(四)

 十五分後、臨海署の二人と県警の二人は一五番倉庫前に戻ってきた。

「いたか」

 大橋が聞いた。

「いえ、中には」

 上原が答えた。

「外はどうでした?」

 肩で息をしながら鉢山が聞いた。

「こちらも、ダメでした」

 息を切らしながら東山が答えた。

 すると大橋は大きな声で「クソっ!」と言って右足で地面を踏みつけた。

 上原が驚いて大橋の方を見て「どうしたんです」と言った。

「わかっていないのか。これは始末書だけではすまないかもしれないぞ」

 上原が驚いて「えっ」と声を上げた。

「肝心の証拠を紛失したんだ」

 鉢山が上原に言った。

「そうだ。証拠を押さえそびれたんだよ。しかもその新人刑事とやらが、『怪盗広尾』だった可能性が高い」

 大橋は右手のこぶしに力を込めながら言った。


(続く)


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