自称地味っ子公爵令嬢は婚約を破棄して欲しい?

バナナマヨネーズ

お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!

「お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!」


 わたし、ソフィエラ・アーエルーナはとうとう言ってしまった。

 だって、公爵令嬢のくせに地味メガネのわたしと、青銀の美しい御髪に王家特有の金色の瞳の貴公子では全然まったくもって釣り合わなすぎるのだもの。

 1年前に、突然王太子の婚約者として選ばれたわたしは、ただただ困惑していた。

 

 王太子は、現在20歳。

 そう、結婚していても可笑しくないご年齢なのにも関わらずそれまで婚約者の「こ」の字もなかったのだ。

 

 あんなに、見目麗しく王太子というステータスもあるのに不思議でならないわ。

 

 でも、一年前のことでした。

 わたしが14歳の時に、何故かわたしがその婚約者に選ばれたのだ。

 寝耳に水とはこのことだわ。

 わたし的には、「冗談じゃないわよ!!」と言ったところなんだけど。

 わたしはそれを立場上、拒否することが出来なかった。

 悲しいことにわたしは、四大公爵家のアーエルーナ公爵家の人間だったから。

 

 だけど、わたしは物申したい!!

 だってわたし、アーエルーナ公爵家の次女として生まれたけど、すっごく地味で王太子妃なんて無理無理!!

 それに、わたしには人に言えない秘密の趣味があったから人目にさらされるような立場なんて絶対になりたくなかった。

 そのために日夜目立たないように、敢えてもっさりとした髪型に伊達メガネ、野暮ったいドレスを身にまとい息を潜めて生きてきたのだ。

 わたしの隠れた趣味を知っているお姉様は、いつも困った顔をしながらもわたしを助けてくれたのよね。

 

 だけど、そんな立場になった日には、わたしの楽しい趣味のデュフフ。おっといけないいけない。

 目立つような立場なんてごめんよ!!

 あっ、でも王太子の婚約者になったら、第二王子とそのご友人のツーショットを間近で見られると思うとちょっと惹かれてしまうわ。

 っ!駄目よ、目先の欲望に溺れてしまえば地獄行き決定なんだから!!

 

 そんな訳で、わたしは絶対に、王太子のカウレス・エレメントゥム・アメジシスト様の婚約者なんで絶対になりたくないの!!

 

 だけど、気弱なわたしはそんな事言えるわけもなく……。

 こうして、一年ほど耐えていた訳です。

 しかし、しかしです。

 とうとう耐えられなくなりました。

 ええ、ええ!!だって、カウレス様ったら、キラキラの青銀の長い髪が美しくて、あの金色の瞳で見られたら、いくらこのわたしとは言えうっとりしてしまうんです!!

 耐えられません!!あんなに美しい王太子殿下にこんなわたしが婚約者として隣りにいることに!!

 わたしは、遠くから麗しい男性たちを見るのが好きなのであって、麗しい男性のそばにいることを望んではいないのです!!

 

 だからわたしは、とうとう言ってしまったのです。

 

「わたし、すごく地味で、殿下の婚約者だなんて無理です!お願いですから、わたしとの婚約を破棄して下さい!!破棄してくれたら、わたしの出来る範囲でなんでもしますから!」



 そう、この言葉がわたしの運命を決定付ける引き金になるだなんて思いもしなかったわ。

 

 だって、カウレス様ったらあっさりとわたしの言葉に頷いてくれたものだから、わたしは嬉しくって嬉しくって、話を最後まで聞いていなかったの。

 そう、この時カウレス様はこういったのよ。

 

「分かったよ。とても残念だけど君との婚約を破棄するよ。だけどね、君は言ったよね?何でもするって?言質は取ったからね?だから、俺のお願いを叶えてくれたら婚約破棄を考えてあげてもいいよ?」


 そう、こんな恐ろしいことをあの麗しいお顔で言っていただなんて……。

 でも、わたしは、カウレス様の口から出た婚約を破棄するって第一声に舞い上がっていたんだもの。

 

「カウレス様!!ありがとうございます!!」


「それじゃ、私のお願いを聞いてくれるかな?」


「はい!!なんなりと!!」


「それじゃ、俺の奴隷になってくれるよね?」


「は?」


「だから、俺の奴隷だよ」


 こうして、私は婚約者から一転、カウレス様の奴隷になったのです。

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