質問責めですぅ

「ヴァイスちゃん、知ってる限りでええさかい、教えてくれへんか?」


 そう聞かれたのは私が成海さんとベッドの中で一戦交えた後の事だった。

 同じ種族になってしまったので私は常に失神寸前で息絶々にされてしまいます。


「良いですよぉ。何ですかぁ? スリーサイズならこの間測ったので最新版を教えられますよぉ」


 呼吸を整えてから成海さんの質問に答えました。


「お、それは思いもよらん提案やけど、今はちゃうねん。あんな、ヴァイスちゃんの両親の事や。

 ハッキリ言うて、僕らが倒した魔王より目茶苦茶強いやんか? あんなもん、僕らは瞬殺されるやん。

 天地がひっくり返えろうがディアブロスが指1本しか使えへんかっても絶対に勝てやん。

 そやのに、何で四天王なんや? 何で魔王ちゃうんよ」


 あ~、頭っから間違えてますよ。パパもママも四天王じゃないですから。それと多分四天王の意味も間違えてるでしょうね。


「既に設定が間違ってますよぉ。ママもパパも四天王じゃないですぅ。パパは大魔王、ママは皇后ですよぉ」

「へっ?」


 私は魔国のカーストを説明しました。


 魔族ではパパはロイヤルクラウン、ママはロイヤルクィーンと呼ばれています。人族に伝えるなら大魔王と皇后です。

 そしてクラウンとクィーンです。これが魔王と妃ですね。その下にアリストです。これが四天王になります。

 更にその下にアンダーアリスト、人族の下級貴族ですね。そしてシビック、平民がいます。


 人族が完全に間違えているのが四天王です。私の知識ですが人族は魔王を守る4人の守護と捉えていると思います。

 しかし魔族でのアリストは上級貴族の意味になって、その人数は7名になります。

 その7名の内、戦闘に長けているのは防衛担当の貴族と治安維持担当の貴族です。それに何の間違いかパパとママが加わって四天王、4人の守護者になっているのです。

 因みにアンダーアリストは7人のアリストの直属の部下ですね。上級貴族のもとに4家の下級貴族が部下になっているのです。


 だから実際の魔族では大魔王と皇后、魔王と妃、この4家をスーパーロイヤルと呼んでいます。

 そしてアリストが7家、アンダーアリストが28家、計35家がロイヤルと呼ばれています。

 そして種族によって多少の力関係がありますが一応一律でシビックとなります。



「ちょう待ってぇな! ほな何か? ヴァイスちゃんって魔王より偉いんちゃうの」

「その辺が微妙なんですよぉ。ロイヤルは血筋で確定されるんですけどぉ、スーパーロイヤルは実力主義なんですよぉ。簡単には言えばぁ、シビックからスーパーロイヤルになる家もありますよぉ。

 なので家系としては私はスーパーロイヤルなんですけどぉ、魔王より偉いかと言うとぉ……わかりませ~ん。因みにパパとママはずぅっと、ロイヤルクラウンとロイヤルクィーンだそうですぅ」

「うん、聞かんかったことにしとくわ……。

 で、スリーサイズは?」


 結局、そこは聞くんですか? 86・59・79ですよ。因みにEカップです。

 ここで問題です! 難易度は1

 77・60・75、これは何の数字でしょうか?


「どうやら死にたいみたね! こっちにイラッシャイ」


 ヒィ! こ、答えは不特定多数の女性のスリーサイズです。決して誰かに狙いを絞った個人情報ではありませんよ。

 美咲さん、背中からどす黒いオーラが出てますよ。今ならパパに勝てるんじゃないですか。


「あらっ、そうなのね。そうね、良く見れば私の方が数値が上でしたわ」


 …………真ん中の数値じゃないですよね?


「ヴァイスさん、肩が凝ってるみたいですね。マッサージしてあげますわ。粉々に砕いてあげる」


 マッサージって疲れを解すんですよね? 砕かないですよね? 何を砕くのでしょう? 人の心でしょうか。

 そして、どうしてこの場に居ない人の姿が見えて声が聞こえるのでしょうか? 






 今私は美咲さんと2人っきりです。つい先程、声を掛けられて美咲さんの部屋にいます。

 私はこの部屋から生きて出れるのでしょうか? 呼び出されて2人っきりの状態なんて……、砕かれるのでしょうか……。


 クンクン、あ~、お互いに部屋を訪れてるんですね。この部屋から男性の匂いがします。佑介さんしかいませんからね、男の人は。

 一応キャスバスですから男性の匂いやあの時の匂いは敏感に反応するんですよ。多分昨日はこの部屋でやりましたね。ニタニタ。


「ヴァイスさん」

「はいぃ」


 砕かれるのでしょうか? もしかして食べられる? 色々な意味で……。


「私、ノンケですからありえませんよ」


 もう、慣れました。心でも何でも読んで下さい。


「成海からきいたのですが……」


 ん~、いつもの美咲さんらしくありません。いつもの自信を持った喋り方が成りを潜めています。

 多分、私の魔国での立場の事でしょうね。別に隠していたつもりはなかったのですが……。


「おし、おし……ぉ……」


 教えますよ。そんなにどもらなくて大丈夫ですから。気にしないで下さい。


「ヴァイスさんにはお尻の穴があるそうですね」


 そっち? その事? 美咲さんからその話しを振られるとは思いませんでしたよ。


「あのですね……、そのぉ、サキュバスにお尻の穴があるのは…………ぁ……の為だと聞いたのですが」


 ん? あぁ、その事ですか。ふ~ん。


「えっ? 何ですかぁ? 声が小さくてぇ聞こえないですぅ」

「ぃえ、……だから、その……」


 ニタニタ。美咲さん、顔が真っ赤ですよ。ちょっと面白いです。


「死んでみる?」


 わぁ、揶揄ってるがバレたみたいです。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい! ちゃんと答えます。


「ありますよぉ。人族と違ってぇ、排出気管ではなく性器として存在してますぅ」

「そ、そうなんですか……。それって、やっぱり…………だからですよね?」

「知ってると思いますがぁ、キャスバスは男性を喜ばして魅了する種族ですよぉ。需要はありますねぇ」


 顔から湯気があがってますよ。仕方ありません、お姉さんが教えてあげましょう。


 男女になるとどうしても女性が受け身になりがちですからね、男性を受け身させることが大事ですよ。

 女性からの唇へのキスは勿論、首筋や胸、お腹へのキス。その時も胸に指先を這わせるとか、内腿を触るとかありますね。

 まぁ、この辺りがステップ1でしょうか。


「……」


 ステップ2として、行為が始まって時間が経つと、どうしても女性は受け身になります。身体が反応して身動きが取れなくなるからですね。

 それはどうする事も出来ないので、そうなる前にギリギリまで男性を喜ばせる必要があります。

 方法として手は勿論、唇や口、胸……は無理ですね。人によっては足を使われるのに喜びを感じる男性も……。


「む、無理です~!」


 美咲さんは部屋を飛び出して行きました。ステップ2で無理ですか……。律儀にメモしてるじゃないですか。

 仕方ありません、このメモに付け足しの説明を書き加えて起きましょう。



 このメモのせいで私が佑介さんから逃げるのは、また別のお話しです。







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