第106話
「…………誰かー、助けてー。厨二拗らせた先輩に殺されるー」
「随分と棒読みじゃないか。遺言はそれだけか?」
「そういう先輩が顔真っ赤ですよね。なんですかなんですか、平べったいお花のことでも考えてたんですか?」
「……さて、カッターナイフはどこにしまっていたか……」
「さよならバイバイまた明日」
「させると思うか?」
「……はい」
現在、首根っこを掴まれ、まるで猫のようになっている叶恵である。
戦場は顔が真っ赤。言うなれば爆発直後のボム兵、爆発前の某サンドボックスゲーム御用達の白線が入った赤い爆弾である。
「誰の顔が四角いって?」
「えっ!?俺何も言ってないんですが!?」
「いや、こちらの話だ。ふふ、程よく殺意が湧いてきた」
怖ぇっす。首根っこ掴んでいたはずがいつの間にかアイアンクローになっているのが尚更怖い。というか叶恵は大丈夫「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!?」アウトですねはい。
当然ながら結構な注目を浴びている上、一部知り合いが何やってんだあれ、と言った視線を向けてくるも、羞恥で赤い顔を隠すためにアイアンクローで掴んだ叶恵を持ち上げる戦場。当然持ち上げられる叶恵は、
「っあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
大暴れである。頭蓋骨がミシミシいってるかもしれない。だが乙女(笑)の戦場は気づかない。というか若干はっちゃけてるかもしれない。
*
「……恨むぜ先輩」
「君のネタ根性は底無しかい?」
「頭割れるかと思った……」
「おっと無視か。いい度胸じゃないか。どれ、あと三十秒ほど追加で頭を握られてみないか?」
「殺意しかないんだよなぁ」
ようやく下ろされた叶恵だが、現在頭がガンガン、脳がギシギシ、首が取れそうな痛みである。端的に言って地獄のような痛みである。
「なんか、もう痛い……」
「語彙力が死んでるぞ?」
「誰のせいだと思ってやがります?」
「私だが?」
「もうヤダこの人サイコだよサイコ」
「最高、か。それは私が望む人に言ってほし」
「サイコパスだっつってんだよ!」
「失礼だな」
「どっちが!?」
その後、何一つとして建設的な会話が成り立たなかった二人。馬鹿である。
*
さて、一方その頃森の中……ではなく、一年五組教室にて。
「……何があった?」
「おー、平花氏。オイッス」
「真金?何があったんだ。これは」
困惑の平花。それもそうだろう。
目の前には執事服の和之と宏敏が、それぞれの彼女の給仕を……は?
待って待って、何してんの君たち。執事服とかどっから調達してきたん?意味わからんのやが。
「念の為に執事服用意しておいて正解だったわね。あれにバレないようにするのに苦労したわ」
犯人発見。
「今私のことを犯人なんて不名誉な呼び方した人、安月給でこき使うから出てきなさい」
…………犯人は王小路。
執事服なんてなぜ用意されているのか。
え、じゃあなんで平花が戻ってきた時に橋ノ井が女性客の割合云々言ってたかって?
………………………女装が似合う男子云々。これ以上は発言を控えます。
実際、現在入っている客の実に八割が女性客。そしてその視線は明らかに和之に向いている。
更には二度目の来店の方もいらっしゃるのか、「あ、さっき真っ赤になってた人だ!カッコイイ!」
などと言った発言を繰り返しており、叶恵という前例を作ったがために、この後和之が犠牲になることを、今は誰も知らない。
「なんだろう。今凄く悪寒が走った気がするんだ」
「大丈夫ですか?」
「あはは、雫がいるから大丈夫だよ」
「………んぅ」
「!?」
『『『『『『『『あ』』』』』』』』
何があったかはご想像にお任せします。
尚、当方は一切の責任を負いません。
とりあえず教室中がほっこりしたのは言うまでもない。平和的光景すぎて嫉妬すらわかなかった皆さんである。
「ふふふ〜、あの二人はいつでも甘いですね〜」
「……いつもの表情でいつもは絶対に飲まねぇブラックコーヒー飲んでるお前がそれ言う?」
「それを言うなら青野さんもですよね〜?チラチラをこちらを見なくてもいいんですよ〜?」
「……ノーコメントで」
この後、宏敏は優奈に耳元で「終わったら一緒に、どこか出かけようか」と、それはもうやばいボイスで囁かれ、脱力した後コケて王小路に引っぱたかれた。ドンマイ。ちなみにその
「で、俺は一体どうすればいいのだ?」
「我々コーヒー飲んで一休みした後に売り上げの計算でもするが吉では?この際奈倉氏と唐草氏も呼ぶべし」
「……唐草は姉に振り回されているだろう。奈倉だけ呼んでこき使えばいい」
「平花ぁ!?聞こえてんぞてめぇ!?」
「働くぞ」
「働いたら負けだ!」
「働かざる者食うべからず」
「ちっきしょー!」
祭りはまだ、終わらない。
≡≡≡≡≡
終わらせてくれ……書き納めです。
この後午前0時より、新作の投稿となります。
2020年、コロナ騒ぎで大変極まりない一年でしたが、皆さんおつかれさまでした!
来年もまた頑張りましょう!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます