夏と扇風機と

「われわれは〜うちゅうじんだぁ〜」

「部長扇風機の前に居ないでくださいこっちに風が来ないじゃないですかぁ」


 梅雨も終わり季節は夏。

 聞こえて来るセミの鳴き声、蒸し風呂のような部室、ただ寝ているだけで額に汗が浮かぶ。

 田舎の夏は涼しいと言うがそんな事はない。

 エアコンの無い分かえって暑いまである。

「うるさ〜い、扇風機があったらやらなきゃダメだろ〜逆にやらない方が扇風機の神様に失礼だぁ」

 この暑さに部長もやられているようだいつものような元気が感じられない。

「いやどこの神様ですかそれ、その神様エアコンの神様に職奪われてますよ〜ニートですよきっと」

「なんだとぉエアコンの神様ごときが調子に乗るな〜変声機能追加して出直してこい」


 そして沈黙が訪れる、この暑さで会話をするのも疲れる。

 僕はゴロゴロと床の冷たいところを探し始める。

「あ〜床冷たくて気持ちい〜」

 冷たいところを見つけては頬をつける、冷たくなくなるとまた新しい冷たい場所を探し始める。

 ゴロゴロ部室の中を転がり回る。

「おい正宗ぇそこからは私の領地だぁ、侵入禁止だぁ、ビザを持って出直せぇ」

「良いじゃないですかぁ〜、みんな同じ人間じゃないですかぁ〜、人の心に国境はないですよぉ〜」

 また会話が途切れる、暑すぎて全てのことにやる気が起きない。

 地球温暖化恐るべし。

「というか鈴ちゃんこんなに暑いのに良く平気で寝てられますねぇ」

「そうだなぁ」

 そう言って部長は立ち上がると鈴ちゃんを頬をつつき始めた。

「ん?こいつ大丈夫か?」

 いくらつついても反応がない。

「部長、なんかヤバそうですよ!熱中症ですよこれ!やっぱりこんな暑い中寝てたらヤバイですって!」

「おい鈴起きろ!死ぬなぁー!」

「ダメですって部長!一旦落ち着いて早く救急車呼ばないと!」

 早くしないと危険が危ない。

 こんな時は円周率を数えよう!

 ダメだ3しか出てこない。

「こんな時は慌てず騒がず110番に、」

「バカ!!それは警察だろ!113番だろ!」

「部長それ電話故障した時にかけるやつです!」

 僕たちがギャーギャー言っていると。

「何ですか、うるさいですよ、睡眠を邪魔しないで欲しいですよ!」

「うわ!生き返った!」

「失礼ですよ!人をゾンビみたいに扱わないでくださ、、い、」

そう言うと鈴ちゃんはパタリと倒れる。

「ぎゃー本当に倒れたー!」

 そこからはまたも大騒ぎ。

 その後何とか鈴ちゃんは一命を取り留め(そんなに重い話ではない)

 部室に平和が訪れた。

「熱中症は怖いなぁ」

 こまめな水分補給の重要性を僕は再確認するのだった。






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い な か ぶ!! 佐藤智 @satosatou

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