私は見た! 2
ジメジメした梅雨も終わり季節は夏に近づく。
そろそろ扇風機を出す頃かなぁと思っていると
「私は見た!」
どこかで聞いたようなセリフを言って部長は部室にやってきた。
「どうしたんですか?今度は何を見たんですか?
猿ですか?狸ですか?熊ですか?」
「そんなもんはいつでも見られるわ!私が見たのはUFOだ!ついに地球を侵略に来たのだ!指と指合わせるのだ!ぺこぽん侵略になのだ!」
いや最後に至ってはもう緑のカエル宇宙人になっちゃってるよ。
「前もそう言ってUMA探しましたけど、居たのただの貧乏なギャンブル依存症の人じゃないですか」
「今回は本当なのだ!ちょうど鈴の家の田んぼで見たのだ!」
「さぁ見に行くぞ正宗、ちょうどいいところに来た鈴も行くぞ!」
「何ですか、行くってどこにですか、居残りの勉強疲れたから寝たいですよ」
課題が終わらず遅れて部室にやって来た鈴ちゃんもそのまま連れて行かれる。
本当に部長は自由奔放で、小学生みたいだなぁ。
そんな事を思いつつ僕も部長達の後を追った。
田んぼに着くまでの間、部長はどこぞのダー○ベイ○ーのテーマを口ずさんでいた。
うーん、フォースの力を感じる。
フォースの導きに従っていると鈴ちゃんの家の田んぼについた。
「結局何するですよ、私何も聞かされてないですよ」
「また部長がUFO見たとか言ってるんだよ」
僕が鈴ちゃんに説明していると
「正宗あれ見ろあれ!」
突然部長が声を上げた。
部長が指差す方向を見ると、謎の飛行物体が田んぼの上にいる。
「あ、あれは!UFO!!」
「鈴ちゃんも見てよUFOだよ!すごいよヤバイよ!」
驚きのあまり語彙が死んだ僕を横目に鈴ちゃんは落ち着いた様子で言った。
「あーアレうちのドローンですよ」
「どろーん?」
僕と部長の声がハモった。
「最近うちの父さんが買ったですよ、農薬撒いたりするのに使うらしいです。いい大人がすっごい興奮しててキモかったですよ」
お父さんが不憫すぎる、男はいつでも少年の心を忘れないだよ、永遠の中二病なんだよ。
「ちぇっまたUFOじゃなかったじゃんつまんねーの」
部長はUFOじゃないと分かると興味を失ったようだ
「隕石でも降って来ないかなぁ」
なんかものすごく物騒な事を言っている。
まぁきっと、こんな田舎に宇宙人が来てくれることなど無いし、どこかの都会っ子と中身が入れ替わることもない。
平和を噛みしめながら何の気なしに空を見ると、空にかかった飛行機雲が夏の訪れを感じさせるようだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます