第94話
「えーっとねー、これからの準備の話なんだけど……平花どこいっ」
「遅れて申し訳ないっ!
「……はい、平花が授業遅刻にプラスアルファで態度悪いから点引いとくな」
「なぜ!?」
当たり前だ厨二野郎とクラス一同同じことを思ったみたいです。
しかもその後張り手で叶恵が「何でだよ……」としばらく凹むという……何だこの状況。
という所で、HRが始まる。
*
「私たちは星華祭で、メイド喫茶やるわけなんだけど、女子は一部料理上手な子を除いて全員参加。男子も一部には出て貰うわ」
「断るっ!俺は厨房回すぞ!」
『『『『却下』』』』
「何でだよっ!?」
この度実行委員になった王小路の強権に叶恵が反発してクラス全員から却下を貰った図である。机の上に拳を落として嘆く姿は仕事をクビになったサラリーマン(超感情的)のようである。
想像しやすい言葉としては某賭博師の有名な台詞が出てくるだろうか。
「あはは、叶恵は入って当然だよね。名前入れとくよ」
「和之てめぇ後で殴る!」
「暴力反対」
「めんどくせぇ!」
いつになく感情的な叶恵である。しかし、
「は?何言ってんだよ。原田、お前もメイドやれよ?」
「え?」
突如出てきた宏敏の言葉に和之が凍りつく。
「え、僕も?」
和之氏、顔が引き攣る。それでもイケメンはイケメンである。なんなら引き攣ってドン引き状態な和之を上から宏敏が見下ろす構図に鼻息を荒くする女子までいる始末。それを見た残りのクラスメイトたちのさらなるドン引きによってクラス内が一時カオス化。
最終的に王小路と共に実行委員になった春来によって笑顔で和之の名前が加えられたことにより事態は終わりを迎えた。
「ねぇ、叶恵。僕って似合うのかなぁ?」
「……お前、実は乗り気だな?」
*
和之が雫とデートして叶恵が後ろからそれをニタニタこっそりと見守る(ストーカーな上春来に見つかった)以外は特に何も無かった週末が明けて十月十二日月曜日。
「今日からはしばらく授業無しだから、安心して準備に取り組んでください!ついでに先生を休ませてくれ」
「先生、それは無理っす」
「知ってた」
かーなーしーみのー、と曲が流れそうな担任を放置していざ準備開始と意気込む一同。
だがしかし、まだ面倒ごとは終わらない。
「今日も来たぞっ!」
「青野、そこのダンボールを貸してくれ」
「はいよ」
教室の扉がスパーンッ!と開いた瞬間に平花が青野からダンボールを借り器用に隠れる。
「……奈倉氏、百面ダイス貸してくれん?」
「おっ、いいぞ。
「採用」
教室の隅で奈倉と真金がダイスを振り、
「「あっ、百ファン」」
「平花、バレているから諦めるといい」
「「マジ!?」」
腹を抱えて奈倉と真金が笑い転げる中、平花が目から光を消す。
「貴女も自クラスの作業に行ってはどうかな?」
「ふむ、私のクラスはこのクラスと違ってまだ相談中なのだ。私が手打ちの蕎麦屋をもう一度と言ったのだがしんどいと断られてな」
まさかの事実、ここに来てようやく戦場のクラスが判明、しかもかの蕎麦屋である。
思わず叶恵と春来が目を合わせて苦笑い。この息のあいようで未だにただの友人と言い張る信じられない二人である。いやまぁ片方は絶賛
苦虫を口に詰め込んで無理やり顎を動かされたようなかなり酷い表情の平花である。普通に失礼である。
「……こちらは準備中だ」
「人手が増えて困ることもないだろう?それにどうせ数日だ。来週まで持ち越すことはない。私のクラスの方で出すものが決まれば戻るのみだ」
正論…………かな?これ。どうなの?
「ま、いいんじゃない?別に。こっちのメインは小物関係じゃなくて料理だし、当日じゃなきゃ細工も何も無いわよ。先輩、手伝いを頼んでもいいかしら?」
「……いいのか?」
「今言った通りよ。そうね……どうせならそのまま平花の手伝いを宜しくするわね。残念ながら手当は無いけど」
「いや、ありがたい!さぁ、平花!共同作業と行こうじゃないか!」
「……マジ?」
「「あははははっ!はーはっはっはっは!!」」
「……奈倉と真金は、五月蝿いから評価下げてもらおうかしら?」
「「申し訳ございませんでした粉骨砕身して働かせていただきます」」
「ふんっ、早く始めなさい」
……さて、この状況を叶恵は知らない。和之や春来も知らない。
何故か。
「いらっしゃいませー。コスプレ服なら何でもおまかせ下さいねっ!」
「「…………」」
「宜しくお願いします!」
ここは手芸部。しかしただの手芸部では無い。
『変装からコスプレ、ファッションまで何でもおまかせ!やりたい放題な手芸部』
である。
名称が長い?これで採用されている以上諦めるほうがいいのである。
そして叶恵と和之も、諦めてメイド服を着るといい。多分需要はあるから。
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