いい加減にしてくださぁい
「脱ぎますかぁ? 脱がしますかぁ?」
「時間がないからな、脱いてくれ」
はいはい、この地点で2流以下ですね。服の脱ぎ方も雑です。言葉は悪いですがド
ママ仕込みのサキュバスの技を舐めるなよ!
私は基本通りに恥じらいを醸しながら服を脱いでいきます。ヤツはそれをスルーして全裸でベッドに向かいました。ベッドの脇で立ち止まり私が脱ぎ終わるのを待っています。
そこはせめて、ベッドに仰向けに寝ろよ! マジド素人じゃないですか。
全てを脱ぎ終え、胸を両手で隠しながらベッドに向かうと、途中で腕を掴まれて、ベッドに押し倒されます。はい、不合格。
10秒にも満たない無理矢理のキス、不合格です。
唇から首へと舌を這わす、不合格です。
首からすぐに胸の先端へ移動、不合格です。
右手は腰から太腿の外側、内側へと動かして、ギリ合格です。
そしていきなり中心へ、不合格です。
話しになりません。あっという間に合体です。
リズムは一定、不合格です。
体位変化無し、不合格です。
基本通りに私は演技はしていますが最低です。
インキュバスなので仕方ないですが持続時間だけ長いです。
何やら自慢気に話していますが全て無視です。って言うか、インキュバスが相手の本気か演技か見極められないのも信じられません。
どうやら終わった模様です。さてさて、此処からが私のターンですね。
「本当にぃド素人でしたねぇ。人化解いた方がいいですよぉ。これから地獄が待ってますぅ」
って言うか、必ず途中でコイツの人化は解除されます。これから私がコイツの魔力を頂くのですから。
どうやら隣の部屋に佑介さんが入ったみたいです。存分に慰めてあげて下さいね。1度掛けられた淫魔は男性を受け入れるまで続きますからね。
「ぐ……がぁ、何だ! お前は何者……ぐわぁ……」
「知りたいですかぁ? 教えてあげますよぉ。
ロイヤルクイーン、リリアの娘、ヴァイスだよぉ」
せっかく教えてあげたのに意識が飛んでますね。
ん~、かなり吸い取りましたね。コイツは既に白目を剥いています。でも、これで終わらせませんよ。
「ヴァイス、大丈夫……か? す、すまん」
部屋に佑介さんが飛び込んできたのですが、今の私の姿を見て後ろを向いています。
「別に大丈夫ですよぉ、美咲さんにぃ、手を出したコイツを~料理してるだけですからぁ。別にぃ見ていても構いませんよぉ」
「俺が構うんだよ」
「そうですかぁ、見られて減るもんでもぉないですしぃ」
佑介さんは後ろを向いたまま私と話しをしています。
でも、もうそろそろ良いですかね。私はヤツから離れて服を着ます。
「今ぁ、服着ましたよぉ」
「お、おう、助かる。ん、魔族か」
「そうですねぇ、低能なはぐれインキュバスですぅ。人族に紛れて生きてるのにぃ、美咲さんに手を出すからですぅ。
そ~言えばぁ、美咲さんは収まりましたかぁ」
「あぁ、隣で寝ている。美咲を助けてくれて、ありがとう」
そうですか、隣で寝ていますか。
「気を失うまでやるなんてぇ、佑介さん鬼畜ですねぇ」
「おま……そ、それは違うだろ。美咲が……。それより、ソイツ生きてるのか?」
「はいぃ、生かしてますよぉ。人族にぃ、紛れて込んでるはぐれですからねぇ、殺すと面倒なんですぅ。
人族に取ってはぁ、人一人死んじゃう事になりますからぁ」
本当は極刑なんですけどね。
「おう、だったらヴァイスが持ってる液体の入った瓶あっただろ? あの大きい方をちょっとだけ飲ませてやれ。
あれは男を男で失くす薬だ。一応小さい方が解毒剤になってる」
あぁ、佑介さんが地中深くに埋めてくれって言ってたヤツですね。そんな効果の薬だったんですね。
そう言えば、今、思いだしました。あれはパパから貰ったやつです。
「やっぱりぃ、佑介さん、鬼畜ですぅ! でもぉ、良い提案ですねぇ、実行ですぅ」
「お、おう……」
ヤツの口に薬を数滴落として持ってきたコーヒーで無理矢理流し込みます。
失神状態なのにおもいっきり苦しみ出しました。良い気味です。部屋にヤツを放置して私は美咲さんの様子を見に行きました。
美咲さんは服を着てベッドで寝ていました。ん、左の足首ピンク色の……。
私は振り向いて後ろにいた佑介さんを見ました。
「着衣合体ですかぁ? 変態ですぅ」
私は佑介さんを揶揄います。が、顔は焦っている様子は無く、真剣でした。
「ヴァイス、本当にすまん。俺は……、俺がこの部屋に入った時、美咲は『隣でヴァイスさんが……』って泣きながら俺に助けを求めた。でも俺は美咲が苦しんでるの見て、……俺は美咲を優先した」
ん、何言ってるんですか? 当たり前じゃないですか。
あっ、美咲さんが気付いたみたいです。虚ろ気な表情が私の顔を見て今にも泣き出しそうな表情に変わりました。
「ヴ、ヴァイスさん。ごめんなさい、私が油断したせいで……。大丈夫だったの? 何もされなかった?」
そんな訳ないでしょう。でも、そこで首を横に振るのはやめましょうよ、佑介さん。美咲さんに罪悪感を募らせてどうするんですか!
「私は大丈夫だよぉ、だってぇ私はキャスバスだよぉ。そういう事にぃ、抵抗はないですよぉ」
「ごめんなざい~、わたじのぜぃで…ごべんなざ……うわぁぁん、ごべんな……ざい……ぅ……ヒク……ごめんなざい……」
もういいから。ごめんなさいになってないから。
「ヒグチ様、おられますか? サクラ様が怒ってます。すぐにお戻り下さい」
廊下でキャロルおね~ちゃんが貸してくれた下働きの女性の声が聞こえてきました。
「やばっ、ちょっと俺は戻るわ。成海には説明しとくから」
「ちょっとぉ、待っ……」
行ってしまいました。出来れば今回の事は成海さんに内緒にしたかったのですが……。多分、今夜が大変です……。
「本当にごめんなさい、私のせいで…私の変わりにこんな……」
あっ、でもそう言えば男を受け入れたのはこれが初めてでしたね。バカな事でも言って少し解しましょう。
「だったらぁ、佑介さんを貸してくれますかぁ」
「……ぅぅ……佑介が良いって言ったら……でも……でも貸すだけですよ。必ず返して下さいね。お願いします」
そんな真面目な目で見つめて、嘆願しないで下さい。
「嘘ですよぉ、私が本気でぇ、そんな事を言うと思われてたんですかぁ」
「だって、私がヴァイスさんにしたことは……、それぐらいされても仕方ない事ですから」
何を言ってるんですか、この人は? ちょっとイラつきましまた。
「いい加減にしてくれないと怒りますよぉ! 私は美咲さんを助けたかったからぁ、自分の意思でああいう行動を起こしたんですぅ。
それを美咲さんが悪いんだって言うならぁ、私の起こした行動は無駄になってしまいますぅ。はっきり言ってぇ、遣られ損ですぅ。
そっちの方が私が悲しいですぅ……。
だからぁ、美咲さんは~、私にごめんなさいって言うんじゃなくて、ありがとうって言えば良いんですぅ」
「…………あり……がとう」
何、キョトンとしてるのですか? 私はそんなにおかしいことを言いましたか?
私は貴女を助けたのですからお礼の言葉を求めてもおかしくないでしょう? そして、その言葉だけで充分なんですよ。
「はい~、どう致しましてですぅ」
私は美咲さんに笑顔でそう言いました。
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