田舎の大賢者
学校からの帰り道、曇り空の下を水たまりをまたいでゆっくり歩く。
隣の部長は水たまりも気にすることなく、ばちゃばちゃ突き進む。
てかこの人水たまり楽しんでるよ。
「なぁ正宗、おばあちゃんとかおじいちゃんってエスパーかなんかなの?」
部長が近くを歩いているおばあちゃんを見ながら言った。
「どういう事ですか部長、部長のおばあちゃんやおじいちゃんはスプーンでも曲げるんですか?」
それかメンタリストなのかもしれない。
「ちげーよ。ほら、おばあちゃん達って家の前に置いてある野菜誰が持ってきたか一瞬で当てるじゃん?」
「確かにそうですねー」
田舎では家の前に野菜が置いてあるのはよくあることだ。
それはもう、傘地蔵やごんぎつねのようなレベルで置いてある。
兵十にもその能力があればゴンを殺さなくて済んだのに。
「ゴンお前だったのか」
「なに言ってんだお前」
どうやら心の声が漏れてしまったらしい
「まぁいいや、他にもおばあちゃんっていつも飴持ってたり、天気当てたりするじゃん。不思議じゃね?」
「まぁそれは長いこと生きてるからじゃ無いんですかね」
「そうなのかなぁ、まぁ遊び人もレベル20にすると賢者になるしなぁ」
ということはギャンブル依存者の安井さんはそろそろ賢者になってもいいころだと思う。
そんなことを思っていると前の方に近所のおじいちゃんが立っているのが見えた。
「あのじいちゃん何やってんだ?すごい集中してるっぽいけど」
だんだん空模様があやしくなる中、集中して山の方を見つめている。
「きっとただならぬ事情があるんですよ、そっとしときましょう」
そう言って僕と部長が後ろを通り過ぎようとした時
「ギガデ〇ン!!!」
おじいちゃんが最強の雷呪文を唱えた。
その瞬間、山に雷が落ちる。
遅れて音がやってくるまで僕と部長は呆然としていた。
「わしも年じゃのう」
そう言っておじいちゃんは去っていった。
その背中はさながら伝説の勇者のようだった。
「やばいってマジやばいってやっぱエスパーだったよ!大賢者だったよ!レベルカンストしてるよ!」
部長が興奮気味に言う。
どうやら田舎暮らしをすると力に目覚めるようだ。
遊び人もレベル20で賢者になるように、田舎暮らしも極めれば勇者になれるらしい。
そうかやはり僕が伝説の勇者だったのか。
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