妖精界の騒乱
第14話 龍の襲撃に遭う妖精達
僕が神なんて冗談きついぜ。
エンジェルジョークってやつだろうか?
「いや、ほんとほんと。
魔法陣って世界に新しく意志を反映したい時に出る物なんだけど、魔法陣を通して、この世界には無い要素を別の世界から持ってくるんだ。それは、火、土、風、水だったり、物体を動かすエネルギーであったり。
でも、魔法陣が出ないって事は、世界には無い要素を持ってくるのではなく、新しく創造しているってことなの。
創造を行うにはある程度、”自分は世界そのものだ”っていう境地に立っていないと不可能なんだ。
こうやって世界と同化した存在の事を神っていうんだよ。」
僕が修復した通路を眺めながら語るカルーナ。
「せ、世界と同化してるっていってもな。僕はここに立って君と話してるだろ。
僕は僕としてこの世界に存在しているように思える。
これは、僕じゃないのかい?」
神と言われてまだまだ困惑を隠せない。
「うーん。そうとも言えるし、そうでないとも言える。
野田周としてのアース生活の中で、実体は神の領域に足を踏み込んでいるのは確かだよ。
ただ、お兄ちゃんが進歩していく以上、
そうだ。すでに顔なんかは別人になっている。
母さんにしても無自覚に実体へと近づいた結果、エメラルド黄色の髪を持つ美少女風になっているということか。
そして、実体は野田周の母ではなく、僕の知らない、メルシアや別の異世界で暮らしていた存在なのかもしれない。
母さんが妙に可愛い子ぶるようになった事とも関係があるのだろうか。
「でね、お兄ちゃんのために言うけど、野田周としての人格である《人との争いを極度に避ける性質(臆病な性質)》は今後、世界によって消しさる対象になるかもしれない。これは、お兄ちゃんを実体に近づけ進歩を促すための
もしかしたら、入界してすぐにユベールバーンの戦闘員に襲われたり、
野田周としての臆病な人格が世界により消されるかもしれない?
しかも、それが頻繁に襲われている事と関係があるだと??
あまりにもショッキングな言葉に動揺を隠せない。
カルーナは構わず、話を先に進めていく。
「本当はアース生活の中で争いを過度に避ける性質を解消できれば良かったけど、お兄ちゃんの自覚している通り、アースでは自分の価値観に反する事にはチャレンジできなかったみたい。だから、メルシアなどの真相界の中で、”野田周だったら嫌がるような事”が現れ、乗り越えて実体に近づいていく必要があるってことなの。
その一つが、誰かから喧嘩を売られたり、襲われたりといったことかな。」
「そ、それって、優しい男の子が不良校に入って絡まれる中で強くならざる得ないのと同じことかい?」
僕は不良校に入学し、周囲の席を不良に囲まれている気分で聴いた。
「おおーっ、いい例えだね!その通りっ。
実際、天使はアースの人間に対してそういう導きをすることが多いよ。」
生徒を褒める教師のような調子でカルーナは口にした。
「聴きたいのだけど、
恐る恐る聴いてみた。
「うーん、神様としての仕事をすることになるんじゃないかなって思うっ。
私は神の領域にまで足を踏み込んでないから詳しいことは分からないけど」
神様としての仕事か.....まあ、今考えても仕方がないや。
そもそも、自分=神様説自体、ピンと来てないし。
こんなビビりな自分がか?あー、だからそのビビりを世界は
もう、乾いた笑いしか出てこない。
その後、モヤモヤ苦悩しながらもカルーナがエルモンテスの街を修復していくのを後ろから眺める。
そして、カルーナはすべての修復を終え、さっき話していた海の見える高台へ一緒に戻ってきた。
「仕事も終えたし、私はウラノスに帰るねっ!お兄ちゃんに会えて嬉しかったよ。」
ウラノスという世界から降りて来たのか、神庁もそこにあるのかな。
「あれ?そういえば、
もしや......僕が原因という事で確定かい?」
「あ、それは違うよ。間接的原因はお兄ちゃんにもあるかもだけど、それは他に襲われた人も同様だから。ルーティアさんだって極端な平和主義で緩んだ部分を直されなければいけないし、平和で少し閉鎖的なエルモンテスの街で今回の出来事が起こったのは、そこに居る全員の事情が関係してると思う。
ただ、それとは別に、カツマラアが出現した直接的な原因については手掛かりが掴めなかったんだ。他の過去の事例を含めて判断すると、もしかして...と思える答えはあるけど.....
もし、それが本当なら、お兄ちゃんの力を借りに来ることもあるかも。
その時はよろしくねっ!!」
「ああ、分かったよ....」
苦笑いをしながら応える。
今までの会話の流れからして、絶対それ、危険な頼みなんだろ。
カルーナがこちらに手を振りながらウインクすると、足元に魔法陣が浮き上がり、ドンっ!!という音と共に、衝撃波を周囲に広げながら一気に飛び立った。
そして、ロケットよりも速い加速とスピードで、宇宙のような藍色の空に浮かぶ、月ほどのサイズの青い星へと飛んでいく。
あの惑星がウラノスなのか?
・・・・・・・・・・・・・
僕は母さんの家に戻ることにした。
「おかえりーっ!」
どうやら母さんは元気を出したようだ。
声の調子がいつもの呑気で陽気な感じに戻っている。
”ダンクロックスさんには神庁が良いように取り計らう”とカルーナが言ってくれたことに関係あるかもしれない。
「ただいま」
本でも読んでこの世界の事を知っておこうかな、、、と思い、早速、本棚に近づくと.....
『ピンポーン』
あの美しく澄んだ音が聴こえた。
僕が出るよ、と母さんに言い、ドアを開いた。
ガチャっ。
そこには、手の平サイズの妖精を子供サイズにまで大きくしたような可愛らしい女の子がいた。蝶のような羽までもしっかりついている。髪は透明感のある金色でウェーブがかったロングである。
「突然、失礼してごめんなさい。
あのぅ、あなたがあの大魔神を討伐されたのでしょうか?」
ぐぐ.....なんか嫌な予感。
「えーと、あの、あの、何といったらいいか....どうか話を聴いてください。お願いします!」
「どうしたんだい?み、道に迷ったのかな?」
絶対、道に迷ったんじゃないと分かりつつ聴いてみた。
後ろから母さんの「こら!めぐ君っ」と
僕はアースに居た時から休日に公園で子供と遊んでいた
子供が困ってお願いごとをしているのを
仕方がない。嫌な予感がするが話を聴いてみよう。
「私はニルバナと申します。
妖精界から助けを求めにこのエルモンテスに伺いました。
妖精界では今、龍が大暴れしていて妖精達の住処が追われています。
どうか、龍と話し合いをするための仲介役になって頂けませんでしょうか?」
子供にしては達者な言葉遣いで事情を説明する妖精さん。
「まぁ.....」
と、両手を口にあて同情を示す母さん。
「ここで話もなんだから、そこで話をしましょう。
あ、ちなみに僕は野田周と申します。」
と、僕はニルバナさんを部屋中央の机と椅子へと誘う。話しぶりが大人と同等だったので、こちらも敬語を使うことにした。
ああ、野田周は
座って腕を組み苦悩していると.....ニルバナさんが口を開いた。
「実はもっと大都市であるカルバサレムにまで助けを求めにいく予定だったのですが、ひとまず、カルバサレムより妖精界に近いエルモンテスに立ち寄り、龍と対等の力を持つ存在はいないかと探すことにしたんです。
その矢先に、カツマラアが現れ、それをメグルさんが圧倒的な力で捻じ伏せるのを拝見しました。」
小さい手を目の前に組み懇願するように話す。
「僕はまだアースからこの世界に来たばかりでよく分からないのですが、龍とは狂暴なものなんですか?
暴れているには何か理由があったりはしませんか?」
引き受けるにはもう少し情報が欲しい。
「あら、そうなんですね!アースから来たばかりであのような力をお持ちとは、すごいです!!
昔から妖精と龍は仲良しで、共にアースや別の仮相界の自然現象を担当してます。
ですから、妖精を襲うなんて考えもしないことでした。
理由はまだ分かっていません。。。」
「そうそう。この世界の妖精さんは仮相界に影響を与える力を与えられていて、アースで植物が育つのを手伝ったり、昆虫や動物の成長や健康を管理したり、色々なことをしてるんだって。
龍についてもアースでの地、風、雲、雨、雪、雷、とかの自然現象を管理しているみたいっ。」
母さんが髪をかき上げながらドヤ顔で知識を披露している。
そこの本棚に並ぶ本の知識だろうか、お調子者め。
「はい!その通りです。しかし、ここ半年ぐらい、龍が暴れ狂っている事でアースの環境にも異変が出ているかもしれません。。。。」
しょんぼりした様子で顔を伏せるニルバナさん。何かキャラっぽくて可愛い。
「確かに、ファントムウイルス以外にもアースでは天候がずっと雨だったり、暴風が1日中吹くのが続いていたり、何かおかしかったな。」
老人ホームで入居者達と窓の外を眺めながら、風が異常に強い日が続きますねー、風神様が怒ってるんでしょうかね?と言っていたのが思い出される。当たらずとも遠からず。
それにしても、ニルバナさんも龍が暴れている理由が分からないのなら、これ以上、話を聴いていても仕方がないな。
しかも、
「分かりました。お役に立てるか分かりませんが、ぜひ、妖精界へと同行させてください」
「本当ですかっ!!!」
妖精さんの目が一気に輝く。
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