シスターエリス

 何故だかわからない。何故だかわからないけど、一緒にいるだけで心が落ち着いた。


 ───シスターエリス。


 私は彼女と一緒にいるために、孤児院の子供達に何かと差し入れを持っていくようになっていた。

 食堂の残り物だったり、絵本、玩具等も寄付した。


 切っ掛けは教会で平民の子供達に文字や計算を教えるという計画だった。

 その打ち合わせでよく教会に通うようになった私はシスターエリスと同じ時間を過ごすことが多くなっていった。

 勿論、シスターエリスは私が魔族であることを知らない。ましてや魔王などとは微塵も思ってはいないだろう。


 シスターエリスは少し時間が出来ると私にセロフィムやケルビムの話しを聞かせてくれた。

 魔族の私に天界の天使の話しをだ……。最初は苦笑い気味だったが、天界の天使達は私達魔族にとっては天敵以上の存在だ。

 天使達の殆んどが聖属性で、魔族の殆んどが闇属性で相性が頗るほど悪い。と言うより、ケルビムが出てくれば魔族は全滅するだろう。

 しかし、シスターエリスの話しが実話に基づいた話しであれば何らかの手段を用いて、全滅を回避できる可能性があるかもしれない。

 ………それに、シスターエリスの声を聞いていると落ち着くし。


 今日も私は孤児院に来ていた。子供達には美味しいと定評のある有名店のクッキーを差し入れにして、シスターエリスに会いに来ていた。


「ヴァイスさん、いつもありがとうございます。しかし、こうも毎回何かしら貰うのは……」


 シスターが話していると、ドアがノックされて子供達が数人入ってきた。


「ヴァイスお姉さん、いつも差し入れありがとう」

「いえいえ、どう~致しましてですぅ」


 入ってきたのは獣人族の女の子ばかりだった。この子達には私が性行為の指導をしている13歳以上の子達だ。


 ───ガシャンッッ!!


 その時、窓ガラスを破って中級悪魔が部屋に入ってきた。その数2匹。


 これぐらいなら私だけで対応出来る!


 そう思い、身体強化掛けて悪魔に向かおうとした……その時。


「はい、そこまでね。動くと可愛い女の子の顔に傷が付いちゃうよ」


 慌てて、後ろを振り向くとお礼を言いに来ていた女の子達の一人にナイフを宛がっているサキュバスがいた。

 次の瞬間、子供達の足元に魔方陣が現れてサキュバスはゆっくりと私に近付いてくる。


「私の魔法よ。私が死ねば魔力が分散して爆発するわよ。

 ここ最近、この教会から夢魔族の魔力が感じられたから気になってたんだけど、あんた……、ハーフだね。残念だよ」


 何が残念なのかは、わからない。ただ、現状は子供達を人質に取られていると言うことだけだ。


「まあ、せっかく足を運んで来たんだから、遊ばして貰おうかね。あんた、服脱ぎな。

 私達3人で遊んであげるから。勿論、は許さないよ。意味はわかるよね」


 このサキュバスは私が夢魔族だとわかっている。それでいて一切の抵抗をするなと言うのは、甘んじて婬魔の媚薬を受け入れろと言っているのだろう。


 子供達の命が掛かっている。正直言って見捨てる事も可能だ。しかし、全く知らない訳でもなく最近は情もある。それにシスターの前で私が子供達を見捨てればシスターはどう思うだろうか? 

 シスターは子供達に近付こうとしているが魔方陣の結界で近付けないでいる。


「ケケケ、脱げって言ったのが聞こえなかったか!」


 2匹の悪魔が私に近付き、着ていた服に手を掛けるとおもいっきり引き裂いた。下着も同様にだ。私はあっという間に裸体を曝だした。


「キャァ」


 私は胸を両手で隠してしゃがみこむ。普段ならこんな反応はしない。なのに、勝手に身体が動いてしまった。


 ───シスターに見られたくない!


「止めなさい、ベルファリア! ヴァイスさんではなく私にしなさい」


 シスターが叫んだ! 何? ベルファリアってこのサキュバスの名前なの? この2人は知り合いなの?


「何で私の名前を……、あぁ、思い出したよ。200年ほど前に遊んでやったエルフか。

 残念だけど、私は同じ女を抱かない主義なんだよね。あんたも大人しくしてないと子供達が死んじゃうかもしんないよ。

 で、あの時のあんたみたいに、このヴァイスっ子の喜び狂う姿をよ~く見とくんだ。目を逸らすことは許さないよ」


 ベルファリアは私にゆっくりと近付くと私の髪の毛を掴んで立ち上がらせた。


「ほらっ、しっかり飲み込むだ。舌を出しな」


 私はおずおずと舌を出す。


「もっと出すんだよ!」


 ベルファリアは私の出した舌に吸い付くと唇を重ね唾液を私の口の中へと送り込んできた。

 これが媚薬の役目をする。しかも大量に送り込んでくる。こんなのただの人族だったら狂い死ぬ量だ。

 頭を押さえられて唇を離させてくれない。こんなの飲み込むしかないじゃないですか!

 更にベルファリアの下腹部から男性性器が現れた。

 ベルファリアはサキュバスではなく、両性具有種だった。


「今の私はオークジェネラル3回分を溜め込んでるだよね。一気に出そうか? それとも分割がいい?」

「ベル様、早く早く」

「そうだね、あんたらは後ろと……」


 無理だ! もう頭が……、思考が纏まらない。既に身体が痙攣を起こしている。確実に媚薬が効き始めている。目の前が真っ白になって何も見えない。

 声すら出ない。出せない! 口の中に何か入れられている感覚がある。意識を失い掛けると魔法で覚醒させられる。




 どれぐらいの時間がたったのだろう? 微かに残る意識と視界の中で、ベルファリアが見える。シスターの顔も見えた。私に向かって話し掛けてくれているみたいだけど……、何を言っているのかわからないよ。

 

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