野犬現る!?

 この学校は田舎であるが故に子供が少ないそのため学年を一つにまとめて自習をすることが多い、高校生になるとたまに学年ごとに授業をすることもあるが本当に稀だ。


 だが今日は本当に珍しく授業があった。

 僕が板書をノートにとっていると。

「おい正宗外見ろ外」

 横から突かれてノートから顔を上げ視線を部長の方へと移す。

「部長たまにある授業くらい集中してくださいよ、それともトイレでも行きたくなったんですか?」

 僕と同じ学年は部長1人、必然的に隣の席になる。

「ちげーよ、別に連れションじゃねぇよ。いいから外見てみろって」

 女の子の口から連れションという言葉が出るのはどうだろうかという思いはさておき、まぁこれだけ言われれば見ざるおえないので外に目をやる。

「部長何が見えるんですか?何もありませんよ?」

 外を見れば広がる緑と青い空、所々雑草の生えたグラウンド、ザ田舎としか言いようのない景色があるだけだった。

「あそこだよあそこほらあの黒いやつ」

 部長が指差した方向にもう一度目を凝らす。

 確かにグラウンドの端の方に何か黒いものがある?アレ?動いてないアレ。

「部長動きましたよアレ!動物ですよ!犬ですか?犬なんですか!?」

 興奮した様子で伝えると

「いや、ただの動物だったら私はそこまで驚かない

 しかし、アレはただの動物ではない! 小熊だ!!」

 なっなんだってーー!と言いたいところだがぐっと堪えて話を続ける。

「部長は僕にアレを見せたかったんですね。

 ありがとうございます良いものが見れました。」

 可愛い小熊が見れた喜びを素直に部長に伝える。

「何を言ってんだ?面白いのはこれからだぞ?」

 そう言うと部長はガサガサ机をあさり始めた。

 ドン!(ドッグフードを机に出す音)

 僕の頭の中にクエスチョンマークが浮かぶ。

「まさかとは思いますけど部長あの小熊にあげて来るつもりじゃありませんよね!?」

 部長ならやりかねないというか絶対にやるだろう。

 絶対に止めなければ。

 というかドッグフード食べるのかという疑問もある。

「まぁ落ち着け正宗私が見た限り近くに母熊はいない安全だ。」

 そう言って隠れて教室を抜け出そうとしている。

 決心が揺らがないならば仕方ない。

 奥の手を使おう。

「先生!花さんが小熊に餌をあげに行こうとしていまーーす!!」

 これで何とか止められるはず。

 残念だったな部長!

 ドン!(先生が教卓からドッグフードを出す音)

「いや何で先生まで餌やろうとしてんですか!?

 てか何でドッグフード常備してんだよ!」

 何とか自分の力で餌やろうとする部長と先生を止めて教室に戻すことには成功した。

 けれど、先生と部長はもう子熊に夢中で勉強どころではない。

 というか餌あげられなくて何で先生が一番悲しそうなんだよ、中身子供かよ。

 仕方なく今日の授業は小熊観賞会へ移行した。

 本当にちゃんと授業をしてほしい。



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