2話

  海璃は自分がこれから通う学舎を見上げる。これからどんな学園生活が待っているのだろうと胸を高鳴らせながら


「ん〜……でも、校舎は意外に普通?」


VRMMOを授業に取り入れてる学校というから、もう少し科学的な校舎を想像していた海璃だったが、普通の学校とそこまで変わらぬ校舎に首を横に傾げる。


「いや、校舎の見た目が普通なのは入試や学校見学で知ってるでしょう」


いつの間にか、海璃の隣に黒髪の肩程まで伸ばした少女が、呆れたように溜息をついた。

  彼女の名前は森園もりぞの りん。海璃とは小学生からの親友で、この「VRMMO学園」に海璃を誘った張本人でもある。


「あっ!凛!おはよう!」


「おはよう。海璃。ようやくね……ようやく私がこの「VRMMO学園」で天下をとる時代がやって来たのよ……!」


凛は拳を握りしめそれを振り上げてそう宣言する。その瞳はメラメラと燃え上がり、海璃は乾いた笑みを浮かべる。

  凛はゲーマーである。この「VRMMO学園」でも実装されているNLWのアカウントも所持している。海璃は凛に勧められていくつかのゲームはプレイした事あるが、VRMMOのプレイは未経験で、VRを体感した経験もない。故に、海璃はNLWのアカウントを所持していない。


「う〜ん……やっぱり私場違いな気がしてきたよ……」


「VRMMO学園」の入学者のほとんどがNLWのアカウントを所持している。「VRMMO学園」というだけあって、入学者のほとんどがゲーマーばかりで、入学前からNLWをプレイして、自身のプレイスタイルを確立させてる者ばかりである。そんな中で、VRMMO初心者の海璃が場違いに感じてしまうのは仕方ないだろう。


「問題ないでしょ。元々は子供達に正しくネット環境に付き合ってもらう為に設立された学園だし、海璃みたいにVRMMOを初プレイの人も丁寧に指導してくるはずよ」


  元々は、ネット環境の上手い付き合い方を学ぶ為の学校なので、最初は海璃のような初心者が半数だった。が、「VRMMO学園」が成果を出した事がきっかけで、NLWの利用者が増え、まだ少ないが小中学生にもVRMMO取り入れた授業を行なっている事もあり、海璃のような初心者新入生は少なくなってしまったのである。


「本当は私も海璃に付き合って自分のアカウント初期化して一緒に最初からプレイしようかとも思ったんだけど……やっぱりあそこまで鍛えた後だと、色々手放せなくなって……本当ごめんッ!!」


凛は手を合わせて謝罪する。海璃は「気にしてないから大丈夫だよ」と言って凛を宥める。


「あぁ!いました……!七瀬 海璃さんですよね!?」


そんな2人の元に、茶色のゆるふわロングヘアーの眼鏡をかけた女性が駆け寄り、海璃に声をかけてきた。見た目が20代ぐらいの感じから察するに、海璃はこの女性がこの学園の教師だと推測し、その推測は当たっていた。


「はぁ……!?はぁ……!?すみません……私、この「VRMMO学園」の教師を務めています。荻蘇おぎそ みやこと言います。海璃さんのクラス担任でもあるのでよろしくお願いしますね」


若干息を切らせてやって来た女性、京が自分のクラス担任である事を聞かされて驚愕する海璃。


「えっ……クラス担任とかって……入学式で発表されるものじゃないんですか……?」


  クラスは掲示板に書かれていて、入学式でクラス担任を発表するものと海璃は思っていた。やはり、そこは特殊な「VRMMO学園」故の違いだろうかと思ったのだが


「普通はそうなんですが、七瀬さんはVRMMO初心者だと伺ってますので、色々と説明する必要があるので……」


それを聞いて海璃はなるほどと思った。確かに自分はVRMMOは初心者な上、NLWは未プレイだからアカウントも所持していない。故に、解説をしてくれる教師は必要だからこのような措置がとられているのだろう。


「あの……それじゃあ……他の初心者の方はいないんですか?」


ふと、海璃は気になってそう京に尋ねた。いくらVRMMOを盛んでも、自分と同じVRMMO初体験者か、もしくはNLWを初プレイする者は1人か2人ぐらいはいるだろうと思ったからである。しかし、京は苦笑を浮かべ


「その……すごく言いづらいのですが……今年の新入生で、VRMMO初心者も、NLWのアカウントを所持していなくて未プレイな人も、海璃さんだけなんです」


「へっ……!?」


海璃はあまりの衝撃の事実に、海璃は目を見開いて驚く。今年の新入生約150名の中でまるっきり初心者なのは海璃ただ1人という事実に。

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