01 どん底
国を問わず世界各地にダンジョンが発生した正確な日時は記録されていない。
ただ、在日配備中の俺に出動命令が下りた日は一応記憶している。
それが例え、上の方の都合で後日、非正規な任務だと情報が改変されたとしても、だ。
仮に、日本政府への通達もなく行われたこの作戦が成功に終わってたなら、結果は違ったのかもしれない。
だが現実には失敗した。
同盟国として、東京都心部に発生したダンジョンから都民を守ると称して行ったダンジョン侵攻作戦。横須賀基地から三部隊を投入し、あっさりと全滅した祖国に赤っ恥を晒した一幕。
しかもだ。その後に直ぐ、日本のオタク文化が変な化学反応を起こしてダンジョンの有効活用とかが実現したから目も当てられない。
無駄に人命と軍に損失を生んだ当時の政権は、ちょうど選挙の時期だったこともあって見事に敗退。次の政権は選挙絡みで散々実行部隊の無能を演出したせいで、生き残った少数の兵士は全て、反逆兵呼ばわりされて世間から人としての尊厳が抹殺された。
まったく、ヒステリックで暴動好きの国民性はこういう時に手に負えない。
結局、頼りになる上官ごと軍から存在を消された俺は、遠い異国の日本の片隅でホームレス同然の扱いとなった。
無残に手足を失いながらも自衛隊に助けられた俺が、その治療で自衛隊関係の施設で入院できたのは……せめてもの救いと言えたのかどうか。
「えーと、初めまして。あなたがバーダック・ウェストウッドさんでいいですか? あ、私はユリコ・
そんな自己紹介をしてきたのが、ユリコとの出逢いだった。
退院し、四肢欠損者のリハビリ施設で日常生活の訓練中のことだった。
わずか三ヶ月の訓練で、動けようが動けまいが施設は放り出される。文句は言ったが『上からの決まりなので』と相手にはされなかった。簡単な仕事の斡旋もされたが、そこも基本俺の好き嫌いは関係ない。嫌なら自分で仕事を見つけろという、半分以上は厄介者は静かにそこらで野たれ死ねな対応だ。
当時の米兵の横暴はマスコミの煽りもあって最悪だったが、リハビリ施設には同じ境遇の日本人も普通にいたので、必ずしも国籍的な差別ではなかったのかとも思っていた。
というかだ、日本の美化された部分が剥げた印象か。
ともあれ、ユリコはそんな俺に一つの提案をもってきた存在だった。
『ダンジョン系技術の製品の治験者をしませんか?』
まあ、要はモルモットをしないかという内容だった。
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