人生ゲーム 1

梅雨入りした、空を覆う灰色の雲とザーザーと強くなったり弱くなったりしながら降り続く雨、湿気でベタつく服。

ただの高校生の僕に雨に趣を感じる、などということは無理なようだ。

「ひーーーまーーーだーーーー」

部長が言う。

「顔に見える木の木目を探してると意外と楽しいですよ」

あとは、テロリストが来る妄想したり、人の名前しりとりなんかも暇つぶしになる。

「そんなん楽しいわけねぇだろ、よし、人生ゲームやるぞ」

部長にばっさり切り捨てられた。

「でも、人数三人じゃ微妙ですよ、後一人くらいはいないと」

ガラクタボックスから人生ゲームを取り出している部長に言う。

「大丈夫だ助っ人を呼ぶ」

そう言って人生ゲームを机に置くと部長は部室から出て行った。

仕方ない、鈴ちゃんを起こしておくか。



帰って来た部長は先生を連れて来ていた。

箕輪由梨先生はこの学校唯一の勉強が教えられる先生だ。

名前の通り、鈴ちゃんの姉にあたる。

ジャージにメガネ、後ろにひとまとめにしている髪

やる気のなさそうな顔、ちゃんとすれば美人だろうにもったいない(熊にドッグフードをあげようとしたりするけど)

てかこの人ジャージに名札ついてるし、佐藤って誰だよ。

「さぁ人生ゲームやるぞ!」

「先生も忙しいんだよぉ、お仕事あるんだよぉ」

「さっきまで寝てたじゃ無いですか、嘘つかないでください」

部長がピシャリと言い放つ。

「じゃあルール説明するですよ」

なんだかんだで、みんなが卓につきゲームは進行し始める。

説明を聞いた感じでは普通の人生ゲーム、

最後に一番お金を持っていた人が勝ちと言うルール。

強いて言えばプレイヤー同士の結婚ができるくらいのものだ。

「ふっふふでは私から行くぞ、でりぁ!」

部長が勢いよくダイスを振る。

「3か、えっと何々?《階段から落ちて鼻の骨が折れる二回休み》だと!?」

出鼻を挫かれるとはまさに、この事である。

「じゃあ僕の番ですね、えいっ」

「やった4だ、えっと《普通の平凡なありふれたつまらない会社に就職自分の番になるたびに10万円》」

何だ、このゲームの製作者は普通の会社に恨みでもあるのだろうか?

「じゃあ次私ですね、えいや」

「ふっふっふ、6ですこれが私の力ですよ。」

「えっと《エリート企業に就職自分の番が来るたび100万円》これが勝ち組というやつですね」

「次は私かぁえい」

「1か、まぁ千里の道も一歩からって言うしねぇ」

先生の止まったマスには道に落ちていた100円を拾うプラス100円と書いてある、意味あるのかこのマス?



そしてゲームはどんどん進み中盤。

鈴ちゃんは大金持ち、部長は不運続きで心身共にボロボロ、先生と僕は普通と言った感じだ。

「私の番かぁえい」

「3だね、何々?《結婚マス!ダイスを振って偶数なら右隣、奇数なら左隣の人と結婚》ついに私も結婚かぁ相手は誰かなぁ、えい」

出た目は6ということは右隣にいた僕が先生と結婚するようだ。

「正宗くんよろしくねぇ」

「はい、こちらこそ」

ゲームと言えど少し照れ臭い。

どうやら結婚すると財産が共有されるようだ、

これでかなりゲームが有利に進められる。

「くそ、私を差し置いて幸せになりおって。

だかここで6を出せば宝くじが当たって一気に大逆転だ、どりぁ!!」

出た目は1、マスの内容は、、結婚詐欺に引っかかって金を騙し取られるマイナス30万。

「何故ダァ!!」

部長はピュアだから現実でもありそうで怖い。

「くそ、何故不幸が私の身ばかりに降り注ぐのだ!」

日頃の行いじゃないですかね、とりあえず人を殴るのをやめよう、僕は内心そう思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る