田植えとかみさま

 腰をかがめてただひたすらに苗を植える。

 照りつける様な太陽の日差しが僕たちをミイラにしようとしている。

 今日は学校総出で近くの田んぼの手伝いに来ていた。

 田んぼの泥が足を包んで何とも言えない感触が足に伝わってくる。

「あーもう疲れた、なんで私たちがこんな事やらにゃならんのだ!」

 部長が愚痴をこぼす。

「これも教育活動の一環ですよ、いつも食べてるお米への感謝を忘れないためですよ。」

 僕が苗を植えながら言うと

「そんなのは嘘だ!それは大人が都合よく子供を働かせるためのこーじつだ、騙されんぞ私は!」

 よくわかってらっしゃる、多分教育が一割で後の九割は無償の労働力の確保のためにこの活動は行われているのだろう。

 こうして少しずつ社会を知って子供は大人になって行くのだろう。

 そんな大人の闇に気付いてしまった人がもう1人いる。

「鈴ちゃんもサボってないで手伝ってよー。」

 大人の事情を敏感に察知して田んぼに入るそぶりすら見せずサボりを決め込んでいる鈴ちゃんに声をかける。

「私はやーですよ、ここでおじゃまたくし見てるですよ。」

 説得も虚しく彼女の興味はまたおたまじゃくしに移る。

 この子はト○ロでも見つけに行くのだろうか?

 それとも七国山病院のお母さんにとうもころしでも届けるのだろうか?

 そんな事を考えていると。

「私はもうやめるぞ疲れたのだ、ストライキなのだ、労働基準法の違反なのだ。」

 そう言って田んぼから出て行こうとする。

「待ってくださいよ部長、お米に宿る7人の神様に失礼ですよ。」

 何とか止めようと半ば投げやりに話題を振る。

「なにそれカッコいい!」

 目をキラキラさせながら話題に食いついた。やっぱりこの人中身小学生なのでは?

 僕は田植えをやらせるために畳み掛ける様に適当を言った。

「そうですよ、それに頑張ったらステータス上がるかもしれませんよ、スキルとか手に入るかもしれませんよ?」

 多分、田植えスキルとか手に入ると思う。

「よっしゃー!やる気出てきたー!お米に宿る七賢人だか最長老だかに力を貰うのだ!」

 そう言ってすごいスピードで苗を植え始める。

 最後に関してはナメック星人だけど、やる気が出たならそれに越した事はない。

 扱いやすくて助かるなぁこの人、と思いながら僕は大きく伸びをするとまた苗を植え始める。

 この分なら田植えも早く終わりそうだ。





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