第95話

『『『『『『『………………』』』』』』』


 さて、突然ながら問題です。


 Q.上の沈黙は誰の何によるものでしょうか?


 答えは以下の通りである。




「ねぇ」


「……なんだよ」


「あなたじゃないわよ」


「…………僕?」


「ふひゅっ」


「伊吹乃がちゃんと伊吹乃だな」


『『『『分かる』』』』


「よしてめぇら廊下出ろ。今すぐ頭を柘榴みてぇにしてやる」


「ちょっとー、メイドさんの口が悪いんですけどー」


「お、まずは唐草からか?」


「……すんません」


「伊吹乃は当然として……まさかここまで……かひゅっ」


「夢乃さん!?なんで倒れてるんですか!?ちょっと、誰か!夢乃さんを保健室まで!」


「……紅葉、やめてちょうだい……はぁ、はぁ、こんなにも素晴らしい和之様を放置して保健室なんて絶対に行かないわよ……!」


「伊吹乃氏は真の男の娘への道を歩み始めたのであった」


「何か直後に[完]か、To be continuedって付きそうだな」


「ゆで卵先生の次回作にご期待ください」


「誰だよ」


「適当に言ってみただけですな」


「なぜに卵だし」


 ……………微妙に恥ずかしいが、終わる訳では無いのでご安心を。


 とりあえず真金は、しばらく出したいな……。


 ゴホンッ。大変失礼致しました。


 まぁ、本題に戻ると。


 えー、現在、叶恵と和之、メイド姿である。


 まず叶恵。

 違和感ゼロ。よくある着るのでは無く着られている、という感じが欠けらも無い。流石はAPP16のアイドル級美少女(男)である。

 当然のことだがスカートは膝下どころか足元まであるクラシックタイプである。


 続いて和之。

 別段がっしりしている訳でもない、むしろ細身の和之。

 少し化粧をするだけであら不思議。

 立派な長身メイドの完成である。しかも本人が恥ずかしそうに顔赤くしてモジモジしている。通常の状態でもそれやれば周囲の女性がノックアウトだと言うのに現在メイド姿である。


 要は男子まで基本アウトである。


 ぶっちゃけよう。


 萌を追求する方は叶恵、ギャップを追求する方が和之に視線が行ってる。


 両方とも顔が良すぎた弊害(?)である。


「なぁ、これさ。ネタで終わらせるのって、ダメかな?」


 和之の目は完全に光が失せ、今にも壊れたように笑いだしそうである。


 そして質問に対する答えだが、


『『『『『『却下』』』』』』


「ふふふふふふ、何がなんでも出てもらいますわ。原田さん、ご覚悟」


 若干一名狂っているが結局は満場一致で却下。諦めるがいい、和之よ。


「んじゃ俺は脱ぐぞ『『『『『お前はもっとダメ!!!!!!』』』』』何でだよ!!?」


 馬鹿なことを言おうとした叶恵を全員が凄まじい形相で引き止める。実行したらどうなるかわかってるよな?と言わんばかりの目力である。


「ふっ、当日着ると言うのであれば許可するわ。でも、当日着ないというのであれば……」


 勝ち誇ったような王小路。何を言われようとしているのかを悟った叶恵は逃げの体勢に、


「……おい青野、そこどけ」


「……どいたらお嬢に殺されるからな。断る」


 入ろうとするも扉の前に宏敏が居座る。王小路のアイコンタクトで指示された、哀れな使用人(将来)である。就職先の直属の上司兼次期社長に言われて断るのは蛮勇である。


「さ、選びなさい。本番で着るか、本番までの準備期間、


「謹んで本番のメイドを務めさせていただきます伊吹乃 叶恵と申します。当日はなんなりとご指示を」


『『『『『『………………』』』』』』


 豹変し過ぎだろと、完璧かよと、全員が思ったのは言うまでもないことである。


 *


 十月十三日火曜日。

 本格的な準備期間に入ってから二日目であ


「今日も来たぞっ!」


 ……せめて最後まで言わせてくれないかな?


「ふむ、では今日の手伝い内容は貴女が自教室に帰ることだが、どうだ?」


「断る!」


 戦場と平花の、もはや定例となりつつある「来たぞ!」からの「帰れ」「断る!」の流れである。ここまで来たら平花も意地である。


「あ、じゃあ先輩、こっちのメイド服のデザインなんですけど」


「ふむ……その感じで行くのであればスカートはもう少し挑戦的な長さでいいのではないだろうか」


「え、でもそれだと奈倉とかの変態たちの視線が……」


「担任から叩きのめす許可をもらえばいいだろう?」


「なるほど!」


「「「やめろっ!?」」」


 ポンっと手を打って、名案だ!と言わんばかりの笑顔をはじけさせたクラスメイトに奈倉、唐草、真金の三人が顔を青ざめさせて止めにかかる。真金とか目がマジである。


 と言うか、ね。君たち、自分が変態だって認めたようなもんだけど、大丈夫?クラス中の冷たい視線がにじり寄ってきてるよ?


「ふむ、さてはお前ら馬鹿だな?」


 最後のトドメ平花からの一言で崩れ落ちる三人。女子からはざまぁ、男子からは哀れと、喰らいたくもない視線がザックザク刺さっていく。

 死体蹴りすら生ぬるいと言わんばかりである。


「おーい三馬鹿、作業進まねぇからとっとと続きにかかれー」


 叶恵、酷し。


「俺らの風評被害がキツすぎるっ……!」


「ちくしょう、なんで反応しちまったんだ、ちくしょうっ」


「メイドさんに夢を抱いて何が悪いのかっ!」


『『『『『『『…………』』』』』』』


「うん?皆してなぜにこっちに?ちょ、伊吹乃氏?青野氏?目が怖い……」


「余計なこと言う口はこれか?なぁ、縫っていいか?」


「いや、それじゃあ舌噛んじまうかもしんねぇ……先に歯を折るぞ」


「あまりにも物騒ですぞ!?」


「「知らねぇな」」


「ひぃっ!?」


 ジリジリと金槌もしくは針を持った宏敏と叶恵が迫り来る。


 ホラーである。真金、逃げるには遅すぎた。


 バッと唐草や奈倉の方を見れば、


「「………(グッ)」」


「呑気なサムズアップに凄まじく殺意がっ!」


 標的から外れたからか清々しい笑顔である。人でなしである。多分。


「……よーし青野」


「……おう」


「何?もう来たの?キツくないっすか?ねぇ、ホントに、厳しすぎません御二方?」


「「慈悲はない」」


「うわああああああぁぁぁ!!」


 結果。







 真金の仕事量は三倍に増えましたとさ。めでたしめでたし。






「あ、叶恵と青野も仕事増やしとくね?」


「「何故に!?」」


「いやだって二人とも仕事早いし(サラサラ〜)」


「……ご丁寧に筆記体でメニュー書きながら何言ってやがる」


「だって僕、この後これの上に日本語でちゃんと書くし」


「「………………」」


 超人イケメン野郎はやっぱり強かった。


 ついでに、メイド服はミニスカ採用。覗こうとする、またはそれっぽい動作をした不埒者には正義の鉄槌(精神的)としてしばらく誰からも口を聞かれなくなるという結構酷い案が可決された。


 えっ、どういう票の分かれ方したって?


 女子全員+男子の三分の一VS残りの男子で圧倒的勝利ですが何か。文句があるなら提案出した戦場さんとか投票で決めるって言った王小路さんにどうぞ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る