第十五話 大胆不敵 悪の恐る恐る!


              ☆☆☆その①☆☆☆


「その惨めな敗北の有様を、世界中の人間どもに知らしめてやるのだ!」

 怪人が、言いながら正面のカメラを指すと、変身少女は何が起こるかを想像させられ、真っ赤になって恥ずかしそうに藻掻く。

「な、何を…っ!」

 拘束から逃れようと手足をモジつかせるものの、しかしパワーを奪われてしまった今、手足を開くチェーンを引きちぎる事など出来ない。

 帝太郎怪人が、三脚ごとカメラを移動させて、囚われヒロインの足下に設置。

 超ローアングルでの囚われ姿の公開により、白いショーツもカメラにINだ。

「くうぅ…っ!」

 恥ずかしさで小さく嗚咽する零ダッシュ。

 同時に、帝太郎の黒ノートを見た事で、こういうシュチュも想像していたであろう葵の瞳は、恥辱と興奮でシットリと濡れている。

 吐息もドキドキと乱れ始めていた。

「では、まずはアングラでの公開といこうか」

 いきなり世界公開とかではなく、噂程度の極めて狭い範囲での電波発信による恥辱公開。

 逃げ場を残す事で、あえて変身ヒロインの心に抵抗の余地を残し、更なる責めを楽しもうという、悪の悪趣味だ。

 という設定を、短い一言で伝える帝太郎怪人。

「こ、こんな…っ、事で…っ!」

(おおっ、さすが葵ちゃん! こっちの意図を理解してくれてる!)

 まだキャラクターを保っているという事は、本気でイヤがっているワケではない。

 悪のカメラによる、開脚拘束で純白ショーツを隠せない零ダッシュの敗北姿を、ほぼ真下からのアングルで撮影開始。

 ダーク・メタルの遠隔操作という設定で、帝太郎自らがカメラを操作し、全身撮影から美顔のアップ、バストやお腹、そして下着のアップへと、カメラが移動し、撮影してゆく。

「こんな無様な姿、特にお前を信じている子供たちが見たら、どれほどの絶望感に突き落とされるか…フフフ」

「ひ、卑怯者ぉ…うぅ…っ!」

 ただ性的な感じだけで責めるのは、変身ヒロインジャンルとしては失格だと、帝太郎は確信している。

 性的でもあり変身モノでもある以上、変身の方でもピンチは必要。

 なので、ダーク・メタルは悪の右手のツメを、少女にとって心の支えでもある、変身ベルトへと伸ばす。

「このベルトを破壊すれば…お前はもう二度と、戦う事などできなくなるなぁ…」

「あぁ…っ!」

 変身ヒロインとしての弱点を、強力な悪のツメでガシっと掴まれる。

 帝太郎はわざと右手をプルプルさせて「ベルトを破壊しようとしてます」的に、葵へと見せ付ける。

「ベ、ベルトが…っ!」

 人々を護る力の根本が破壊されそうになり、さすがの零ダッシュも焦燥に戸惑いを隠せなかった。


              ☆☆☆その②☆☆☆


 悪の一手は、しかし当然、無効化される。

 ダーク・メタルの右手に突然、凄まじいショックが与えられた芝居。

「ぐわぁっ–な、なんだっ、このエネルギーはっ!?」

 右手が痺れます的に軽くフラつきながら、帝太郎怪人が設定を説明。

「そうか…そのベルトをお前に託したのは、お前の姉だったな…。お前の姉の意思が、お前とそのベルトを いまだ護り続けている、というワケか…!」

「お、お姉ちゃん…!」

 突然に告げられた設定だから、肝心の姉の名前が出てこないものの、それでも葵は設定を受け入れていた。

「ならば…お前自身を俺の物にしてしまえば、済む事よ…!」

「えっ…!」

 ダーク・メタルの邪眼が、二人の脳内ではギラりと光る。

「お前の肉体と心を俺のパワーで染め堕としてしまえば、ベルトの力は俺の物も同然…クックック!」

 言いながら、悪の右手が拘束少女の身体へと伸びてゆく。

 女性に触れる事そのものが初めての帝太郎だから、悪の戦士とはいえ、その手は芝居ではなく緊張で、プルプルと震えていた。

「ぉ、おやめなさい…うぅっ!」

 まだこの段階では、キャラを保っている。

(少しずつ…少しずつ、近づけて…)

 葵ちゃんに触れたい。

 嫌われたらどうしよう。

 そんな葛藤に責められながら、健全な男子としての意思は、愛しい少女の未知なる存在に、触れたくて堪らない。

「ぁ…あ…!」

 少年の手が近づいてくる少女も、緊張と恐れと、自分でもよく分からない高ぶりで、不思議と身動きが出来ずにいる。

 上へと突き出される豊かな双つの膨らみに、悪の黒い手がジワジワと接近。

 十センチ…八センチ…六センチ…。

 少年の躊躇いが焦らしにもなって、少女の被虐心がドキドキと高鳴ってしまう。

 一センチで、僅かな躊躇い。

 そして。

(いっ、行けええっ!)

 意を決した少年の手が。

「ま、待って帝–ぁああっ!」

 葵がキャラを忘れそうになるのと同時に、少年の手が、膨らみへと触れた。

 ふに…。

 初めて触れた、少女の乳房。

 柔らかくて大きくて、しかし少年の掌に少し溢れるくらいに収まる、絶妙な大きさ。

(ふっ–触れたあああっ!)

 衣装の上からでもわかる暖かさと、少年の指を柔らかく受け止めるタプタプの弾力。

 力加減が解らなかった帝太郎の掌は、つい強めにバストを掴んでしまっていた。

「ぃ痛っ–はぁあ…っ!」

(あっ!)

 痛いと聞こえて、慌てて力を抜く。

 それでも、悪の右手は零ダッシュの乳房を離そうなどとは、決してしなかった。

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