五話

 暖炉の前で何度も何度も懐かしむかのように昔の形を思い出しながら愛を交わす。

 外は猛吹雪になった。こんな吹雪の中、秋人は帰っていたら遭難どころではなかった。


「美冬、美しい……本当に美しい。あの頃の美冬、そのものだ」

「そんなことはないわ。私は……私は……」

 震える美冬を強く抱きしめる。

「大丈夫だよ。美冬……、僕がいる。そうだ、美冬も一緒に来るといい。来週の日曜日にはこの街を出る」

「……来週の日曜日……下山できるかしら」

「止むのだろうか、どんどん酷くなる。この山の雪の事は君が一番知っている」

 美冬は首を横に振る。

「今は……あなたとのことだけを考えたいです。しばらくずっとそばにいて欲しい」

「美冬っ! 」

「秋人さんっ」


 二人はまた深く深く抱きしめ合う。外は雪が止まない。ますます強くなる。


 違うのはこの山の主がこの家にはいない。激しい猛吹雪の中、外に放り出された。秋人による撲殺だった。

 その男の返り血を浴びた秋人は引きずって男を外にゴミのように投げ捨て再び家に戻りシャワーを浴びて裸のまま美冬の前に現れ、彼女を愛した。美冬は一部始終を見ていた、ショックで動けなかったが5年ぶりの秋人の身体の体温に雪のように溶け、愛を受け入れた。


 雪はさらに強くなり、しばらくはもう出られそうにない。そのためにも食料の備蓄もあり、当面二人で過ごせる。男の代わりに秋人がいる。男の方が食欲は優っているので食料はとても十分にあった。

 二人は共にしばらく生活をし、愛を何度も交わした。

 男が毎日続けていたブログは更新を止めぬよう美冬が続ける。

「五年の時を埋めよう、本当だったら今頃結婚して子供もいただろう」

「そうね。でも今子供はいないの。もしかしたら子供いなくて二人きりかもしれないわよ」

「……二人きりでもいいじゃないか。君といられる、それだけでいい」

 と、二人は新婚夫婦のようであった。何度も何度も、混じり合い、同じ時を過ごすことがどれだけ幸せなことか。それを奪った男と親族たちを恨んでも仕方ない。


 ちなみに秋人は家族にこの冬はこの山で、美冬の家で暮らすと伝えた。

 当初の日程とは大幅にずれたがフリーでの仕事のため融通が効いたようだ。その分お金は入らないがお金では買えない大切な人との時間な方が大事だ、秋人はそう感じたのだ。


 今までに経験のない冬の山。山からの景色、自然との触れ合い、それも彼にとってもとてつもない宝物になった。その魅力に取り憑かれ目を輝かせる秋人を美冬は微笑ましく見ていた。しかしふと思い出すのは男を秋人が殺したこと、そして家のそばに埋めたこと。

 何度も何度も夢に穴から男が這いつくばって出てくる夢を美冬は見ていた。

 その度に秋人に抱きしめられ、泣きながら寝た日も何度もあった。

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