どないするんや?

 さてと、これで佑介と2人きりで話しが出来んな。この事は絶対に美咲には知られたらアカン。


「佑介、優しいしてな」


 ここは一発冗談かましとこか。


「…………」


 おいおい、佑介。もしかしてマジで緊張しとるんちゃうやろな? まぁ、佑介が望むならそれはそれで選択肢が無くなるだけやからエエけどな。


「なぁ成海、お前……、本気か?」


 佑介、テンパってるやろ? そういう事言いつつベッドに押し倒すか? そこは『いいんだな』やろ。


「ん、本気か? って聞かれたら本気って答えるで。そやけど、お前とここへ来た本命は別にあるけどな」

「やっぱり、そうか。それで何の話しだ? 美咲に聞かれたく無い話しだろ?」


 おっ、案外と冷静やないの。


「美咲の二股についてや。美咲はまだ気付いてないけど、ヴァイスちゃんを愛し始めとる。

 切っ掛けは言うこともない、あの時からやな。僕はヴァイスちゃんからしか聞いてないから詳しぃは知らんけど間違いないやろ。

 マジで今頃、ヴァイスちゃんと美咲はベッドの中やで。僕と佑介みたいに座ってるだけじゃなくてな」


 佑介は少し沈んだ顔で考え込んどる。


「だろうな……。さっきの美咲とヴァイスの話しを聞いてると、前にもあったんだろ?」

「そや、美咲に頼まれて僕が女の攻め方を教えたんや。

 美咲はヴァイスちゃんに後ろめたさがある。しゃ~ないわな。自分の変わりにヴァイスちゃんが犯されたんやからな」

「あぁ、俺も正直言ってヴァイスに後ろめたさがある。あの時、すぐに隣の部屋に行ってたらヴァイスはあの魔族とあんな事にはならなかった可能性があった。

 俺は美咲が苦しんでるのを見て、ヴァイスの事を後回ししたんだ」


 それも、しゃ~ないやろ。彼女が媚薬使われて我慢出来やん状態やったみたいなもんやろ? ヴァイスちゃんは仲間かもしらへんけど、佑介が優先するんは美咲で間違いない。


「過ぎた事言うてもしゃ~ないやろ。まあ、詳しい話しは端折るけど、あの7号室で美咲はヴァイスをいつものお仕置きやって言うて、襲ったんや。

 これは女の感覚かもしれへんから、佑介にはわかりぬくいかもしれへんけど、記憶の上書きってヤツやな。

 嫌な事を別の感情を持って同じ様な事をするってヤツや」

「そこでヴァイスと……。そう言えば今日も……」


 そやけど、今日はその後ろめたさからの行為とちゃうやろな。自分の意思で美咲はヴァイスちゃんを求めとる。

 あの目は、さっきの美咲の目は恋人とデートに行く前の希望に満ちた目やった。

 まぁ、ここ最近の美咲の視線を見てたらまるわかりや。あれは佑介と付き合う前の佑介を見てた視線と同じやったもん。


「本題に入るで! 究極の2択や。佑介と美咲が此処から出ていくか、佑介が僕とヴァイスちゃんを抱いてハーレムを作るか? どっちも出来へんのやったら最悪みんなバラバラになるやろな」


 幸いな事にこの世界は一夫多妻制が認められている。更には勇者パーティー全員にヴァイスちゃんや。自惚れかもしれへんけど女性は皆美人揃いや。

 問題も違和感もないやろ。後は、佑介の覚悟だけや!





「美咲さんはぁ、鬼畜ですぅ。朝からぁ、襲われましたぁ」


 この場に佑介はいない。まだ1号室で寝ている。それなのに美咲は何事も無かったかのように朝食を食べている。

 結局、佑介は僕を抱かなかった。それは別に構へん。抱かれてもエエと思とるだけで抱かれたいとは思てへんからな。

 佑介のハーレム構想も別に僕は名前があるだけで、関係を持たなくてもエエと思とる。


「無防備に寝ているヴァイスさんが悪いのよ」

「むぅぅ…」


 美咲の言葉に可愛く怒っているヴァイスがいる。そんな顔をするさかい襲われるんや。僕も2人きりやったら襲っとるがな!

 …………違うやん、僕はえらい勘違いをしてた! 別に美咲と佑介の関係が壊れても佑介がヴァイスちゃんとくっつけばそれでエエんや。

 アカン、ハーレムちゅうたら男が多数の女を愛するとばかり考えとった。

 ちゃうやん、女が男女問わず愛してもエエやんか! 佑介を軸にするんやのうて、ヴァイスちゃんを軸にしたらエエだけや。


 ただ、一番エエんは美咲が元の鞘に戻って佑介とイチャイチャしてたらエエんやけどね。今の美咲を見てたら、ヴァイスちゃんに首ったけや。

 佑介が僕に首ったけになっても構へんのやけど、佑介は美咲を見てるし、僕も佑介とそんな関係になるビジョンが見えへん。




「成海さ~ん、少し相談があるんですけどぉ、部屋に来てくれませんかぁ」


 ヴァイスちゃんが厨房にいる僕に話し掛けてきた。

 佑介と美咲は冒険者ギルドに行ってる。今、あの佑介等を2人きりにするは心配やったけど、僕がおってもヴァイスちゃんがおっても話しがややこしいなるだけやろと思ってほってある。

 正直、あの2人はなるようにしかならんやろ。


「かまへんよ、部屋に行ったらエエんやね」


 僕はヴァイスちゃんに答えて厨房から部屋へと向かった。

 部屋に入るとヴァイスちゃんは紅茶を用意してソファーに座っとった。


「ん、相談って何や? 僕ら2人の結婚式の事かいな」

「そうですねぇ、それに近いですぅ。成海さ~ん、明日からぁ2人でぇ、魔国に行きませんかぁ?」


 えっ、ちょう待ってや。僕が魔国に? もしかして、あの2人に会うんかいな。


「それ、僕も行かなアカン?」

「私はぁ、1週間程いるつもりですけどぉ、成海さんはぁ、1日で良いですよぉ。

 今の美咲さんはぁ、自分の立ち位置がわからなくなってるみたいですぅ。

 私がいるとぉ、3人がバラバラになりそうで嫌ですぅ。私はぁ、魔国に戻って魔王になろうぉと考えてるですぅ。多分就任式がぁあるので出て欲しいですぅ」


 ヴァイスちゃんは気付いてたんやね。しかし、何でこのタイミングでヴァイスちゃんが魔王になろうとしてるねん。

 もう僕らと一緒におられへん様になるやんか!


 ……ちゃうな、ヴァイスちゃんは1週間って言うてる。何や? 今、魔王になる意味って……。


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