風邪2
「……美咲?」
「慧、起きた?」
私が勉強を始めてしばらく経って、慧が目覚めた。
「お母さんがお粥作ってくれたんだけど、食べる?」
「うん」
「じゃあ持ってくるね」
私はお粥を取りにキッチンへ向かった。
お粥は鍋にいれていたおかげか、さほど冷めてはいなかった。
むしろ食べやすいくらいだ。
私はお粥と一緒にあった器によそって持っていった。
「はい、慧」
「ありがとう」
慧は、受け取ったお粥を食べようとしたが……
「待って。やっぱり食べさせてあげるよ」
「うん」
落としそうで危なっかしかったので、私が食べさせてあげることにした。
「はい、あーん」
「あ……」
私がスプーンを差し出して、慧が黙々と食べていく。
新鮮で少し楽しくなってきた。
「……ごちそうさま」
「もういい? おかわりあるよ?」
「うん。苦しい」
「あ、ごめん」
食べさせ過ぎたようだ。
というより、よそいすぎたようだ。
「大丈夫。それより、何で美咲がいるの?」
すごく今更なことを聞かれた。
「慧が風邪だから看病に来たんだよ」
「どうして風邪だと分かったの?」
「お母さんがそう言ってた」
「そうなんだ……」
なんだか慧から元気がなくなった気がした。
既に風邪で元気はなさそうなのだが。
「それがどうかしたの?」
「何でもない。おやすみ」
そう言うと、慧は再び横になった。
「待って、薬飲まないと」
だがまだ薬を飲んでいない。
「いらない」
それに対し、慧はそれでも寝ようとする。
「ダメだよ。治らないでしょ?」
「治さないといけないの?」
慧はずっと風邪を引いたままでいいと言うのか。
何もできなくてつまらないだろうに。
「そりゃね」
「分かった」
私は家から薬を取ってきて、慧に飲ませた。
「……くしゅん」
慧はくしゃみをして、震えている。
よく見たら慧は汗だくで、パジャマが濡れている。
「すごい汗! 待ってて」
私は急いでタオルを濡らして持ってきた。
「慧、上脱いで」
「うん」
私は慧の体を拭いてあげた。
「替えのパジャマってどこ?」
「そこ」
示されたタンスからパジャマを取り出して、着替えてもらった。
上下で異なってしまったのは仕方ない。
「それじゃあおやすみ、慧」
「うん、おやすみ」
慧が眠ったので、私は勉強を再開した。
「うぅ……」
慧が横になってからそこそこの時間が経ったのだが、苦鳴や寝返りを打つ音が聞こえる。
眠れないようだ。
「慧、大丈夫?」
「……寒い」
慧には今、ふかふかの暖かそうな布団が掛かっている。
熱が出ると寒く感じるから、そのせいなのだろう。
(どうしよう……)
慧に掛かっている布団より暖かそうな布団は私の家にはない。
たぶんこの家にもない。
何枚も重ねれば暖かくはなるだろうが、今度は重くて眠れない。
(何か暖かい物……人肌?)
暖かい物を考えていたら、とんでもないことを思いついてしまった。
私が温めるということを。
(いやいやいや……)
この前一緒に眠ったことがあったが、あれは私のベッドだったからだ。
慧が寝ている慧のベッドに私が入るというのは、なかなかに抵抗がある。
「うぅ……」
(って、そんなこと考えている場合じゃない!)
慧の苦鳴で吹っ切れた私は、慧のベッドに入った。
「慧、しっかり」
私は慧を温めるべく、抱きつくように体を密着させた。
(熱い……)
だが慧の方が体温が高く、私の方が温まってしまった。
慧がこれで楽になってくれるといいのだが。
「すぅ」
なったようだ。良かった。
(もう出よう。そろそろ限界)
慧が無事眠りについてくれたので、私はベッドから脱出する。
もう熱くてたまらないのだ。
「慧? あ、離して」
「すぅ」
だが離れる直前に、私は慧に捕まった。
まるで温かみを離さない、というばかりだ。
「慧~、熱いよ~」
足まで絡まれて、身動きが取れなくなってしまった。
もちろん無理やり抜け出すことはできるのだが、流石に可哀想だ。
(もう、あとでお風呂に入ろう)
私は脱出を諦めた。
私は汗だくになってしまうが、汗なんて流せばいいのだ。
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