全力で殿下の想いが届くようにお手伝いさせていただきます

 その日から、なんだかんだとこき使われる日々が始まったのだった。

 

 ある日は、書類仕事が大変で疲れたから、膝枕で寝かせろ。

 ある日は、視察に行くから、お前も付いてこい。

 ある日は、他の令嬢の相手は面倒だから、お前が俺のダンスの相手をしろ。

 ある日は、俺の膝に座って、俺に黙って撫でられろ。

 ある日は、えとせとら、えとせとら。

 

 気がつけば、婚約者だったときよりも距離が近づいていってるんですけど!!

 

 それに、いつもいつも用事を言いつけられて、折角第二王子のスイーティオ殿下とご友人で側近候補のイクストバル様が側に居るっていうのに、ゆっくり堪能することが出来ない!!

 

 うっとりとお二人の仲睦まじいお姿に見入っていると、カウレス様が不機嫌な様子でわたしに無理難題を吹っかけてくるんだもの。

 

 その所為で、気がつけばカウレス様のご公務のお手伝いをしている毎日。

 

 もう!!

 どうして、わたしの趣味の時間を邪魔するのよ!!

 

 お気づきかもしれませんが、わたし腐ってます。

 

 見目のいい麗しい男性を見るとつい掛け算したくなるお年頃なんです。

 デュフフ。

 

 でも、一人だけどんなに見目麗しくても掛け算できない人が居るのよね。

 そう、カウレス様です。

 カウレス様は、とても見目麗しくて理想の攻め様なのだけど、何故かしら?

 どうしても、カウレス様でのカップリングが思い浮かばないんですよね?

 


 まぁ、そんなことはどうでもいいんです。

 今はそれよりも婚約破棄してくれたカウレス様の奴隷扱いに納得がいかないんです。

 

 色々用事を言いつける割に、最終的にはカウレス様がそれを片付けてくれたり、呼びつけたくせに「お前はそこに座ってニコニコしてればいい」って言うんですよ?

 

 まぁ、近くにスイーティオ殿下とイクストバル様がいたのでついつい顔が緩んでしまいましたけども。

 ええ、ニコニコと言うよりは、によによ?にやにや?かしら……。

 でも、そんなだらしない顔を見られることには、流石のわたしも耐えられないので、俯いて顔が見えないようにしながら、視線だけを向けて麗しいお二人のイチャイチャを楽しむ日々です。

 でも、わたしが俯いているとカウレス様は、いつも意地悪をしてきます。

 

「ソフィエラ、ちょっとこれ読み上げて」


「ひゃい!」


 突然声を掛けられたわたしは、驚いて変な声を出しながら顔を上げていたんです。

 そうしたら、意地悪なお顔をしたカウレス様が、わたしの伊達メガネを取り上げて、そのモダンを唇ではさみながら言ったんですよ。

 というか、人のメガネ咥えでエロい表情しないでください!!もうそのメガネ使えないじゃないですか!!

 

「スイーティオを見過ぎだ。あいつは好きな女がいるからやめておけ。それよりも、俺は疲れたからその書類を読み上げて聞かせろ。少し休むから膝を貸せ」


 そう言って、ソファーに座るわたしの横に座ったと思ったら、ごろりと横になってわたしの太腿を枕代わりにして瞼を閉じたの。

 わたしは、いつもの横暴にため息を吐きつつも、逆らうと後が怖いので言われた通りに渡された書類を読み上げた。

 

 読み上げながら、先程言われた言葉を思い出していました。

 スイーティオ殿下の婚約者は、突然居なくなったということをです。

 当時は、四大公爵家のイグニシス公爵家の失態に、わたしの家も含めて色々責め立てたのだけど、当の本人であるスイーティオ殿下が、執り成して大事にはならなかったのだけどね。

 

 

 そんなある日のことです。

 カウレス様はわたしにある依頼をしました。

 

「ソフィエラ、お前に頼みがある。大切な人にドレスを贈りたいから、協力しろ」


 その言葉にわたしは何故か胸が苦しくなった。

 大切な人にドレスを贈りたい……。カウレス様はそう言ったのです。

 気が付きたくないけど、その言葉でわたしは気づいてしまったの。

 この面倒くさい王太子殿下を憎からず思っていることにだ。

 でも、これは自業自得だ。

 自分の本当の気持ちをきちんと考えもしないで、婚約破棄を願ったのはわたしなのだから。

 だから、カウレス様が想い人と結ばれるようにがんばろう。

 そして、わたしはカウレス様の幸せを見守りつつも、美男子、美少年達のくんずほぐれつを楽しんでこれからの人生を過ごしていこう。

 

「はい。かしこまりました。全力で殿下の想いが届くようにお手伝いさせていただきます」


 わたしがそう言ったとき、カウレス様は何故かとても腹黒そうな表情を一瞬したような気がしたけど気のせいだよね?

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