第4話
短いです!すいません!
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十二時四十分。
叶恵の対面に座る、ガッチガチに緊張している女子が、モゴモゴと口を動かす。
「あ、あのっ、私の名前はっ、その、
「そんなに固くならなくてもいいですから」
「は、はひっ!」
(ダメだこりゃ)
この緊張感がこの時間で治ることは無いと早くも悟る叶恵である。
「それでは、ここの説明を始めても良いでしょうか?」
できる限り営業スマイルでやり過ごそうとする叶恵。しかし、そのスマイルのせいで雫に妙な圧力がかかってしまっていることには気付かない。
「はい、お、お願い、します」
最早小動物のようにプルプルと震える雫。さしずめ、叶恵が、捕食者といったところか。精神的に。
「ここでは、まず、恋愛の相談が主となります」
「はいっ」
「そしてもうひとつ」
「はい?」
「ここでは、恋愛の紹介所も兼ねています」
「えっ、しょ、紹介……ですか?」
「はい、紹介です」
「あの、それってどういう……」
「簡単に言えば、別段好きな人がいる訳では無いけれども誰かと付き合ってみたい、という人もいますから、そういう人達にここで登録用紙を書いてもらってファイルに保存、同じ目的で来た異性の方にその人を紹介する、という感じになります」
「ここまでは大丈夫ですか?」という叶恵の問いに、コクコクと頷く雫。
(可愛ええ〜、癒される〜、じゃなくて!)
少し巫山戯た方向に滑ってしまった思考を矯正し、再び話し始める。
「ですので、相談と紹介、二つの手段を用いて、あなたの恋愛をサポートする。これがこの恋愛相談部の活動内容となります」
「なるほど」
プルプルが少しだけ収まった雫は、納得したように頷く。
その様子を見て、大きく頷いた叶恵は、話を切り出す。
「さて、ここからが本題になりますが、本日は、相談ですか?それとも紹介ですか?」
にこやかに微笑む叶恵に顔を真っ赤に染め上げた雫は、小さな声で「そ、相談です……」と、今度こそ初めての相談がやって来たことを叶恵に告げた。
─三分後─
話を始めようとした直後、二人の腹の虫がなってしまったため、昼食後、再びここに集合ということで一度教室から出た二人は、共に学食に向かっていた。
大して特徴も無い学校であるが、その学食は美味しいと評判のため、叶恵も一度は食べてみたいと思っていたのだ。
「──って、人、多いなっ!」
「はひっ!そ、そうですね……」
学食に着いた途端、人の多さに思わず声をあげた叶恵に驚いて肩が跳ね上がった雫である。
「樫屋さんは来たことあるの?」
営業スマイルを止め、普通の表情で雫に話しかける叶恵。この状態の方がまだ雫が自然体で話しやすいのだと言うことに、やはり気付かない。
変なところでアホである。
「二、三度程来たことがありますね。オススメはオムライスですっ」
その後に聞かれることでも予測していたのか、わざわざ自分のオススメまで教える雫。それにありがとう、とだけ返した叶恵は、
(マジでありがてぇ、ここメニュー多すぎてどれ選べばいいかわかんねぇから!)
そう、この学食、何とメニューの数は五十を超える。
普通の学食って多くて二十程度と見積もっていた叶恵にとってはまさに魔境。時折メニューに混じっているカルパッチョや、アヒージョなどの文字に視線が踊らされまくっていたのである。
超がつくほどどうでもいいことではあるが、叶恵が通っていた中学は学食のメニューの種類が十程度。何となく高校は倍くらいあると思ったようである。
結局二人ともオムライス(三百円)を買い、空いている席に座る。
その間、学食内では喧騒が広がって───────無かった。
理由は明白。
「おい、あれ」
「うわ、めちゃくちゃ可愛いじゃん」
「お前声掛けに行かねぇの?」
「無理無理、あんなのレベル高すぎるから」
「てか何あの子?アイドル?」
「私知らない」
「私も知らない」
「あっ、私も知らない」
「「あんたには聞いてない」」
「酷くないっ!?」
etc……
要するにアイドルクラスの顔を持つ男子、叶恵を見て大声で話すことをしなくなっただけである。余談だが、オムライスを買う際に窓口のおばちゃんに可愛いねぇなどと言われたりもしている。
そしてこの場の全員(本人及び雫を除く)が、最後まで叶恵が男子の制服を来ていることに気付かないと言うある種奇妙過ぎる状態が続いていたことをここに記す。
*
「ふぅ、ようやく、か?」
「はい、お願いします」
「よし、それでは、相談を始めます」
「は、はひっ」
やはり気付かない叶恵はやはりアホである。
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