第47話
その後、散々土下座した上にサラッと給水塔の上の三人の存在をばらした青野。経緯は以下。
『ん〜、小豆ちゃん、大丈夫そうですよ〜?』
『………ん』
『ほえ?給水塔がどうかしましたか〜?』
『…………行く』
『あっ、上は………ちょっと………や、やめた方が良いんじゃないかな〜と』
『どうしたの?急にキョドって。何かやばいものでもあるの?』
『や、そういう……訳じゃなくて、ちょっと人が三人程……』
『あら〜、まだ人がいたんですね〜。ん〜……王小路さんと伊吹乃さん辺りは確定として〜』
『!?』
『ん〜、伊吹乃さんもいるということですので〜、春来さんでしょうか〜』
『なんでわかんの!?つかクラス違っ』
『いえいえ〜、あの方々は有名ですから〜』
『まぁ、確かに有名だろうけどよ……それだと王小路は……?』
『あなた方の関係なんて公然の秘密ですから〜』
『なんで!?』
『そりゃあそうでしょ。あんたいっつも『お嬢……あ、王小路』とか言ってるんだもん。分からないわけないよね』
『…………(ガクリ)』←膝をつく音
以上である。
結論、青野は腹芸ポンコツ。
そんなことはどうでもいいのである。問題はここからである。
「ん〜、じゃあ、せっかくですし〜、呼びましょうか〜」
「え、別にそれしなくて「お嬢様〜、聖女様〜、なんでも屋さ〜ん!」聞いちゃいねぇ!って、なんで今なんでも屋って……」
「おいコラなんでそっちを知ってる!?」
叶恵、降りる。割と聞き捨てならない言葉が聞こえたためである。ついでに、叶恵と共に残りの二人も降りる。
青野はわんちゃんスカートの中を……と狙ったところで、
「………ん!」
「ぐふぉ!」
羽屋より、コークスクリューパンチのプレゼント!おめでとう、鳩尾に突き刺さったよ!青野に百のダメージ!青野は倒れてビクビクしている!
……下心丸出しの馬鹿な男子の末路である。
そしてそんなことはやはりどうでもいい。
「あら〜、言ったらダメでしたか〜?」
緩い笑顔で叶恵を見つめる倉持であるが、実際には内心冷や汗ものである。
(これは〜、やらかしちゃいましたかね〜?店長も先生も特に他言禁止とか言ってなかったじゃないですか〜。むむむ〜、後でちょっと小豆ちゃんを送りましょうか〜)
凄まじくどうでもいいが、この三人、護身部(24話参照)である。つまり、
(スタンガンと金属バット、後は特殊警棒辺りで許してくれますかね〜)
武力行使を躊躇うということはなく、今考えていた三つの道具は差し入れである。物騒極まりない部活である。
「いや、別にダメって訳じゃねぇ」
そういう叶恵の表情は険しいものである。
「ただ」
「ただ〜?」
「それは副業だし」
じゃあ本業なんだよ、ああ、恋愛相談でしたねそうでした……逆だろうに……。
「あら〜、そうでしたか〜。では近々本業の方に出向かせて頂きますので〜」
「おっ!そりゃあいい。場所は分かるか?」
「ばっちりですよ〜」
「なら良し!んじゃあ、そろそろ
「鍵持ってんの貴方だったの!?」
「その通り!安心しろ、ちゃんと高野の許可はとってんだよお・じょ・う・さ・ま。はははー!」
……えー、今年一番の鬱陶しく見苦しい叶恵を公開してしまったことを心より、お詫び申し上げます。
「ぐぎぎぎ……行くわよ、青野!」
「へいへい、んじゃ、また今度な」
「………ばいばーい」
「「!?」」
「おう、また今度」
「私、全く話についていけなかったです……」
「春来さーん!?落ち込みすぎではないですかー!?」
「うっわ、女子泣かせるとか……見た目女子の癖に……うわぁ」
「え、俺のせい?」
「そうですね〜」
「…………ん」
無表情の羽屋と笑顔でバッサリ来る倉持によってグサグサと言葉のナイフに突き刺される叶恵である。実に哀れである。
そして叶恵の名誉のために明記しておくが、春来は別に泣いてはいない。話についていけなくて寂しくなっただけであり、それに関しては金木、羽屋の二人も同様である。
「では私達もこれで〜」
「またね〜」
「…………ばいばーい」
「「!?」」
*
さて、屋上から降りた倉持、羽屋、金木の三人である。
「まさか二回も小豆のばいばいが聞けるなんて……明日は雪が降るか、何も無いのに丸い虹が出るか」
「何かいいことでもありましたか〜?」
「…………ん」
「えっ、何々?」
「───」
「「……………うそー」」
……何を言ったのやら。
*
「はぁ、なんか……すまん」
「いえ、大丈夫ですよ」
屋上。
先程から変わらずの曇天だが、ある意味叶恵の心象を示していると言っていいだろう。
そんな中、春来はモジモジしながら叶恵に話しかける。
「あの、伊吹乃さん。聞きたいことが──」
「良いよ」
「え?」
食い気味の返答にキョトンとしてしまう春来聖女様である。この表情で男子が十人は倒せるということを本人は知らない。
「事情とかは特にないし、隠す気も特にない。言わなかっただけだし、な」
意味深っぽく言っているが、本当に理由などない。
「んじゃまぁ、自己紹介から」
なんで?
「伊吹乃 叶恵、十五歳。星華学園高校一年五組二番。趣味は人間観察(恋愛系のみ)。部活は恋愛相談部。仕事は外部の相談屋と個人でなんでも屋。こんな感じ」
「ちょっと何言ってるか分からないですね」
「ありゃ」
ニッコリ笑顔でバッサリ切り捨てた春来である。当然である。情報量過多がすぎる。
「とは冗談です」
「んんっ」
「でも」
「ん?」
「疑問は解消できました!さ、早く降りて続き行きましょうっ!」
唐突に笑顔になった春来は、叶恵の手を指を絡ませながら握る。
「っ!?」
(え、ちょ、これっ、恋人つな……ダメだ!頭が、動かな……)
(ひぅぅぅ、温かいし柔らかいし、でもしっかりしてますしで意識がそっちに……)
両者爆発寸前ボム兵である。変装ようにわざわざ叶恵が買ってきたサングラス等をつけることも忘れ、衝動的行動の代償に、今後、凄まじい勢いで噂が拡散されることとなる。
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春来聖女様が……自爆!叶恵は巻き添えと誤爆でてんやわんやしてますねーいやーこの章のメイン誰だったかなー(すっとぼけ)
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