第90話
※会話率異常。どこで誰が喋っているか良ければ予想してみて下さい(苦笑)
≡≡≡≡≡≡≡
「邪魔するぞ!」
「うおわっ!?」
九月十四日月曜日、朝。
教室に今日も強襲する戦場である。
だが、今日はそれだけではなかった。
「……えと、お邪魔します?……何の邪魔なの?」
戦場の後ろには小さい人影。
長く艶のある黒髪を垂らし、まるでかつての叶恵のよう。その長い前髪の後ろにはクリっとした目が覗き、キョロキョロしている。
恐らく身長は百五十センチあるかないか。
小柄である。しかし、特殊な
「……うぅ……やっぱりお邪魔だよ。薫ちゃん、かえろ?」
優しいと甘いの中間、そんな声である。
とりあえず、大体の
「むぅ、しかしここまで来てすぐに帰るというのも……ん?平花がいない?」
「あ、薫じゃん。平花君なら私が来た時もう居なかったよ?」
「そして安姫が普通にここにいることが凄いな。私達が来るのが遅いという訳でもないと思うのだが」
「……俺が来たタイミングを見計らったように来ますからねこの人」
安姫の目の前に座っていた叶恵が少々疲れたように言う。お疲れ様と言いたくなる表情である。
「ええー?迷惑なら止めるって言ってるのに大丈夫って言ってるのは君の方じゃんか〜」
「……私から言わせてもらえば先輩はとても迷惑です」
「あーあー!聞こえなーい!」
春来の文句がなんのその。苦言を無視された春来が頬を膨らませ、叶恵がその頭を撫で、春来がふやけて今度は安姫が拗ねる。
これでワンセットである。周囲の男子の心中お察し、と言うやつである。だからそこでコンパスだのなんだのを構えるのはやめようか奈倉君や。
「……はっ!なんか今神の声が!」
「いやお前平花みたいなことを……ってお前何コンパスなんて持ってんだよ!危ねぇな!とっとと仕舞え!」
「……何でだよ」
「姉ちゃん!ちょっとこいつのこと絞めてくれねぇかな!?こんなのでも仲良いんだよ!」
その仲良いやつをこんなの呼ばわりした唐草は、
「あ、今日もお昼来ていいかな?」
「いやいいですけど、安姫先輩大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫!むしろみんな応援してくれてるからね!」
「ええ……」
「…………………」
ガン無視の憂き目にあっていた。ドンマイとしか言えない周りのボキャブラリーはどうなっているのだろうか……いや、他の言葉出てこないねこれ。ドンマイ唐草。
「ちくしょう!神にすら哀れまれた!?」
「もうダメだこのクラス……超人イケメン野郎にアイドル男の娘っぽい奴にお嬢様に聖女様にリアオタに厨二×三とかもう収拾つかねぇや」
「サーセン」
「真金、リアオタってのはお前のことだぞ?」
「うい」
最早誰が何を言っているのやら。
既にカオスな現状だが、ここにさらに面倒なのが混ざる。
「さて、そろそろ彼女らは戻って…………あ」
『『『『『あ』』』』』
平花という名の更なるカオス燃料、投下(全自動)。
「おお、平花!待っていたぞ!」
「え」
「…………ふわぁ」
「ねぇねぇ伊吹乃君?」
「なんすか」
「なんで君は春来ちゃんに頭撫でられて顔が溶けてるの?」
「……液体になった覚えないっす」
「そうじゃなくてね?」
「よしよし……ふふふ、叶恵さんは可愛いですね?」
「っ!?」
「あーっ!」
「青野さん〜、いますか〜?」
「おう、どうした優奈」
「いえ〜、授業前にちょっとぎゅっとしたくなりまして〜」
「お、お前……殺す気か?」
「愛しさで気絶させますよ〜、なんちゃって〜」
「…………」
「あれっ、青野さんっ!? ちょっ、あわわわ…………宏敏?」
「……かはっ!」
「…………幸せそうだな」
『『『『『殺るか?見守るか?』』』』』
『『『『『殺るよなぁ』』』』』
「よぉし後で全員野球部に金属バット借りに行こうか」
「人として色々アウトな件」
「平花、連絡先の交換をっ!」
「いやだから嫌なんだが!」
「そこをなんとか!」
「話を聞かないっ!?」
「……春来、俺恥ずかしくて辛いんだけど?」
「離しませんよ?」
「ズールーいー!」
「皆元気だねー」
「ふふっ、和之さんは元気じゃないんですか?」
「ん?そんなことないよ。んっ」
「んむっ!?」
『『『『『『『『『『『『『……………………………レベル高ぇなぁ』』』』』』』』』』』』』
常在カオスが異常なカオスに進化した。
とりあえず雫と和之には後で何をしていたか聞かなければならない。
「てめぇらイチャイチャシヤガッテェェェェェェェェェェ!!!」
「誰か奈倉氏保健室連れてくの手伝ってくれん?」
「俺が行こう」
「面倒事回避の平花氏に拍手」
「……早く行くぞ」
「アイアイサー」
「ハナセエェェェ!!俺はあいつらを殴らなきゃあ気が済まねぇ!!」
「重症乙」
「普通にこいつ大丈夫か?」
「大丈夫と信じたい」
「そうか」
オタと厨二に肩を掴まれてズルズルと引きずられていく奈倉。それを全員が死んだ目で見届けた後、
「ふぅ……今日もダメだったが、私は明日も来る!それだけだ!ではな!」
「ふぇっ!?ちょっと待って〜!」
「……もう私ここで授業受けていい?」
「安姫先輩学年違うからね?」
「姉ちゃんとっとと帰れ!」
「明人?」
「ひっ!」
「むぅー、ま、いっか。またお昼にお邪魔するねー」
「来なくて良いです!」
「あはは手厳しーなーもう。来るからね?じゃ、また」
「はい、また」
「………すまねぇな伊吹乃。うちの姉が」
「いいよ別に。気にすんな」
「助かるわーそのセリフ。俺じゃああの人に勝てねぇ」
「男は姉妹に負けるもんだからな」
「分かるわー」
先輩組が教室から出ていく中、二人揃ってうんうんと共感を共にする唐草と叶恵であった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます