六話
そしてとある朝。雪も落ち着いてきた初春のこと。下山できる目処がついた。本当は二人で下山しようとしたのだが、美冬は準備をしたいと。心配する秋人だが
「もう5年もこの雪山にいるのよ、体力も私あるってわかったじゃない、重いものだって持てるし山道もわかっている。明後日には降りるわ」
という美冬の言葉を信じた。生活していく上で、五年前よりもたくましく家のことをする彼女を見ていた。
男の言う通り彼女の好みは変わり、食べ物や生活の違いなのか体臭も少し変わっていただけでなくて、丸みがあり肉付きが良かった体型も筋肉質になっていたのを感じる秋人。
五年前の美冬はもう別人のようだったが、互いに交わるたびに少しずつ少しずつ取り戻そうと互いに歩み寄っていった。
しかし何か超えられないなにかがある、そう二人は感じていたのだがそれを言えず今日まで過ごしてきた。
「気をつけて、秋人さん」
「ああ、下に降りたら連絡するよ。愛してる、美冬」
「私もよ」
二人は熱く抱擁した。
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