これからどうするのですかぁ

「なぁ、佑介。

 お前もヴァイスちゃんから血貰って人間辞めへんか?」


 え~っと、それであってるんですけど……、あってるですけど、その言い方!


「ヴァイスの血を覚醒剤みたく言うなよ。

 ヴァイスが微妙な顔してんぞ。

 不老不死やろ?

 俺は良いわ。普通に年取って普通に死にたいと思う」


 彼ならそう言うと思ってました。

 不老不死を手に入れて喜ぶ様な人を美咲さんは好きにはならないでしょう。

 私は美咲さんの事を全然知りませんが何故かそう思いました。


「美咲はどうなんだ? 覚醒剤貰うのか?」


 自分で言っておいて、私の血を覚醒剤? にしてるじゃないですか!

 ところで覚醒剤って何でしょう?


「貴方って人は……。

 ヴァイスさんが変な顔してますよ。

 私はもうヴァイスさんに話してあります。

 人間を辞めません」


 お前もか美咲! 


「成海さんが眷属になったのは~、事故みたいなものですからぁ。

 別に眷属を作ろうとは思ってないですから気にしないでくださいねぇ~」

「でもよ、この2人でこの世界乗っ取れると思わないか?

 成海の不死なんてどうやったら勝てるんだ?」


 世界征服ですか? そんな事して何の得があるのでしょう? 面倒なだけじゃないですか。

 誰かに殺されるのを待つだけですよ。


「ヴァイスさん達がそんな事するわけないでしょ! バカも休み休みにしなさいよね」

「怒んなよ、怖いって」

「怒らしてるの誰ですか?

 全くぅ!……お風呂にいってくるわ」

「あっ、俺も行くわ」

「勝手にどうぞ!」


 あれっ?

 美咲さん、それで良いんですか?

 意味わかってますか?


「行っちゃいましたねぇ。大丈夫なんですかぁ」

「5分もせえへん間に大声出して美咲が戻ってくるやろ」


 ……10分後。


「戻ってけえへんなぁ。ヴァイスちゃん、ちょ、覗きに行かへん?」

「出歯亀ですか? サンドワームに食べられたくはありませんよぉ」

「サンドワームに食べられる? って何や?」

「恋路を邪魔することですよぉ」

「あぁ、馬に蹴られるってやつのこっちの世界バージョンかいな」


 等と言いつつ私達は抜き足差し足で風呂場の近くまでやってきました。


「ヴァイスちゃん、ノリノリやんか」

「声が大きいですぅ」


 2人して脱衣場のドアに耳を当てます。


「もう……抑えられませんよ、あっ、ん……」

「あぁ、抑えなくても良い、俺が全員受け止めてやる」


 あれっ? これって、やってますよね。

 あの美咲さんが……、甘ったるい声を出してましたよ。

 佑介さん、受け止めるの女の方ですよ。


「嘘やん、み、美咲が甘えとるやん。

 まぁ、それが自然の流れやねぇ。

 あの女をあんな感じに殺したんも一緒に召喚された仲間を殺されたっちゅうより、佑介を取られたって感情の方が大きかったんとちゃうやろか? 

 佑介の奴、あの女と何回か寝てたみたいやしな。

 騙された振りやと言っても事実、寝取られやからな」


 うぅ~、何か生々しいです。

 でも、美咲さんが幸せならそれで良いのでしょう。それに、成海さんも覗きの顔じゃありませんし。

 成海さんが一番美咲さんの事を気にしてたのでしょうね。




「なぁ、ヴァイスちゃん、僕らも……」


 やっぱりそうなりますよね。

 仕方ありませんね、私も少しその気になってますし……。


「メス豚、行くわよぉ」

「うわぁ、ヴァイスちゃん、ノリノリやん。本日2回目!」







「おはよ~ございます~。昨日はゆっくり寝れましたかぁ?」


 私がリビングに出てくると美咲さんと佑介さんが朝食を取っていました。


「おはようございます、ヴァイスさん。

 心配ありがとう、ゆっくり寝れたわ」

「そんなに佑介さんの腕枕は気持ち良かったんですかぁ」

「ん、あ……何で知ってるのよ?」

「語るに落ちたな、美咲。

 お前はカマを掛けられたんだよ。

 コイツらが知ってるのは昨日の風呂場だけだ。

 部屋には来ていない。

 ヴァイスも成海も俺の気配察知を舐めるなよ!」


 あちゃー、出歯亀がバレてました。

 ってコイツら?

 後ろを振り向くと全裸の成海さんが欠伸をしながら頭を掻いています。

 あんたの羞恥心は何処行った?

 せめて下着だけでも着けなさい。


「あー、成海。何やってるの!

 佑介も見ないの!

 見るのは私のだけで充分……ゴニョゴニョ」


 美咲さん、可愛いです!




「でだ、俺と美咲はこのサルデイルから出ようと思うのだが、成海達はどうする?」

「そやね~、少なくてもこの国に居てるはアカンやろなぁ。

 下手したら闇部隊を送られて来そうやね。

 まぁ、返り討ちやけどね」


 2人の会話は凄く軽いですが、話しの中身はかなり濃厚ですよね。

 国王陛下は多分あの女を生かしておくつもりだったんだと思います。

 普通なら国家反逆罪は極刑になる筈です。

 人族だけでなく、魔族でも極刑になります。

 それなのに国王はあの女を平民に降格させました。

 極刑にするなら必要のない手順です。

 それ故に美咲さんがあんな動きをしたのでしょう。


「私達は取り敢えず、ノーススプリング共和国に行こうかと考えています。

 あの国は此処みたいに人族だけでなく他種族も一緒に暮らしている国ですし、今後私達は冒険者としての生活基盤を考えています。

 あの国にはダンジョンもあって冒険者も暮らしやすい筈です。

 それに正直言うと異世界に来ているのですから、やっぱりエルフやドワーフなんかを見たいじゃないですか」


 そういえば、美咲さんの容姿って耳が尖っていればエルフに見えますね。

 体型はエルフそのものですよね。


「ヴァイスさん、また失礼な事考えてないですか?」


 美咲さん怖いです。

 何で考えてる事がわかるのでしょうか?

 私は頭に牛乳を入れたらバターが出来るぐらい横に振り続けます。

 ごめんなさい。

 もう2度と考えません。

 お願いですから燃やさないでください。


「そんなに必死に首を振らなくても燃やさないわよ。

 ちょっともぐだけよ」


 だからぁ、何で考えてる事がわかるんですか!

 それに何処をもぐのですか?

 目茶苦茶怖いです! ガクガクブルブルです。


「僕らも一緒に行こか?

 ヴァイスちゃんが何か考えとるんやったら合わせるけど」

「別に考えなんて無いですよぉ。

 後、ノーススプリングなら転移で行けますよぉ。

 魔国から逃げてきた時ノーススプリング通りましたからぁ~」

「それマジ? 俺ら行ったことなかったから乗り合い馬車で行こうと思ってたんだけど、頼めるか?」

「良いですよぉ」

「ヴァイス、サンキュー!

 よっしゃっ!

 これで40000ルーブル浮いた」


 喜んでたの、そこっ?


 お金は大事だけど……。

 美咲さんが睨んでますよ。


 佑介さん、貴方の命日は忘れません……。

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る