運命

 気がつくと、オレは暗い宇宙空間を漂っていた。なにをするわけでもなく、ぷかぷかと漂うのだ。

 周りにはオレと同じような存在がたくさんいて、やはり同じようにぷかぷかと漂っていた。

 オレはいったいなんのために存在しているのか。永いこと漂っていると、こんなことを疑問に思ってしまう。

「なあ、オレたちはなんでこんなところを漂っているんだろう?」

「さあな。こんなところで生まれたからだろうよ」

「なんのために生まれたんだろうか?」

「それがわかったら、ここにはいないだろうさ」

 仲間たちも、オレと同じような疑問を抱いていた。ときおり、同じような会話が繰り返される。

「ここは暗くて寒い。あっちのほうにきれいな輝きがあるだろう。行ってみたいな」

「オレも何度もそう思ったよ。でも、オレたちは動けない」

 仲間の言うとおりだった。動きたくても動けないのだ。動き方がわからない。ただただ漂うことしかできなかった。



 いつもと変わらぬように漂っていると、突然使命感のようなものが芽生えた。行かなくてはならない。オレは引っ張られるように動きはじめた。いままで動き方がわからなかったのが嘘のように。

「おーい。どこに行くんだ?」

 仲間が呼びかける。

「わからない。でも、おれは行かなくてはならない。やるべきことを見つけたんだ」

 仲間たちの姿が遠ざかっていく。

 オレはどこを目指しているのかもわからなかった。だが、進むべき場所はわかっていた。道がわからなくても、星の輝きが道しるべとなってくれた。

 かつてはきれいな輝きのほうに行ってみたいと思ったが、いまはどうでもよかった。オレにはやるべきことがあるのだ。さまざまな色の星の輝きを頼りに、オレは宇宙空間をひたすら進みつづけた。

 青い惑星が見えた。いままで見たどの星よりもきれいな星だった。

 これがオレの目的地だ。初めてくる場所だが、オレにはわかった。

 惑星に飛び込む。大気圏を突き進む。

 オレは熱さを感じた。燃えている。燃えてどんどん小さくなっていく。自分が燃え尽きるであろうことがわかった。これでいいのだ。オレの使命は果たされる。意識を失うさなか、オレは達成感と満足感に包まれた。いままでの全てが報われる。



 青い惑星。地球の地上。

 手をつないだ親子が土手沿いの道を歩いていた。

「あ、見て。流れ星」

 子どもが空を指さす。一筋の輝きが空を駆ける。

「ほんとだ。急いでお願いごとしなきゃ」

 子どもは母親の手を離し、両手を合わせた。目を瞑り、願いごとを祈る。母親は子どもの頭を撫でながら、空を眺めている。

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