恋のABC
僕はめずらしく少女漫画を読んでいる。
女子限定というイメージがあったけれど、僕が読んでも普通に面白い。
たまたま持ってきてくれた部長には感謝しなければなと思う。
黙々と読み進めるうちに一つの言葉が気になった。
「部長、恋のABCって何ですか?」
部長に聞いてみる。
「どうした正宗?まさか恋しちゃったのか?
この可愛く、キュートで文武両道の私に恋しちゃったのか?」
うわ、大事なことだから二回言っちゃってるよこの人めっちゃ痛いよ。
ぶっちゃけ、ガサツでストロングで暴虐武人の方がぴったり当てはまると思う。
「いや違いますよ、あと正直その自意識過剰ぶりは流石に引きます。」
「わかったよ教えれば良いんだろ、アイアンクロー
バックドロップ、チョークスリーパーの略だよ。」
「いや、絶対違うでしょ!最後に関しては反則だし。」
少女漫画にそんなゴリゴリのプロレス技なんて出てこないでしょ、彼女が彼氏にアイアンクローする少女漫画なんて聞いたことがない。
「もう、部長に聞いたのが間違いでしたよ、鈴ちゃんに聞きますよ。」
そう言って僕はルービックキューブに夢中の鈴ちゃんのもとへ行く。
「鈴ちゃん恋のABCってわかる?」
鈴ちゃんはルービックキューブから顔を上げずに答える。
「アクセル、ブレーキ、クラッシュの略ですよ。」
「ダメじゃん最後結局ぶつかっちゃってるじゃん!
というか絶対適当じゃん。」
「似たようなもんですよ、世のカップルなんて大体は、しょっぱなアクセル踏み過ぎて後々事故って黒歴史になるんですよ。」
この子は見た目が少女のくせに全然少女じゃない
詐欺もいいところだ。
「あっ!出てきた。」
声の方を見ると部長がパソコンをいじっていた。
どうやら、インターネットで調べてくれていたようだ。
「結局どうなんですか?」
僕も後ろから画面を覗き込む、
「何々?Aがキス、Bがペッティング、Cが、、。」
僕がそこまで言ったところで部長の顔を見ると
熟れたトマトのように真っ赤だった。
「ダメだーーーーーー!」
僕の顎に鋭いアッパーが飛んでくる。
「もうダメ、この話終わり、禁句だ禁句!」
部長は真っ赤になった顔を手で覆う。
部長は可愛く、ストロングで、暴虐武人で
それでいてすごい乙女で純情な女の子だと分かった。
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