180センチと女性にはかなり高い身長で、縦長の目で悠然と御影を見ていた。


 三人目は犬系の獣人の少女。大きな白い耳が特徴で顔は普通の人と変わりないが、尻尾があり体毛は白い毛で覆われている。


 今はフェリスの後ろに隠れてびくびくと怯えている。


 嫌みを言うためにきたのか問いただしたいのを我慢して、とりあえず御影は次の言葉を待った。


「まぁいいの、くそ親父に押さえられていたけど今日は私の側近の紹介なの」


「戦闘科一年E組剛我だ。わけあって今まで一緒に入れなかったが、お嬢を守る同士として仲良くしよう」


「解除科一年B組ジュリよ。剛我とは腐れ縁で、一緒にフェリスちゃんを守ってきたの。同じ理由で歯がゆい思いをしてた。ぽっとでのしかも普通人と仲良くできるかわからないけど邪魔だけはしないでよね」


「えっとその、指揮科一年D組ラビです。あのその、フェリスさんとはクラスメイトで友達です。えっと、よろしくお願いします」


 剛我は友好的に、ジュリは威嚇し、ラビはどちらともいえず、少し声が震えていた。


「御影友道だ。新参者だけど宜しくな。で、用事はそれだけか」


 本音を言えば予定があるのでお引き取り願いたいが、契約しているのでそうもいかなかった。


「そんなわけないの。死ねなの。今からダンジョンに行くから着いてくるの」


 このメンツで行くのかと、剛我の方を見る。


 戦力外二人いるから、安全面を考えても最低でも後二人は必要だと思うのだがな。


 剛我は肯定するように頷く。


「どのダンジョンに行くのか」


「聞いて驚くの。技ダンジョンレベル十。これで私を馬鹿にするのはいなくなるの」


 おいおいまじかよ。


 大方誰かにやじられてかっとなってのことだろうが、よりにもよってその選択肢は無いだろうと、御影は内心毒づく。


 技ダンジョンは罠が多いため、一度失敗すると、レベル十とはいえ、どんな危険性があるかもわからない。だから、今日中に適当なダンジョンを二、三行きたかったが、こうなってしまっては仕方がない。


「そういえば、ラビ・・・・・・さんと契約しているものはいないのか」


 呼び捨てにしようとしたが、フェリスが睨んできたので言い直す。


 舞先生から指揮科は特権階級、いわゆる貴族のような人達が、他学科と契約して指揮する・・・という学科だ。


 より強いものを雇い、より高いレベルのダンジョンをクリアすることで箔をつけ、親は、階級の中で優位に立てる。


 そういう反吐がでるサイクルだと。


 だからまかりまかって平民が指揮科に入ったら即座に潰され、獣人はこの学校では差別の対象となり、獣森国の学園では逆の立場になる。


 そして、他学科の上位クラスで庇護に入ってないものは同様に潰される。


 いわゆる縦社会なのだ。


 だから最低でも二人ぐらいは契約しているのだろうと踏んでいた。


「あのそのえと、きょ今日はいないです」


 頭痛がしてきた。





~技ダンジョンレベル十:自然型:森~


 受付で登録を済ませ、御影達はダンジョンに来た。


 今回は自然型と呼ばれるダンジョンで、何らかの地形となっており今回のタイプは森だ。


 崖の上がスタート地点で見渡す限り、木木で生い茂っており、雄大な川に、今はモンスターは見えないが、鳥や動物達が生き生きと生活している・・・・・・まさしくジャングルのようだった。


 事前の説明で、一回層だけだと分かり、ゴール地点まで行けばクリアとなる。


 ここまであえていわなかったが、御影はもはや我慢の限界だった。


「お前等な、ダンジョンなめてるだろう」


 普通は事前に話し合いをし、購買で必要なものを買い、万全の状態で挑むものなのだが。


 服装は、指揮科の二人は紺色のブレザーにスカート。食料無し、薬品類無し、着の身着のまま。


 受付の人には苦笑され、周りの生徒には嘲笑された。


 当事者でないなら、御影も馬鹿だなと思っていたことだろう。


 御影が再三に渡って忠告してもフェリスは聞き耳を持たなかった。


 おそらくチュートリアルダンジョンみたいなのだと高をくくっていたのだろう。


 フェリスの目が泳いでいるのを見て、そう確信していた。


「お嬢、ここは撤退した方がいいと愚考します」


 剛我は、そう提案する。


 今回のダンジョンアタックは、チームとして百%失敗するのは目に見えていた。


 御影がフェリスに注意していた通り、人員や用意が足りず、見切り発車で準備不足。


 これもフェリスの経験になると思っていた。


 失敗というものは多ければ多いほど、次への糧となる。


 だから、フェリスにはどんどん失敗してもいいと剛我は思っていた。


 なんつーか大人だなほんと。


 御影の様に、ただきつく言うのでもなく、諭し、成長を見守る。


 俺は子供だなほんと。


 こういう格の違いを見せられると、御影はほんと嫌になってくる。


 異世界に行く前は、内気な心優しい少年だった。


 しかし、そんな少年はもはや存在しない。


 得た力は大きかったが、その分、失ったものも大きい。


 御影の根幹に根付くものは力だ。


 権力がない力なきものは淘汰され、押し潰され、なにもできないまま死んでいく。


 ただ、口だけの者を見ると、我慢できなった。


 それが良くないことだと分かっていたとしても。



 撤退か続行か。二拓をフェリスは迫られていた。


 クソなの、聞いてたのと違うの。


 チュートリアルに毛の生えたダンジョンで、誰でもクリアできる・・・・・・と散々嫌味を言われたから来たのに。これで帰ったら良い笑い者になるの。


 せっかく自分の仲間と友達がかえってきたのに、それに、くそ御影に舐められるのは嫌なの。


 フェリスは自尊心から選んでしまう・・・・・・最悪の選択を。


「続行なの。御影は先頭なの。次にジュリと剛我、後方に私とラビ」


 御影は信じられないといった様子でフェリスを見る。他の者も一様に動揺していた。


 まさかと思った。誰がどう見ても失敗する。泥船には誰も乗らない。そんなことは常識だ。


 それを今やろうとしている。


 百歩譲って行くとしても、斥候兼罠解除のジュリが先頭に行くのは常識だ。


 心情的にどう思っていたとしてもきちんと判断できない者は三流だ。


 契約してなかったら、あほらしくて帰っている所だった。


「お嬢の格好では森に入るのは危険すぎます。それに準備も不足しています。後日、来ましょう。その時は必ず攻略するとお約束します」


「剛我の言う通りだよ。お嬢、また今度にしましょうよ」


「そっそうだよ、また今度の方がいいよ」


 三人が説得にかかるが、フェリスは頑なに首を縦に振らない。


「何で今日に拘るんだ。後日来ると行ってるからそれでいいじゃないか。フェリスだけじゃなく、全員が怪我をする可能性がある。その責任がとれるのか」


「うるさいの、黙れなの。ぼさっとしてないで御影行くの。死ぬの」


 言いたいことはたくさんあったが、いい薬になると思って、フェリスに押し切られる形でダンジョンを進むことに決まった。

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