第7話 幼稚園時代の写真と手先が不器用

真一から借りた幼稚園時代の写真を、村田は加藤、滝川の3人で見ていた。


加藤「ゆうちゃん、どこに写ってるの?」

村田「堀川くんかゆうちゃんを見つけたら、近くにあとの1人がいるはず…って堀川くんが言ってた」

滝川「遠足の集合写真、これ、左から3人目の座っているのが堀川くんで、となりがゆうちゃんじゃない?」

村田「あ、ホンマや。ゆうちゃんも堀川くんもかわいいなぁ」

加藤「かわいいなぁ」

滝川「かわいい」

村田「この集合写真は、ゆうちゃん一番上段にいるなぁ。顔、今と変わらんなぁ」

滝川「あ、となりの男の子は堀川くんや」

村田「ホンマや」

加藤「なんか、どの写真も2人は一緒やなぁ」

滝川「ホンマやなぁ。2人はやっぱりめっちゃ仲が良いんやなぁ…」

村田「この写真は演劇会の時の写真っぽいなぁ。ゆうちゃん、めっちゃかわいいなぁ。堀川くんが言うてた通り、今と変わらんなぁ。ゆうちゃんの後ろが堀川くんやなぁ」

加藤「2人ともかわいいし、めっちゃ仲良いなぁ」

村田「2人が今でも変わらず仲良いのは、幼稚園で信頼関係ができてるからなんやろなぁ。それも小学校・中学校は離れ離れやのに、9年ぶりに会っても今でも一緒って、2人の絆は私らではわからん程、強いんやろなぁ」


その頃、真一は実習で工具箱を作っていた。そう、真一が一番苦手としている『ものづくり』だ。真一は藤岡と同じ班で工具箱を作っていた。ステンレスの板を工具箱の入れ物部分にするために、ステンレス板を折り曲げる機械で折り曲げ、高校のマークを蓋の部分に金型を押し当てる。そして、取っ手部分を溶接し、蓋と入れ物を合わせる留め具を溶接する。最後に工具箱を塗装する。

しかし、真一は苦労していた。『手先が不器用』を高校で初めてここで披露。真一は藤岡に突っ込まれる。


藤岡「お前、塗装ようせん(やらない)のか?」

真一「手先が不器用なんやな」

藤岡「手先が不器用って、あんた、ここは工業高校やで。ものづくりする高校やで。何しに来たん?(笑)」

真一「えーっと、なんとなく入試に受かって入ったら、『ものづくり』せんなん事がわかって、どうしようかなぁって思ってたら、挙げ句の果てに幼なじみに再会したってとこかな…」


真一のわざと?ボケた返事に藤岡は大爆笑。結局、真一の工具箱の塗装は藤岡がやった。


実習が終わり、真一たち男連中が放課後話していた。


藤岡「なぁみんな聞いてくれるか」

坂本「何?」

藤岡「あのなぁ、この堀川真一って人はなぁ、工業高校になんとなく入試受けて合格して入学したんやけど、『ものづくり』の高校やのに、この人『手先が不器用』であることが判明したんや。『何しに来たんや?』っていう話や」

坂本「手先が不器用?」

佐野山「アホや…(笑)」

寺岡「おいおいおい、それ致命的やんか(笑)」

藤岡「そう、致命的なんやって❗」

浅田「あんた、おもろいなぁ(笑)」

真一「手先が不器用で何が悪い?」

藤岡「この人(堀川)の工具箱の塗装、オレが塗ったんや」

坂本「(笑)何しに実習してんねん❗」

真一「いやぁ、まさかこんなことになるとは夢にも思ってへんかった」

高山「いや、そんな問題か?」

藤岡「笑うやろ? 強者やで」

真一「あのな、オレはなぁ、手先は不器用なんや。器用なことはせえへん(しない)ことにしてるんや」


男たちは真一の不器用さに感心していた。


一方、村田たちは…


村田「堀川くんの言った通りやったなぁ」

加藤「そうやったなぁ」

滝川「2人ともかわいかったなぁ」

村田「2人ともめっちゃ仲よかったんやろなぁ」

滝川「こんな幼なじみって、ええなぁ」

優香「何言うてんの?」

村田「あ、噂をすればゆうちゃん」

優香「なんや、私の知らん所で人の過去を見てるんか?」

滝川「めっちゃかわいいやん」

村田「堀川くんとめっちゃ仲よかったんやなぁ(笑)」

加藤「写真、だいたい2人一緒に写ってるなぁ」

優香「たまたまやって」

村田「けど仲良いのは、いいことやん。今でも変わらず仲良しなのは、それだけ2人の絆が強いってことやんか」

優香「そうなんかなぁ…。深く考えたことないし。それに、普段から変わったことないから、当たり前の日常やと思ってるだけやで」

村田「私らなぁ、ゆうちゃんと堀川くんみてたら、将来絶対一緒になった方が良いと思うで。こんな男の子と一緒にならな、こんな人なかなかいないよ」

優香「また勝手に妄想してる」

加藤「え、ゆうちゃん将来堀川くんのお嫁さんになるの?」

優香「ならへんよ。またひっちゃんの天然ボケがはじまった(笑)」


4人は図書館に移動し、真一以外の男連中が集まっていた。


村田「何か話盛り上がってるなぁ」

坂本「堀川のヤツ、手先が不器用やっていう話してたんや」

滝川「手先が不器用?」

藤岡「アイツ、実習で工具箱作るとき塗装をようせん(できない)と言うてオレがアイツの工具箱塗装したんや」

寺岡「それで、藤岡が『ものづくりの高校やのに手先が不器用やのに何で来たんや?』って聞いたら『まさかこんなことするとは思わんかった』って返事来て、笑うしかなかったって言う話」

優香「あー…」

村田「どうしたん? 何かあった?」

優香「堀川くん、昔から手先が不器用でなぁ…。ここで披露か…」

村田・白木・藤岡「何それ?」

優香「幼稚園の時も、工作の時間があったんやけど、手つかずでずっと止まってたから、聞いたら、不器用やからできんって…。仕方なく私が手伝った…というか、私が堀川くんの分をやったんや」


一同、爆笑やった。


藤岡「それなら、ナンボ皆が言うても仕方ない」

白木「そうやな。幼なじみには敵わないねぇ…(笑)」

優香「堀川くんはどこ行ったん?」

坂本「あ、保健室へ行った。先生に呼び出されて…」

優香「そう。私見てくる」


優香が図書館を出た後、村田はみんなに話した。


村田「あのな、今日堀川くんから借りたんやけど、『ゆうちゃんの幼稚園の時の写真が見たい』って言うて、ゆうちゃんが拒否してたけど、堀川くんがゆうちゃんを説得して了解もらった上で見せてくれたんや」

白木「それはぜひ見たいなぁ」

坂本「見た?」

村田「見たよ。2人ともかわいかったで」

白木「今写真あるの?」

村田「あるよ。見る?」

白木「見る。幼稚園の時アイツらどんなんやったんやろ…」


男連中は写真を見る。


坂本「あ、2人一緒に写ってる」

藤岡「どれどれ?」

坂本「これアイツ(堀川)やろ?」

藤岡「あ、ホンマや」

坂本「で、アイツのとなりが加島さんやないか?」

寺岡「ホンマや。こっちの遠足の時の写真、これ2人やろ?」

白木「ホンマや。2人ともそのままやなぁ。て言うか、どの写真も2人はとなり同士やん。めっちゃ仲がええわけや(笑)」

藤岡「演劇会の写真なんか、2人とも嬉しそうやんか」

村田「めっちゃかわいいし仲良いやろ?」

白木「仲が良すぎる」


男連中も、写真を見てビックリしていた。


浅田「アイツらこれだけ仲良いんなら、付き合ったら良いのに…」

白木「よくドラマとかであるやんか。『大きくなったらボクのお嫁さんになってほしい』とか『私、大きくなったらキミのお嫁さんになりたい』とか…。あの2人にはそんなんなかったんやろか?」


全員が納得しながら妄想していた。


一方保健室では、真一が保健室の大川先生に呼び出され、プリントの作成の手伝いをしていた。2人がせっせと作業していると、図書館から優香がやって来て、


優香「私も手伝います」


と言って2人を手伝った。


黙々と作業を行い、何とか格好がついた。


大川先生「助かったわ。2人ともありがとう」

真一「いえいえ」

優香「お疲れ様でした」

大川先生「あ、そういえば、あんたら噂の『幼なじみ』やんか!」

真一「何ですか、その『噂の』って…」

優香「どこまで広まってるんですか?」

大川先生「先生方もあんたらの話聞いてたの。けどええなぁ、幼稚園から仲良しって、なかなか経験せん(しない)よ」

真一「そうかなぁ」

優香「うーん」

真一「こんなもんやろ?」

優香「…そうやなぁ」

大川先生「そのうち、あんたらもわかってくるわ」

真一「何がですか?」

大川先生「まぁまぁ…」


真一と優香は首をかしげながら保健室を後にした。

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