第十六話 エロす 仰け反る肢体に悪のツメ!


              ☆☆☆その①☆☆☆


 変身スーツの上からとはいえ、少女の乳房に触れる指には、暖かさと柔らかさを、とても感じる。

(あ、葵ちゃんに触れてる…っ!)

 現実なのに、目の前の光景は、なんだか現実味が希薄な感じ。

 ドキドキと胸が高鳴って、それは掌から伝わる葵の鼓動も似ている、と感じた。

 ふいに、フワり。

「っひゃあ…っ!」

 つい、勝手に指が優しく圧を掛けてしまった。

(あっ–だ、駄目だっ!)

 反射的に反省してしまう、悪の戦士。

 しかし少年の脳内では、少女の胸の感触が意識や本能や煩悩へと染み込んで、強く反芻されて離れない。

(女の子の胸ってっ–なんて柔らかくて優しくてっ、Hなんだ…っ!)

 本能からの納得で、更に探求欲が大きく刺激をされてゆく。

 もっと触りたい。

 もっと撫でてみたい。

 直に見たい。

 直に触りたい。

 健全な男子らしい欲求が強められてゆき、今にも爆発しそうな帝太郎。

 同時に「葵ちゃんを傷つけるような事はしたくない」と、どこかでブレーキもかかっていた。

 撮影中のアクションが止まってしまう。

 そんな躊躇う帝太郎怪人に、変身少女は再び、撮影続行のセリフをくれた。

「そっ、そんな卑劣な手段なんかにっ、わ私はっ、屈服なんてっ、しっしませんっ!」

 声が震えているし瞳も潤んでいるものの、このまま進めても大丈夫のようだ。

(葵ちゃんが、オタク根性を見せてくれているんだ! 僕だって…っ!)

 勇気というか、大胆になれそうな帝太郎は、悪の戦士キャラを意識して、果敢にアタック。

「ククク…そうこなくてはな!」

 強く強くドキドキしながら、左手の鞭を大げさに外し、両の悪の手をニギニギして見せ付ける。

「あぁ…!」

 何をされるのか想像してしまう変身葵は、帝太郎怪人の蠢く両手に、心が追い詰められて吐息が乱れた。


              ☆☆☆その②☆☆☆


(葵ちゃんのっ、おっぱいっ!)

 意識と行動が同時進行で、悪の両手が、零ダッシュの双乳をワシっと掴んだ。

「「っ–っ!」」

 二人一緒に息を呑んで、数舜だけ硬直。

 両手いっぱいに溢れる葵の乳房は、さっき触れたよりも更に優しい柔らかさと熱を感じさせる。

 指を受け止める弾力はプニんと柔らかくて、プリンのように崩れてしまいそうなのに、ムニユんと柔らかな弾力で形を維持。

 両掌の指の付け根あたりでは、微妙な硬みの弾力を含んだ、小さな突起も感じられる。

 指が触れた勢いで乳房全体がプルルっと波打って、上からの鷲掴みなのにHな重ささえ感じられた。

 同時に、葵も。

「っ–っ!」

 スーツの上からとはいえ、両の乳房を掴まれ、吐息が止まって心臓がドキっと強く跳ねて、全身がビクっと驚きで震えていた。

 生まれて初めて、異性にバストを触れられて、頭が混乱。

 数舜だけパニックして現状を認識すると、艶めく唇からこぼれたのは、自身の悲鳴と零ダッシュのセリフだった。

「っひやああぁぁぁあああっ–ぃやっ–ダっ、ダーク・メタルっ! け汚らわしいひっ!」

 男子に胸を触られるという人生初のショックの中で、それでもキャラを護ろうとする葵に、帝太郎は感動すら覚えていた。

(なっ、なんて健気なっ!)

 オタクとして、これほど高度な素質を秘めているとは。

 帝太郎が思っている以上の被虐性も兼ね備えている葵。

 少女のセリフと意思に、帝太郎は、自分と葵の願望が、想像以上に近距離だと、あらためて確信していた。

 愛しい女子に触れる興奮と、心の距離が近づいてゆく拘束コスプレで、心臓は更に熱く、ドキドキと高鳴ってゆく。

「け汚らわしいか、ククク。ならばもっともっと、穢してやろうぞっ!」

 緊張と興奮で噛んでしまったけど、マスク越しで変身少女を見下ろしながら、強気に告げた。

 左手を乳房に充てたまま右手を離し、目の前で指をワキワキさせて見せ付けてから、少女の首元、マフラーに隠されたジッパーへと指を忍ばせる。

「っな、何を…っ!」

 変身少女が予想してしまう通りの目論見を、勝ち誇って告げる悪の戦士。

「エネルギーのなくなったお前のスーツを解体するなど、容易い事よ。人間の女は、肌を晒されると羞恥に心をヘシ折られ、闘志を失う生物である事は、俺の体験から承知済みだ」

 言いながら、スーツのジッパーを探して摘まんで、僅かにジジ…と降ろしてみる。

「なっ、あぁ…っ!」

 肌を剥かれるという乙女の危機に、零ダッシュの瞳がドキドキと濡れて、拘束された手足が閉じようと藻掻く。

(あ、葵、ちゃんの…!)

 一気にズバっと下げられないのは、演出や焦らしなどではなく、帝太郎の葛藤の現れだ。

 こんな事して嫌われたらどうしよう。

 葵ちゃんを脱がせている。

 頭の中で、願望と恐れが一騎打ち。

 そんな躊躇いも、葵にとっては帝太郎の焦らしとして感じられて、強烈な恥ずかしさとして抵抗をする。

 それでも全力での抵抗にならないのは、帝太郎の黒ノートを見て「こんな事をされたらどうなってしまうのだろう」と妄想してしまった、Мの本質なのだろう。

 帝太郎怪人の指が、正義のジッパーを、膨らみの頂点を通過させる。

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