威嚇訪問でしょ?
遂にガロン王国が魔国と不戦条約を結んだらしい。
唯一、魔国との関係を良しとしなかった大国。
「貿易? 別にそんなもん、あんたとことせんでもかまへんし。
別に魔国に戦争仕掛けてもエエんちゃうか? でも、そん時は僕もノーススプリングもサルデイルも此処に攻めに来るやろな」
成海さんのこの言葉がガロン国王の心を折ったらしいです。
「と、いうわけで、ガロンに行きますよ」
意気揚々と語り出すエリスに私は呆然とした。
と、いうわけでってどういうわけ?
「ガロンにはこの国に無い施設があります。そこに行こうと思います。
それに、今ヴァイスがガロンに行くことに意味があるのですよ。不戦条約を結んだ今が……。
そうですね、何だったらディアブロスも連れていきましょう」
パパを連れて行くならママもついてくるんじゃないですか?
結局、ガロン城に現地集合でパパとママが来る事になりました。
私とエリスは馬車でゆっくりと行くつもり……だったのですが、先走ったパパが予定より3日も早くガロン城に飛び込んだ。その事を転移してきたママから聞いて、私達も転移でガロン城に向かった。
ガロン王国は国土はそれ程広くはありませんが、戦争大国と言われ続けていた。その要塞とも謂われるガロン城の王の間に突如現れた魔族。
何処の王城でも魔術阻害の陣を打っています。
それを無視して転移してきたバンパイア、当然、王には優秀な近衛兵が就いているのだが、優秀であるがゆえに目の前に現れたバンパイアの実力がわかってしまう。
その実力差に絶望し、それでも任を果たそうと震える手足で国王を守ろうとバンパイアの前に立ち憚る。
「突然の訪城失礼する。我が名はディアブロス・ディアベル。魔国にて大魔王に就きし者」
そして、続けざまにママと私とエリスが転移で王の間にやって来た。
「いきなりの訪城の無礼をお許し下さい。私は魔王様に使える侍女のエリス・エルガルドと申します。
此方が今そちらに居ります大魔王ディアブロス様の妃で在らせまするリリア・ディアベル様。
此方が、今代の魔王ヴァイス・ディアベル様でございます」
剣を両手で持っている兵士は剣の先端が10センチ程ぶれている。女性魔術師至っては尻餅を就き、股間を濡らして泣き出してしまった。
「それでぇ、あの命令は~完遂出来たのですかぁ?」
「……いえ、まだ……です。……今晩にでも……」
「あらあらあら~、では~、明日の報告を~楽しみにしてますねぇ」
「…………はい」
ん? エリスはママに何か命令を受けているみたいですね。私に手伝える事かな?
因みにエリスは今、ママの背中を洗っています。此処はエリスが言っていたガロンにしかない施設、温泉です。
私は既にママに背中を洗ってもらって湯槽に浸かっています。物凄く大きな湯槽の片隅で小さくなって浸かっている女性がいます。先程、股間を濡らした魔術師の女性ですね。
私は湯槽から上半身を出さないように座った屈んだ状態で彼女に近付きます。
「気にしなくて良いですよぉ」
「うひっ……!」
彼女に話し掛けると驚かれました。少し心外です。
「パパとママに~、会った時、勇者も賢者も~貴女と~、同じでしたからぁ。
ところでぇ、貴女のお名前はぁ?」
「も、申し訳……ありません。……ま、魔術兵団お、王家直下部隊た、隊長の……エステア・ガロンと申します」
そう答えるエステアさんは、今にも泣き出しそうです。っていうか、エステア・ガロン?
「ん? エステアさんって~、王族なんですかぁ?」
「あ、私は……、私の母は国王陛下の当て女です。陛下の御慈悲で認知して頂いたのです」
当て女? 御慈悲でってどういう意味?
「当て女と言うのは、王族に限らず、貴族にもある風習と言うか、男性貴族だけにある儀式みたいなものですね」
私が疑問に思っていると、いつの間にかに私の後ろで温泉に浸かっていたエリスが答えました。
「ヴァイスも知っているかと思いますが、貴族の男性の責務として子孫を残すというものがあります。
要は子作りですね。その際、初めての時に上手く出来なくてトラウマとなり子作りが出来なくなってしまう事があります。
それを避けるために、10歳から12歳の頃に男性経験のある女性を宛がうのです。その昔は母親がその役目をしていましたが、昨今では没落した貴族の未亡人や、同家系の未亡人、妾等が宛がわれる事が多いですね。御慈悲というのであれば、没落貴族の妾の子でしょうか」
エステアさんは小さく頷きました。
「因みに魔族も同じ様な事をしてるわよ。ディアブロスの当て女は私だし」
衝撃の事実です!
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