(二)

 広い通路の左右には倉庫の建物が数百メートル先まで立ち並んでいた。倉庫の壁面にはめいっぱい大きな文字で「時田倉庫」と書かれていた。倉庫の重厚そうな鉄製の扉には手前から1、2、3と算用数字が描かれていた。倉庫番号なのだろう。

 パトカーは、敷地に入る際に門を通り抜けてきた。そして一番手前の倉庫の入り口前で停まった。県警が来た様子はまだなかった。つまり県警より先に現場に到着できたようで、鉢山は少し安心した。署轄の刑事が現場へ一番乗りを逃したら、面目丸つぶれだからだ。

 下車した三人は一番倉庫にある事務所に向かった。その途中で鉢山が上原に聞いた。

「場所はどこって言ってた?」

「一五番です」

 上原が手帳を取り出しに見ながら答えた。

「一五番のどこだ。倉庫はでかいんだぞ」

 そう言いながら三人は事務所の扉を開けて中に入った。

「井荻林の名義で預けてあるらしいです」

「いおぎりん?」

「はい、井戸の井、荻窪の荻、そして林と書くそうです」


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る