第6話 真一と優香 本格始動

ようやく再会を果たした真一と優香。

翌日の朝、優香は梅沢駅から電車に乗ってくる女友達と、真一は白木と一緒に登校していた。


白木「おはよう」

優香「おはよう」

真一「おはよう」

優香「あ、おはよう~」


優香はちょっとテンションが上がっていた。


白木「あれ堀川、加島と再会できたんか?」

真一「昨日ようやく」

白木「あ、そう。加島、ちょっとテンション上がってたなぁ」

真一「そうかぁ?」

白木「あれはお前じゃないとアカンような感じやな」

真一「なんのこっちゃ」

白木「けどええなぁ、幼なじみは」

真一「どないしたん?」

白木「義務教育の9年空白あるのに、お前ら幼稚園からずーっと一緒にいる感じやな」

真一「そうかぁ?」

白木「お前ら仲がええなぁ」

真一「仲は悪くないで。別にオレと優香さんやなくても、あんたでも幼なじみいるやろ?」

白木「あんなに仲が良い幼なじみは中々おらんで」

真一「そうなんかなぁ?」


一方、優香も女友達3人と登校。梅沢駅から乗ってくる村田久美(くーちゃん)、加藤久子(ひっちゃん)、そして滝川ちえみ(ちーちゃん)の3人だ。優香は友達から(ゆうちゃん)と呼ばれている。

優香は3人に話した。


優香「あのな、昨日帰りの電車で3人が電車降りた後、3組の堀川くんに声をかけられたんや」

村田「あの、幼なじみの男の子?」

優香「うん。この間、会ったのに声かけてくれんかったのは、私が誰やったか記憶が飛んでて名前が思い出せんかったらしい。だから声をかけられんかったって」

村田「そうやったんや」

滝川「ゆうちゃん、彼とは話せた?」

優香「話したよ。昔と全然変わってなかった」

加藤「でも良かったなぁ、幼なじみと再会できて」

村田「運命の出会いかも…」

優香「ちょっと、そんなんちゃうって。ただの幼なじみやで」

村田「でも幼なじみでも将来結婚した人も中にはいるらしいよ」

加藤「え? ゆうちゃん堀川くんと結婚するん?」

優香「しないって」

滝川「ひっちゃん、例え話!」

村田「ひっちゃんの天然ボケが出た」


4人は大笑いした。

そう、加藤は天然ボケで有名なのだ。


放課後、真一はパソコン部に体験入部して話を聞いていたので帰りがいつもより遅くなった。

優香達も実習があって作業着から制服に着替えるため、帰りがいつもより遅くなった。

真一はパソコン部の部長・松田と一緒に高校駅に向かう。

電車がホームに到着し真一と松田は電車に乗る。その後、優香達4人が乗ってきた。

優香たちは走って電車に乗ったので息切れしていた。松田は、それを見て話す。


松田「大変やったな」

村田「はい。疲れました…」

滝川「はぁ、しんどい」

加藤「疲れたぁ」

優香「ふぅ~」

真一「貧血は大丈夫か?」

優香「大丈夫(苦笑)」

松田「え? 彼女達、君知ってるの?」

真一「優香ちゃん、いや加島さんを…」

松田「そうなん? 下の名前で呼ぶって相当仲良いんかなぁ?」

優香「幼稚園の時、一緒やったんです」

加藤「え? そうなんや。幼なじみかぁ…」

松田「世の中せまいなぁ…」


松田先輩は、途中駅で下車した。真一と優香達の5人が電車にいる。松田先輩が下車した後、梅沢駅で下車する3人が既に真一と優香が幼なじみであることは知っていたが、松田先輩に話を合わせるために、あえて初めて聞いた感じで接していたのだそうだ。加藤については『天然ボケ』だったかもしれない。


村田「え、じゃあ堀川くんとゆうちゃんは幼なじみってこと?」

真一「そういうことになるんかな…」

優香「小学校と中学校は違うけどね」

真一「昔と全然変わってないよ、優香さん」

滝川「そうなんや」

加藤「え? ゆうちゃん、背の高さも今と変わらんの?」

優香「違う違う、背の高さは変わってるよ(笑)」

村田「また、ひっちゃんの天然ボケが…」


一同爆笑した。


村田「ゆうちゃんが幼稚園の時はどんな子やったんですか?」

真一「おとなしいかわいい子。手先は器用やったなぁ。満面の笑みを浮かべるときは印象に残るなぁ…。顔は全然昔のまま。お年頃の女子高生ですな」

村田「どんな感じの子か、写真とか無いの?」

滝川・加藤「見たいなぁ」

優香「見なくていいの」

村田「見たいでー❗ かわいいゆうちゃんの子供の時見てみたい。堀川くん、写真ない?」

優香「堀川くん、探さなくていいから❗」

真一「うーん、どこに写真があるかなぁ…?」

優香「ホンマに探さなくていいから❗」

村田「探してきて、 堀川くん❗」

真一「え、え、え? どうしたらええの?」

村田・加藤・滝川「探してきて❗」

優香「探さなくていいから❗ 絶対探さないで❗」

真一「困ったなぁ…。加島さん、今のままなんやけどなぁ」


そんなやりとりしていると電車は梅沢駅に到着し、村田たちは下車した。3人が下車したら、すかさず優香は真一に言った。


優香「昔の写真、絶対持ってこないでよ❗」

真一「えらいムキになってたなぁ(笑) どないしたん?」

優香「恥ずかしいもん」

真一「そんなん言うたら、言うとくけど、オレも一緒に写ってるんやで。優香ちゃんと立場は一緒や。オレら当人は知ってても、あの3人は、優香ちゃんのこと知りたいんじゃないの? オレも恥ずかしいけど、ここは村田さん達の顔をたててあげるのも、友達なんとちゃうか?」

優香「えー…嫌や…」

真一「…うーん…、よし、わかった。今度何か優香ちゃんに埋め合わせするから、村田さん達の顔をたててやれんか?」

優香「うーん…じゃあ、しんちゃんが埋め合わせしてくれるんなら、嫌やけど顔をたてよか…」

真一「よっしゃ、それで決まり。ところで、優香ちゃんにオレは何して埋め合わせしたらいい?」

優香「そうやなぁ…考えとくわ」

真一「よろしく❗」


と、真一の説得に応じた優香であった。

真一は帰宅後、早速物置の奥にしまってあると思われる幼稚園時代の写真を探したが、中々見つからない。


翌日、真一は白木に加え浅田、坂本、佐野山と一緒に登校していた。


白木「お前ら知ってるか? 堀川、この高校に幼なじみの女の子が登校してるの知ってるか?」

浅田「そうなんや。隅におけないねえ(笑)」

真一「そんなんちゃうわ。ただの幼なじみや。白木お前の言い方が悪い」

白木「まあまあ…。それでな、幼稚園以来で再会したわけや。こんな偶然身近にあるか?」

坂本「なかなかないなぁ。ドラマとかならわかるが、現実的に身近には聞かないねぇ」

佐野山「う~ん、一目会ったその日から~恋の花咲くこともある…っていうやん(笑)」

浅田「佐野山、お前の言い方やらしいわ(笑) お前完全に堀川をバカにしてるぞ❗(笑)」

真一「なんやねん、どいつもこいつもアホにしやがって❗(笑)」


友達に冷やかされながら登校する真一だった。


昼休み、真一は専門棟職員室へ工業系専門の実習のレポートを中川先生に提出すべく、専門棟へ向かった。真一達が通う工業高校は普通科系で高校ではメインの大職員室と工業系の専門棟職員室がある。工業系では機械系学科、生産マシン学科、電気学科、電子回路学科、パソコン学科の5学科に別れている。真一、浅田たちは電子学科、白木は電子回路学科、優香たちはパソコン学科に所属している。実習は週1回ほぼ終日ある。実習ではレポート提出が必ずある。実習後1週間以内に提出しないと単位が取れないことになっている。真一は提出期限はまだ大丈夫たが、早めに提出するのだ。この日は5月といえども真夏日の気温。暑い。真一はカバンの収納面を考慮してうちわではなく扇子を持ってきていた。真一は扇子で扇ぎながら専門棟職員室へ。


真一「失礼します。中川先生、レポート提出します」

中川「うん。OK」

真一「ありがとうございます」


真一は扇子で少し扇いだ。すると反対側のパソコン学科の部署の鈴木先生が真一に話しかける。


鈴木「なんや、暑いんか?」

真一「暑いですよ。先生やったらこの暑さなら生ビールってとこちゃいますか?」

鈴木「ええなぁ、生ビール❗ 今夜はビールやな」

真一「ナンボでも飲んでください(笑)」

鈴木「そんなことより、扇子て、渋いなぁ」

真一「カバンの収納面を考えた結果です」

鈴木「よう考えたなぁ」


すると、優香が専門棟職員室に入ってきた。


優香「失礼します。先生、レポート提出します」

鈴木「おう。OK」

真一「なんや、提出やったんか?」

優香「うん」

鈴木「なんや、知り合いか? それとも…?」

優香「幼稚園の時の同級生です」

鈴木「幼なじみかぁ。お前の幼なじみ、扇子で扇ぎながらレポート提出しとったぞ」

真一「暑いですもん。そらぁ先生みたいに冷房ガンガンかかってる所とは違いまっせ~(笑)」

鈴木「あのなぁ…」

真一「帰ってビール飲んでください」

鈴木「わかった。ありがとう❗」


真一と優香は職員室を後にした。


真一「暑いでノド渇かへんか?」

優香「渇いた」

真一「食堂で飲み物買おうか。奢るわ」

優香「ホンマ? ありがとう」


食堂で優香はバナナオレを、真一はコーヒー牛乳を買って飲んだ。


優香「ごちそうさま」

真一「いいえ、どういたしまして」

優香「あ、幼稚園の時の写真見つかったん?」

真一「見つかった。でも持ってくるん忘れた(笑)」

優香「何してんの?」

真一「明日、写真を優香ちゃんに渡すから、村田さんらに見せてあげな」

優香「しんちゃんが、くーちゃんらに直接渡してよ」

真一「なんや、恥ずかしいからか?」

優香「私は見せたくないけど、しんちゃんの条件飲んだから、しんちゃんから渡してよ」

真一「わかった。それで、優香ちゃんへの『埋め合わせ』は決まったか?」

優香「バナナオレでは安すぎるから、何か考えてよ」

真一「うーん…」

優香「あ、ケーキ食べたいなぁ」

真一「ええよ」

優香「やったね。今度の土曜日とかでもいい?」

真一「ええよ」

優香「よし決まり」


というわけで、埋め合わせは『ケーキ』に決まった。


翌日、真一は忘れることなく優香との幼稚園時代の写真を持ってきた。それを村田に渡した。


村田「ありがとう。楽しみやわ❗」

真一「どうぞ」

村田「ところでゆうちゃんはどこに写ってるかわかる?」

真一「そうやなぁ、オレか優香さんを見つけたら、その近くにもう1人(優香さんか真一)がいるはずや。席はとなり同士やったし、男女それぞれ背の低い順にならんだらとなりは優香さんやったし、遠足の集合写真とか弁当食べるときもとなりには優香さんやったなぁ…。まぁ確認してみて」

村田「わかった。楽しみやわ」








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