おさないゆめ

子どもの頃、私の夢という題で作文を課せられたあたしは当時仲の良かった友だち二人と一緒に暮らすのが夢だと書いた。

春も、夏も、秋も、冬も、好きなことをして暮らすんだと意気込んだ文章の締めくくりは、「だけど家の電話、苗字がみんな違うから困るな」だった。

大人たちはこれを読んでくだらない、甘えた夢だと嘲笑った。

「じゃあ、どんな夢なら見ていいの」

訊ねて返ってきた言葉は「公務員」。つまんねー大人、とあたしは半眼になった。


あれから十年、あたしは大人の言う通りに公務員試験を受験した。馬鹿みたいな合格率は天文学的数字。会場には年齢幅いっぱいの男や女たちで溢れ、その異様な空気に中てられたあたしは二日目の試験をエスケープして年上の彼氏と遊び回った。


そして更に十年。何の因果かまた公務員試験に臨んでいる私が居た。

非常勤にも関わらず、群がる人の数はあの頃と変わらない印象だった。

成れなくても構わないと、また、気が挫けた。


二十年前私の書いた作文を最近よく思い出す。

同性と穏やかに暮らしたいという夢は、もしかしたら今もそうかもしれない。

男との暮らしはいつだって刹那的だった。

心をかき乱されることが、何より苦痛になっていた。

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