美咲の憂鬱
ヴァイスが魔国に行って3日が経った。彼女は帰って来るのでしょうか? 彼女の事ですから、成海は帰えして来るでしょう。しかし……。
隣で佑介もかなり考え込んでるみたいです。
「あの子、帰って来るかしら?」
「……帰ってきて欲しいのか?」
佑介は何を言ってるの? 当たり前じゃないの!
「ヴァイスが帰ってきたら、俺は何処かに行こうと思う。……アイツ等もう売れただろうな」
佑介の言うアイツ等は多分クラスメイトの事だろうか? 成海をバカにしてた優子と洋子。そう、1人は成海が告白した子だ。
そんな事よりも何故佑介が何処かに行く必要があるの? 佑介の隣は私じゃないの? 何故今頃、あの2人の事を口にするの?
「ねぇ、何処に行くの? いつ……帰って来るか……しら? そ、それ……に、…………誰……と?」
聞きたくない! 聞きたくない。聞きたくない!
泣きそうになるのを我慢しながら、声を絞り出す。しかし、佑介からは答えが返って来なかった。
「ゃ……だ……ぁ」
佑介に抱きつき、唇を重ねて私から舌を使い始めた。
私の行為を拒みはしなかったが、応えてもくれなかった。抱きしめ返してくれないし、舌の動きにも対応してくれない。
それでも私は必死に成海に教わった通りに動いた。
その必死さも叶わないまま、私の両肩に手を置いてゆっくりと私は引き離された。
「……どう……して?」
嫌だ! 嫌だ! 嫌だ、嫌だ、嫌だ、嫌だ!!!
私はブラウスのボタンを引き千切る様に外し、スカートのホックを外してチャックをおろした。
ここは食堂、食堂の営業時間は終わって料理人は帰ったが、泊まり客はまだ使用できる時間で、今日は5組が泊まっている。
そんな事、知った事ではない! 佑介が望むなら、手足を縛られたままオークの集落に放り込まれても構わない。
素っ裸のままで奴隷商まで行って、佑介の奴隷にでも、いいえ性奴隷になっても構わない。
───だから、私を捨てないで……。
ショーツを脱いでブラのホックに手を掛けた。
全裸になった私を佑介は呆然と見ている。いや少し違う。視線は私を通り過ぎて、私の後ろを見ている様な気がする。
「そういう事は~、部屋だけでぇお願いしたいですぅ」
声に釣られて私は振り返る。そこにはヴァイスと成海が立っていた。
───佑介が出て行っちゃう!
「やだぁ、行かないでぇ! 私を置いて行かないでぇ。このまま奴隷商に行って性奴隷にされてもいいから、佑介の傍にいさせてよ……。……やだよぉ、佑介と離れたくないよぉ」
「お、ちょ……ちょっと待て! とりあえずこれを着ろ。で、ヴァイスじゃなくて俺で良いのか?」
佑介は正装の時に着ているワイシャツを私の肩から掛けてくれた。でも、何でヴァイスの名前が出てくるの?
私は佑介のワイシャツに腕を通しながら疑問を口にする。
「何でヴァイスの名前が出てくるの? ヴァイスは女の子だよ。私は成海じゃないんだから。
私の好きなのは佑介だよ、……ずっと一緒にいさせてよ」
「……じゃあ、この間、ヴァイスとベッドで何をした?」
……それ、答えないとダメかな?
「ゅ…ぅ……が、喜ん……テク……クを教え……」
「えっ、何? マジで聞こえない」
だって、恥ずかしいし……。
「あの日だったらぁ、サキュバスの~男がぁ喜ぶぅテクニック教えてましたよぉ。
美咲さんは~、ドSだからぁ違うって言ったんですどぉ、脅されて~教えましたぁ」
「ちょう待ち! もしかしたらヴァイスちゃんが僕に言うた、美咲の立ち位置が違うって……」
「はいぃ、SならSらしくぅ、従わらせれば良いのにぃ無理に奉仕しようとしてましたからぁ」
ヴァイス、後で覚えておきなさいよ!
「はわゎゎゎ、今のはぁ、聞かなかった事にしてください~」
今更遅いわよ。でも、少し楽しいと思う私がいる。
急に佑介が私の腕を掴んで私達の部屋へと引っ張って行く。そして、そのままベッドの上でマウントポジションを取られた。
両手を押さえられたままの激しいキス。
佑介が私を求めてくれている。そう思うだけで下腹部が疼いてくる。
佑介が貸してくれた服は袖を通しただけでボタンは止めていないかった。私が自ら脱いだ服や下着も食堂に置いたまま……。
───これって、もしかして『彼シャツ』ってヤツなの。下着も着けていない状態の彼シャツの姿に、いつもと違う佑介の行動、このシチュエーションに疼きは強まってしまう。
私があれこれ考えている内に、佑介は服を脱いでいた。今までとは違う荒々しい愛撫だった。
「あ、ふぅ……。あっ、ダメ! シャワー浴びてないから……」
私の訴えは無視され、佑介は私の下腹部より下へと進んでいく。
───せめてクリーンを……。
「今日はクリーンを使うな。使わないでくれ、責任はちゃんと取るから」
ちょっと、クリーンを使わなかったら避妊が……。
「……!!」
それってそういう意味だよね。妊娠したら責任を取ってくれるって意味だよね。……け、結婚するって事だよね?
「佑介、佑介~。好き……、大好き」
「あぁ、俺もだ、美咲。ずっと一緒にいよう」
出来れば私の目を見て言って欲しかったな。下半身に向かって言わないで欲しかったな。
もしかしたら、下半身に……そういう意味なのかな?
「だから、もう性奴隷になるなんて言わないでくれ。俺を困らせないでくれ、頼む……」
あっ、違ったみたいです。良かった様な残念な様な……。
何があっても絶対に離れませんからね。
「……うん、性奴隷になるなんて2度と言わない」
だって、言う必要がないんだもん。身体に印が付いていないだけ、契約で縛られてないだけ……。
───だって既に心は……。
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