第3話 Resign (負ける)

女黒騎士と耽美なるパラノイア

猿芝居かめ

第3章 Resign (負ける)


俺の名前は代田史牢(シロタ シロウ) 14歳。

突然、異世界に召喚され、

全身漆黒、厳(いか)つい鎧に身を包む銀眼美女騎士に人生最大の恥辱の限りを尽くされ、

拉致されてしまった。



あれから――――――――

俺は緑豊かな美しい森の山小屋で養生させられている。



奴との生活にも慣れてきた頃...


「黒騎士・・・」


『ん?シロウどうしたのだ』


「俺、一生帰れないんだろう...」


『あぁ、そうだな』


このやり取りを何回繰り返したであろう。

俺は、希望を捨てきれずにいる。


だが、今 縋(すが)れるのは、

俺の希望を否定し続ける

コイツ《元凶》だけで_________。


「・・・この世界で、どうしたら良いんだろうな。」



『お前の事は私が永遠に養ってやる』


「そういう事を気にしてるんじゃない」


『・・・前にも話したが、黒き騎士は魔神との契約で生まれ変わる事ができない。その代わり、白き者に13回心臓を抉(えぐ)り出されなければ永久に生存できる。』


「だから、俺はこの世界で死ぬ度にずっと生き返させられるってのか。ジジィのまま...」


『それは、....すまない。

私は、呪いで18歳のままだからな。』


「なんか腹立つな」

『まぁ、聞け。』

「・・・。」


『以前のお前はこの事を了承していた。』


「いや信じられない。そんな事、見に覚えないんだけど」


『お前が、私を庇って瀕死状態になり、こちらへ呼び戻そうと急いだが、白き者の清廉(セイレン)な魂はすぐに

現世の苦しみから解放され転生させられてしまうのだ。

それは、常人の転生速度と比にならん速さでだ。』


「俺が、望んだ.....?」

と、でも言うのか。これを。


『だから、お前の人格をたもったまま蘇らずに、転生後の魂が引き戻された。』


「待てよ。黒騎士は不死身みたいなもんだよな。なんで、俺はお前を庇って死んだんだよ。」


『黒き騎士が負傷した場合、その傷は生涯癒える事はない。無論、それに伴う苦痛もだ。死なないとはいえ動く事が出来ない事はあるのだ。』


「要は、戦いで負傷して動けない黒騎士を庇ったって事か?」


『話は、そんな簡単なものでは無い。私を奇襲したものは白き者だった。』


「その、黒騎士を殺せる奴か...」


『私は、血ヘドだらけとなり無惨にも12回心臓を抉られた。』


「その時、俺は何してたんだよ。」


『・・・。』


「おい。」


『すまない........』


「?へ」


『す...ま.....な...』


「だから、何が」


『私の、責任だ、全部、

だから........』


「はっきり言え。」


『..........................ご、拷問を、受けていた...........。』

  

それは、

黒騎士が始めて見せた

動揺だった。


『.....わ、た、私を癒した罪で.........だな..』


薄い唇が震え戦慄(わなな)く。


「え・・・?黒騎士って傷が治らないんだろう」


『あぁ...生涯癒えはしない。

ただ、白き者なら1日だけ黒き騎士を癒す事ができる。』


「俺は毎日、お前を癒していた訳か?」


『...そうだ。鎧で見えないが、お前がいない2年間は胸に穴が開いたままだ。』

 

「そうか」


何だか、俺は黒騎士が惨めで可哀想に見えた。

________________________


あの時

小屋に着いた頃は、

しばらく寝たきりで、

ようやく体が回復して自分の姿を見た時は驚いた。


なんてったって、

身長150cm程の小さな老人になっていたからだ。


最初、召喚された時は、頭から体まで深いフードに覆われていて、自分でも分からなかった。


そして、俺が異世界に呼ばれた理由なのだが、


何故、ロウシの体にシロウの魂が入ったのか。

儀式をしている間に光明で清廉(セイレン)なロウシの魂は転生してしまった。体のみが取り残された。無理矢理 転生した魂を持ってきたので、こんなことになってしまったそうだ。


黒騎士は、

小屋に着くと口を開き、

信じられない事を言った。


《『私は、お前が死んでから

狩り以外は、あの建物に籠りきりだったから、ここは

お前のために見つけたんだ。』》


《「狩り?」》



《『あぁ、お前を蘇生させる為には、人間(信仰をもつ者)を贄(にえ)とし、そして、多くの血が必要だった。』》


《「...人を殺し、た のか」》


《『知性がある生物の人の血でないと儀式は成立しない。』》


それは、願いを確実に成就させる事ができる魔神に供物を貢(みつ)ぎ、

深い代償の跡を残すから鬼跡(きせき)と言われる所業らしい。

言わせてもらうが、

こんな事をして、

俺を筆頭に、こんな野蛮で罪深い行いをした彼女を誰も許しはしないだろう。


だが彼女は、そんな非情さがあるとは思えない程にとても献身的だ。


分からない。

奴が彼女が黒騎士が。

何が本当なのかも。

訳がわからない。


混乱。混沌。迷走。


頭が痛い。痛い。痛い。痛い。何か思い出しそう。痛ッゥ___________________《《《《《《《《《《《《《《《《《《

《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《《

ザザザザザ》》》》》》》》


《《『何故、体が動かなかったか、分かるか?穢れだ。

お前は聖なる属性。すなわち白き者』》》


_________________

___________

______



 

_________________

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______


...


_________________

___________

______


《《『怪我をしたら、永遠に癒える事もないしな。痛みを感じ続けながら生きるのが、黒騎士の定めなのだ。

その代わりにタフな命と力を得る。』》》



《《『ただ、方法がない分けではない。

白き者のヒールで

一日位は一時的に傷も癒える。ただ、深淵なる者に毎日ヒールしようなど頭のおかしい奴は存在しないがな。』》》

》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》》ザザザザ――


「ッ.........今のは.........?」






次回へ続く。

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