第5話
クモ姫は無条件でこばらがすいたら糸にひっかかったものを食べる。
「おや、しまった。糸にまきつかれて動けないよ!」
「ぱくっ」
「あん」
今日はハエを食べた。
「おや、こいつはしまった。クモの糸じゃないか。食べられちまうべさ!」
「ぱくっ」
「あん」
今日はトンボを食べた。
「アーマイゼ」
今夜こそ、アーマイゼをいただこう。
「見てください。クモ姫様!」
きらきらと目をかがやかせる。
「わたし、字がちょっと読めるようになったんです!」
アーマイゼがクモ姫を寝かせ、その横で本を読む。
「むかしむかし、あるところに、灰被り姫がおりました」
「……」
ぱくっと食べてしまえばいい。こんな小さな奴、かんたんだ。性欲処理の道具として使い、さっさと離婚すればいい。かんたんなことだ。
「灰被り姫は、いつも家族からいじめられてました」
でも、今夜はこの心地のいい声をきいて寝るのも、悪くないかもしれない。
「こうして、王子様といつまでも幸せに暮らしました。めでたしめでたし」
すやすや眠るクモ姫を見て、アーマイゼがにこりと微笑んだ。
「おやすみなさい。姫様」
クモ姫の額に、優しくキスをした。そして朝になれば、クモ姫は腕の中で眠るアーマイゼの寝顔を見る。
こんな日々が、続いているほうがおかしいのだ。
(こうなったら強硬手段だ)
クモ姫がにやりとした。
(性欲処理もできない妻などいらん。アーマイゼにこの城から出て行ってもらうために、嫌がらせをしてやろう)
アーマイゼが、もうこんな城いやよ! 実家に帰ります! となれば離婚は成立。クモ姫は自由になれるし、アーマイゼは少しお金持ちになった実家に帰れる。その先も、食べるものには不自由させない。大臣たちは結婚が失敗したと思って、しばらくは大人しくするだろう。というわけで、
(ふん)
クモ姫が見えない糸をアーマイゼの足にからめて、ぐいとひっぱった。
「ひゃっ!」
アーマイゼが派手に転んだ。痛そうな音がきこえて、転んだアーマイゼに気づいたメイド達がおどろいた表情でかけよってくる。
「大丈夫ですか!? アーマイゼ様!」
「あははは……。転んじゃいました……」
膝からは血が出ている。クモ姫は知らぬふりをして奥の廊下から歩いてきた。
「はっ、クモ姫様だわ!」
なんとタイミングの悪いこと、と思いながら、メイド達が慌てて後ろに下がり、頭を下げた。アーマイゼは座りこんだまま顔を上げ、クモ姫を見上げた。そして、そのクモ姫は足を止め、アーマイゼを冷たい目で見下ろした。
「どうした」
「転んでしまって……」
アーマイゼの目がうるんだ。
「ちょっと、痛いかなって……」
(あ)
アーマイゼの両方の眉が下がり、なんともあわれなそうな顔をしたと思えば、アーマイゼの目から涙があふれ、ぼろぼろと頬をつたっていった。アーマイゼは自分が落とす涙に気づき、クモ姫から顔をそらした。
「ご、ごめんなさい……」
「……」
黙るクモ姫とすすり泣くアーマイゼを見て、メイド達が固唾を飲んだ。青い顔で、仲間たちと目を合わせる。
「クモ姫様が睨んでるわ」
「なんてこと。きっと床に血がついたから怒ってるんだわ」
「ああ、おそろしい……!」
張りつめるような冷たい空気の中、アーマイゼの大粒の涙が床にしたたり、水たまりのようになっていくのを見て、おもむろにクモ姫がひざまずいた。そして、おそろしい目つきでアーマイゼを見つめた後、きいてみた。
「……。……。……。……、……そ……んなに、痛かったのか?」
「……はい……」
「おいで」
クモ姫が両手を広げ、鼻をすするアーマイゼを抱き抱えた。膝からは血が出ていて、とても痛そうだ。クモ姫が振り返り、呆然としているメイドたちに声を荒らげた。
「おい、何をぼさっとしている。医者を呼べ!」
「「は、はい!」」
「アーマイゼ、大丈夫だからな」
やさしく言いながらアーマイゼを寝室に運び、クモ姫がベッドに座った。そして、抱えるアーマイゼを自分の膝の上に乗せ、痛そうな膝に軽く手を押しあてた。
「まだ痛いか?」
「だ、大丈夫です……」
「打ち所が悪かったのだろう」
クモ姫が涙目のアーマイゼの背中をやさしくなで始めた。
「大丈夫。すぐ治る」
「すみません……」
「もう泣くな。わたくしがいる」
「はい……」
「あの……」
部屋に入ってきた医者をクモ姫がにらんだ。
「空気よめ」
「はい……」
しばしアーマイゼをなぐさめて、よしよしして、頭をなでて、――クモ姫がはっとした。
(わたくしを、何をしている!)
アーマイゼを追い出そうとして嫌がらせをしたのに。
(ふん。アーマイゼに情が移ってきたか。このままではますます危うい。あいつにはさっさとこの城から出て行ってもらわねば)
別日、そんなことを考えていれば、おや、ナイスタイミング。アーマイゼが窓を開けてアイスを食べようとしている。これはチャンスだ。
「楽しみに取っておいたアイス。ふへへへ……」
アーマイゼが目をかがやかせた。
「いただきます!」
スプーンをさした瞬間、クモ姫は糸に絡ませていたカラスをひきはがした。自由になったカラスが窓へと飛びこみ、アイスを丸ごとくちばしのなかにひょいとくわえてしまった。
「あっ」
俺はもう自由だぜ! ひゃっはー! 空気がきもちいいぜ! とでも言っているように、カラスが空高く飛んでいく。それを見ていたメイド達と、アーマイゼが黙りこみ、ゆっくりと目をテーブルへ戻し、お皿を見ると、何も残っていないではないか。当然だ。カラスが持っていってしまったのだから。
(よし、よくやった)
クモ姫が何食わぬ顔でドアの取っ手をひねり、部屋にやってきた。
「「はっ! クモ姫様だわ!」」
部屋にくるなんてめずらしい、と思いながら、メイド達が慌てて後ろに下がり、頭を下げた。アーマイゼは座ったまま顔を上げ、クモ姫を見上げた。そして、そのクモ姫は足を止め、アーマイゼを冷たい目で見下ろした。ぼうぜんとした後、アーマイゼがへにゃりと笑みを浮かべた。
「あ、姫様、今、えへへ。アイスを食べようとしていたら、窓からカラスさんがやってきまして……」
すべてを言う前に、アーマイゼの目がうるんだ。
「アイスを……持っていってしまって……」
とても悲しそうな顔になり、大粒の涙をぼとぼとと落としていく。
「す、すみません……。……ぐすんっ!」
うつむいて泣き始めるアーマイゼをクモ姫が冷ややかな氷のような目つきで見ている様子を見て、メイド達の血の気が下がった。
「クモ姫様がにらんでるわ」
「なんてこと。きっとテーブルが汚れたから怒ってるんだわ」
「アーマイゼ様、大丈夫かしら……!」
「殺されちゃうかもしれない!」
メイド達がまごつきながらハラハラする中、アーマイゼがどんどん涙を流していく。せっかくのドレスが涙で濡れていく。アーマイゼの頬と鼻が赤く染まっていく。ぐすんと鼻をすする。とてつもなく、これ以上ないほど悲しそうに泣く顔を見て、クモ姫が冷たい目つきのまま、身を屈ませた。
「……。……。……。……、……そ……んなに、食べたかったのか?」
「……わたし、は、……生まれて初めて、食べる、アイスだったから……! ……たのしみに、してたのに……!」
「おいで」
アーマイゼがクモ姫の胸に顔を埋めた。可哀想なおえつをあげて、クモ姫の胸の中で泣きじゃくってしまう。
「ふええ……! ぐすん! ぐすん!」
「おい、何をぼうっとしている。早くコックに作りなおすよう言いに行け。今すぐだ!」
「「は、はい!」」
「アーマイゼ、さっきのよりも、うんと甘くておいしいのを作ってもらおう。だから、もう泣くな」
「す、すみません……! ぐすん!」
クモ姫が鼻をすするアーマイゼを抱き抱えた。
「ぐすん! すんっ!」
「部屋に戻ろう。まったく、とんだ世話がかかる奴め」
やさしく言いながらアーマイゼを寝室に運び、クモ姫がベッドに座った。そして、抱えるアーマイゼを自分の膝の上に乗せ、赤子をあやすように体をゆったりと揺らし始めた。
「そのうち、お前の弟妹たちにも大量の甘いアイスを送ろう」
「い、いいんですか……?」
「ああ。だからもう泣くな」
「すみません、わたし、なんと、お礼を申し上げたらいいのか。……ぐすんっ」
「大丈夫。お前にはわたくしがいる。アイス泥棒のカラスなんか、まき殺してやるからな」
「クモ姫様……そこまでは、おやめを……」
「冗談だ。……もう泣くな」
「……はい……」
「……あのー……」
部屋に入ってきたコックをクモ姫がにらんだ。
「空気よめ」
「はい……」
しばしアーマイゼをなぐさめて、よしよしして、頭をなでて、――クモ姫がはっとした。
(またやってしまった!)
嫌がらせをしたいだけなのに。
(この女、まさか、わざと……?)
なんておそろしい女だ。わたくしよりも策士だと言うのか。
(こうなったら)
別日、歩いているアーマイゼのドレスの中に、クモ姫が見えない糸を操り、うまいこと絡めさせた。そして、それをぐいとひっぱる。
(ふん)
そうすれば、アーマイゼのぱんつがぎゅっ! と尻に食いこんだ。
「ひゃっ!」
アーマイゼがおどろいた声をあげ、立ちどまり、辺りを見渡した。誰もいないのと、自分のはずかしい声をきかれてなかったことを確認し、そそくさとトイレにかけこんだ。トイレの中に入ると、いそいそとぱんつを下ろし、上げて、ちょうどいい位置に直す。
「ふう。びっくりした」
トイレから出てきて、アーマイゼが再び廊下を歩き出す。すると、アーマイゼの教育係が向こうから歩いてきて、ばったりと鉢合わせた。
「アーマイゼ様、ごきげんよう」
「こんにちは。先生」
「明日の課題はできておりますか?」
「はい。頑張ってやってます」
そのタイミングを見計らったように、糸が再び、ぐいとひっぱられ、アーマイゼのぱんつがさっきよりも尻に食いこんでしまった。とつぜんのことに、アーマイゼがおどろきの声をあげてしまった。
「ひゃんっ!」
「ん、いかがいたしましたか?」
「あ、あー! や、やってなかった課題を、思い出しましてー!」
アーマイゼが横歩きで教育係の横を通りすぎた。
「すみません、へ、部屋に戻ります!」
「いいですか。課題は速やかに片付けますように」
「はーい!」
足早に廊下を歩き出すと、糸がぐぐっとひっぱられ、アーマイゼの尻の割れ目に、ぱんつがきゅうきゅうと食いこみ、大切なところにこすれてきた。
(あっ、だめっ……)
アーマイゼは感じたことのないくすぐったさを感じ、思わず腰がぴくりと跳ね、このままではまずい予感がして、部屋に急いだ。
(で、でも、足が、動くたびに、ぱんつが、食い込んで……)
「あら、アーマイゼ様」
「っ!」
こういう時に限って、使用人と出会ってしまう。使用人は何も気づいてなく、ただ前から歩いてきたアーマイゼに笑みを浮かべるだけだった。
「ごきげんよう」
「こんにちはー」
見えないところから見ているクモ姫は、いたずらが成功した子供のように、上機嫌でニヤニヤと口をにやけさせ、もっとやってやろうと指を動かした。
「あっ」
アーマイゼが手で口を押さえた。しかし、ぱんつが擦れてくる。きゅうきゅうと、上にひっぱられているように、割れ目に食いこんでくる。ただ、食いこんでくるだけ。それだけ。なのに、なぜだろう。
(あそこが、じんじんしてくる……)
食いこんで、擦れてくる。
「はぁ……ふぅ……」
アーマイゼが震える息を吐くと――何か違和感を感じ、気づいて、はっとした。
(えっ!? ぶ、ブラジャーが、ずれていく……!?)
とつぜん、ブラジャーが上にひっぱられ、胸がぷるんと揺れて、外に出されてしまった感覚。
(な、何が起きて……)
「あ、アーマイゼ様」
「っ、こ、こんにちは」
(ひぅっ!)
ぱんつがきゅっと食いこんで、擦りつけてくる感覚。
(あんっ!)
胸の先端に、何かが擦りつけられている感覚。しかし、アーマイゼはそれが糸だとは気づかない。この糸は、クモ姫にしか見えないのだ。
(はあ、はあ、だめ……、はあ……!)
「また客室をお掃除されましたね? 駄目ですよ。あれはわたしたちの仕事なのですから」
「ご、ごめんなさい……」
(だ、だめ、そんなに、動いちゃ……)
とつぜん、食い込むぱんつが前後に動きだした。
(え!?)
前後に動けば、あそこがじんじんして、熱くなっていく。メイドがきょとんとして、首をかしげた。
「あれ、なんか、アーマイゼ様、お顔赤くないですか?」
「え、そ、そんなことないですよ!」
(やめて、あっ、だめ! 動かないで!)
アーマイゼがこらえきれず、大股でまた歩き出した。
「わたし、課題がありまして、っ、失礼しますっ!」
「あら! それはそれは! 頑張ってくださいな!」
(あっ!)
大股で歩くと、食い込むぱんつがそのポイントに当たってしまう。
(やっ、だめっ……! こんなの、んっ、早く、なんとかしないと……)
この角を曲がれば、寝室にたどり着く。そこでこのドレスの中で起きていることを片付けなければ。
(だから……っ、そんなに、こすれちゃ、だめぇっ……!)
すると、角から、とぼけ顔のクモ姫が歩いてきた。
「ひゃっ!」
急いでいたアーマイゼがクモ姫の胸に顔がぶつかり、後ろに下がった。
「く、クモ姫様、ごめんなさいっ……!」
「ああ、さがしていたんだ。アーマイゼ」
クモ姫がアーマイゼの肩をかかえて、反対方向に歩き出した。
「え、あ、あの」
「一緒におやつでもと思ってな」
「あ、あの、わたし、課題が、あのっ」
「そんなもの後でいい。それとも、わたくしの言うことがきけないのか?」
「あ、そ、そういうわけじゃ……」
クモ姫が指を動かした、糸が動き、食いこむぱんつが、――一番いいところに、食いこんだ。抑えきれず、アーマイゼがはしたない声をあげてしまった。
「あぁっ……!」
そして、アーマイゼがはっと口を押さえた。見上げると、クモ姫が軽蔑した目で自分を見ているように見えた。
「あ、あの……」
アーマイゼがクモ姫を押し退けた。
「ごめんなさい!」
「っ!」
アーマイゼが部屋にかけこんだ。
「アーマイゼ!」
(やった! 成功だ! はずかしめられて、今にも実家に帰りますと言うぞ! ふはははは!!)
よろこびを胸に秘め、クモ姫が部屋まで追いかけてきた。アーマイゼがベッドの中でもぞもぞ下着を直している。
(くっくっくっ……)
「アーマイゼ」
「……ぐすんっ……」
……クモ姫がはっとした。アーマイゼが、シーツに隠れながら、体を震わせて、泣きじゃくっていたのだ。
「ぐすっ、ぐすんっ! ……っ、……っ」
「……」
「み、見ないでください……」
アーマイゼが、とても悲しく、とても可哀想な顔で、シーツの中で丸くなった。
「わたし、もう、ここにはいられません……。どうか、見ないで……」
「……」
さっきまでうれうれとしていたクモ姫。だがしかし、その涙を見れば、どんどん気分がそがれていき、なぜだが、とても不安になってきた。そっとベッドに乗っかり、小さく震える彼女の顔をのぞきこんでみる。
「どうした? アーマイゼ?」
「姫様、ごめんなさい、なんか、よくわかりませんが、わたしの、その、ぱ、ぱんつが、急に食いこんできてしまって……」
アーマイゼの体が完全にぶるぶる震えている。
「ずっと、擦ってくるから、わたし、なんか、へんな気分になって、しまって……」
「……」
「へんな……っ……変な、声が……」
「……」
「は、恥ずかしいです……。姫様の前で、あんな、へんな声を、わたし、わたし……」
アーマイゼが顔を隠し、泣き始めた。
「ぐすっ、ぐすんっ、ふえっ、ぐすっ」
「…… 。……。……あー……」
なんともいえない気分になり、クモ姫が目をおよがせながら聞いてみた。
「……その、……こういうのは、初めてか?」
「こ、こういうの、とは……?」
「その、そこが、こう、刺激されるのは……」
「……刺激って、何をですか……?」
「……」
「……ぐすっ……。わたし、……悪い病気ですか……?」
「おいで」
「っ、クモ姫様……!」
アーマイゼがクモ姫の胸にとびついた。涙がクモ姫の胸にしたたっていく。
「なんか、なんか、ぱんつがっ、くいこんできて……っ、変になってぇ……! それで、わたし……!」
「ん。そうか。こわかったな。でも、それは病気じゃないから、うん。気にするな」
「病気じゃ、ないんですか……?」
「ああ。病気じゃない。そうか。ぱんつが食いこんでしまったのか。それは仕方ないことだ。そのぱんつはもしかしたら呪われているのかもしれない。あたらしいぱんつを用意しよう。な? だから、もう泣くな」
「姫様……」
「大丈夫。お前にはわたくしがいる」
「……はい……」
アーマイゼがクモ姫の胸で微笑んだ。
「ありがとうございます……」
(……もういい。……また今度にしよう……)
嫌がらせをした後は、やさしく背中をなでる。アーマイゼがほっとして、クモ姫を見上げた。見上げたらクモ姫の顔がよく見える。クモ姫も見下ろした。そしたら、自分の胸にしがみつくアーマイゼがいた。
「……」
クモ姫が屈んだ。そうすればアーマイゼの顔ときょりが近くなった。アーマイゼがクモ姫を見つめて、顔が近すぎて、はずかしくなってまぶたを閉じた。クモ姫がもっと近づけば、
唇同士が重なった。
「……」
クモ姫が唇を離した。アーマイゼのまぶたが開かれた。次の瞬間、クモ姫がはっとした。
(こ、……これは、なんだ!?)
アーマイゼがきらきらかがやいて見える。
(何が起きたというのだ!?)
「……クモ姫様……?」
アーマイゼの手が、そっと頬にふれた。
「どうしました……?」
「……何でもない。大丈夫だからそんな顔をするな」
「クモ姫様……、っあ……」
クモ姫がまぶたにキスをすると、アーマイゼの涙が止まった。かわりに、頬を赤くさせて、はにかむ。
「うふふ。……くすぐったいです……」
「……」
「クモ姫様、もう少しだけ、甘えてもいいですか?」
「……仕方のない奴だ」
クモ姫がアーマイゼを大切に抱きしめた。華奢なアーマイゼは、すっぽりと、クモ姫の腕の中におさまってしまう。クモ姫はそれを見て、ため息を吐いた。
(今度、離婚は、また今度でいい……)
そして、クモ姫の胸の中では、意思とは別に、心臓の鼓動が激しく鳴りひびいているのであった。
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