侍女……ですかぁ?
私は人の喋り声で目を覚ましたんだと思います。
「あらあら~、昔みたいにリリって呼んでくれないのかしらぁ? でも~本当にぃ久しぶりねぇ、いつ以来かしらぁ」
「私がリリの侍女を辞めた時だから2000年振り位かしらね。でも本当にどうして此処に? もしかして、リリが直接ヴァイスさんに謝りに来たの?」
「違うわよ~、ヴァちゃんは~、私の娘よぉ」
1人はママの声だけど……、もう1人は?
私はゆっくりと身体を起こしてベッドの上に座ろうとしました。
「あぁぁ、気が付いたのですね! 起き上がって大丈夫なのですか?」
私はその声の主と自分の姿に気付いて、咄嗟に布団に潜り込みました。
シスターです。そして自分は裸でした。
───ふぁ~、シスターに見られた!
込み上げてくる羞恥と共に下腹部の違和感に気付きます。下腹部の鈍い痛みとお尻へと伝う液体に……。
私はお尻へと手を伸ばし、その液体に触ります。ドロッとした感触、そしてその臭いにそれが何か気付きました。
───生理?
私はいつ排卵をした? 朧気に記憶が戻ってきました。
「も! もっと……下さ……い。お願……いし……ます」
「排卵しろ! そしたらもっとくれてやるよ、妊娠させてやる!」
「あ……あぁ、今しました~。排卵……しました。だ……から、妊……娠させ……て……下さい……。だから、早……く、早く下さい!」
ギァァ!! 最悪です。あんな痴態を……。
見られたくなかった。でも、あそこで抵抗でもして子供達に危害が加わっていたらシスターに憎まれたかもしれません。
気付かないうちに私は泣いていました。ママはそれに気付いたのでしょう、頭を撫でてくれています。
「大丈夫ですよぉ、気にする事は~ありません~」
ダイジョバないです! 絶対に軽蔑されています。
私は頭を横に振り続けました。無理です。もうシスターとは会えません。
「もう、……会えないです」
「……! そういう事ですかぁ。それなら~、本当に大丈夫ですよぉ。
エリス~、ヴァちゃんを頼みましたよぉ」
嫌だ! 待って下さい。今、シスターと2人きりにしないで下さい。
頭から離れた手を追いかけるように手を伸ばしましたが、それは空を切りました。
「リリ! もう少し傍にいてあげた方が良いのではありませんか?」
「いいえ~、私は~邪魔者ですよぉ。今~、必要なのは~、エリス~貴女ですぅ」
ママはシスターに何か耳打ちしてから部屋を出ていきました。シスターは驚いた様子でママを見送っています。
ふと、シスターと目が合いました。そして、ゆっくりとベッドに近付いてくると布団の上からですが抱きついてきました。
「……!!」
「ヴァイスさん、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
シスターが泣きながら私に謝ってきます。
「そして、ありがとうございました」
更にお礼です。お礼の意味はわかりました。子供達は助かったのですね。その事に関してだけはホッとしました。
少なくともシスターに恨まれる事はなそうです。
「良かったですぅ」
「良くはありませんよ!」
えっ!? 子供達は助からなかったの? 私がシスターに見せてしまった羞恥は無駄だったの……!
「子供達の身と引き換えに貴女はあんな目に会ったのですよ。良い訳がありません。
貴女は言わば、孤児院とは無関係なのですよ。なのに何故あんな無茶な事をしたのですか?」
私は気が動転していたのでしょうか? つい、本音を語ってしまいました。
「シスターに~、嫌われたくなっかたの~。子供達を~見捨て……、恨まれたく……なかったのぉ」
「貴女って子は……。貴女ならあの魔族達に勝てたでしょう? あの時、子供達を見捨てて戦っていれば貴女はこんな目に合わなかったのよ。
それに私はそれを恨んだりしませんよ。子供達の死に悲しむ事はあっても、貴女を恨むことはありませんでしたよ。
そして逆に、貴方がもし今回の事で取り返しの利かない事になっていたら、私は貴女を恨み、自分を許せなかったでしょう」
「子供達は……?」
「あそこにいた貴女以外、全員無事でしたよ」
ビックリしました。あの子達は無事だったんですね。最悪の状況ではないのですね。恨まれてないのですね。
「ですから、私は貴女を許しませんよ。リリから許可を貰っています。
自分の事を大切にしない貴女を、私が徹底的に再教育させて貰います。今日、今この時から私は貴女の侍女になります」
ごめんなさい、意味がわかりません。何故シスターが私の侍女になるのですか?
思い出せば、シスターとママは昔からの知り合いみたいな事を言ってましたね。
「あの時の~、私を見てぇ軽蔑しないのですかぁ?」
「何処に軽蔑する要素があるのですか? そのネガティブな思考を何とかしてください。
それとも私に軽蔑して欲しいのですか? 軽蔑されて苛めて欲しいのですか? それなら喜んでさせて貰いますよ」
シスターの言葉に唖然としてしまいました。そして、苛めて欲しいかもと思う自分にビックリしています。
「まず、身体検査をさせて貰いますね。完全に媚薬が抜けたのか確認させて頂きます」
シスターは私の被っていた布団を引き剥がすと身体のあちこちで指を這わしてきました。
「んぁ、んぅ……、抜けてますからぁ……ひぁん。
シスター、止めて下さ~い」
「……」
「シ、シスター?」
「……」
「シ……」
「言った筈ですよ。もうシスターではありません。貴女の侍女のエリスです」
私に侍女が出来た瞬間でした。
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