第十八話 必殺 正義は勝つ!


              ☆☆☆その①☆☆☆


 次の休みの日、コスプレした二人は、再び屋上へ。

「やっぱり 最後まで撮影したいよね」

「お話は、どうするの?」

 ダーク・メタルが、零ダッシュを裸に剥こうとした時、ナゾのガジェットが降臨して、零ダッシュがパワーアップ。

 ダーク・メタルを倒して正義の勝利。

「って感じは どうかな?」

「うん。なんだかワクワクするわ」

 ナゾのガジェットは、ベルトを購入した時に付いてきた、初回特典のスマフォ型デバイス。

 釣り竿と釣り糸で吊って、カメラに映らない位置でコスプレ葵が操作して、ダーク・メタルの目の前に降臨。

「では零ダッシュを…うむ? なんだこれは」

 変身少女の肌がまさにピンチのその時、天から現れるガジェット。

 手を伸ばした悪の戦士は、聖なる力で弾かれる。

「ぐわああっ! な、なんとっ、強いエネルギーなのだっ!?」

 カット。

 今度は帝太郎怪人が釣り竿を持って、拘束された零ダッシュのベルトへと、ガジェットを優しく触れさせる。 

「こ、この力は…はぁあっ!」

 ガジェットから新たな力を得た変身少女が、手足の拘束を破壊して、ガジェットで新たな変身。

「ぇっと…ち、超変身っ!」

 二人で考えた即興の変身アクションで、パワーアップ。

 カットして新たな場面では、元のスーツの側面などに、金色のテープでラインを彩られた、新たな姿の零ダッシュ。

「ドライバー零ダッシュ・ハートフル(闘志いっぱい)!」

 この名前は葵のアイディアだ。可愛い。

「ゼ、零ダッシュ・ハートフルだとぅっ!」

 悪の礼節に則って、ちゃんとフルネームで反芻するダーク・メタル。

「ふんんっ! その力も、俺が頂くぞおおっ!」

「覚悟しなさいっ!」

 剣道の試合前の礼の如くなヤリトリを終えると、二手三手の攻防。

 悪の攻撃を全て捌いたりかわしたりした少女が、強烈なパンチを放つ。

「ええいっ!」

「ぐはあっ!」

 吹っ飛ばされたダーク・メタルが、必殺技フラグを立てる為に、フラフラと立ち上がる。

「な、なんという…パワー…っ!」

「これでお終いですっ! はああっ!」

ガジェットのスイッチを入れて眩く発光させると、正義のエネルギーが全身を駆け巡る。

「ハっ!」

 正義の少女が、少し高いところからジャンプをすると、片足キックのような体制で、ケンケンしながら接近。

「ぅおおっ!」

 ダメージで身体が動けない感じにうめくダーク・メタルのお腹へと、少女のキックが炸裂をした。

「っぐはあああああああああっ!」

 後ろに向かって大げさに蹴り飛ばされると、更に二転三転と転がって、一瞬グッタリ。

 少女が綺麗に着地をした感じの姿勢をとると、見据える正義の後頭部越しアングルで、悪の戦士が立ち上がって敗北宣言。

「こぉっ、今回は…俺の負けだ…っ! しかし俺はっ、必ず帰ってくるぞおおおおおおおおおおおおっ!」

 一瞬びくっと動いて、バッタリと倒れる。頭の中では盛大に爆発。

 最後に、勝利した正義少女の綺麗なアップで、撮影もオールアップ。

「カット! はい全てOKでーす!」

「ふうぅ…」

 同趣とはいえ、初めて撮影で緊張していたのだろう。

 全ての撮影が終わると、葵は安堵で愛顔を輝かせた。

「お疲れ様。すごく楽しかったよ!」

「うん。私も! えへへ」

 二人のオタクは、心から晴々していた。


              ☆☆☆その②☆☆☆


 それから数日の間、帝太郎は葵と一緒に編集作業。

 撮影した動画をパソコンに移して、編集ソフトで纏めたり、光のエフェクトを加えたり爆発の加工を加えたり効果音を入れたりして、同人としてはちょっと手が込んだ作りになってゆく。

「わぁ…ベルトがエネルギーで光ってるみたい!」

「パワーアップした後だから…うん、名前に合わせて ピンク色のエフェクトにしてみようか」

 なんて話し合いながら、二人の特撮フィルム「ドライバー零外伝 閃光の零ダッシュ!」は、こうして完成をした。

 本編時間も十七分と、同人としてはなかなかのボリューム。

「ここまで作りこめたのも、みんな葵ちゃんのおかげだよ!」

「わ、私も…帝太郎くんのおかげで、凄く楽しかったわ…!」

 二人とも、心から感動していた。

 今日は、もう陽が暮れている。

 帝太郎は、駅前まで葵を送った。

「それじゃ、また明日 学校で」

「うん。映像は、ディスクに焼いて 明日学校で渡すから」

「うん」

 手を振って帰って行く、楽しそうな葵。

 初めてのコスプレ撮影は、とても楽しかったようだ。

 それは帝太郎にとって、とても嬉しい事実。

「さて…ここからだ…!」

 帝太郎には、これからが本当の闘いだった。

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