第十三話 猛攻 ダーク・メタル!
☆☆☆その①☆☆☆
数々の悪を葬ってきたであろう必殺パンチを受けて、怪人はその爆発力で後方へと跳ね飛ばされて、背中から転倒。
こういう時でも、黒いスーツが白い埃で汚れる事もためらわない、帝太郎怪人だ。
数歩とバックして尻もちを着きつつ、更にゴロりと一回転。
「うぅっ…フ、フフ…思った以上に、やるではないか…っ!」
強気な言葉で返しながら、少しフラついて立ち上がり、ダメージアピールも忘れない。
必殺の一撃に耐えた悪の戦士の強さに驚きながら、正義の少女は更に必殺の決意。
「こ、今度こそっ、これで最後よっ!」
という一言で再び必殺技を構えた零ダッシュ。葵は、逆転ピンチへの完璧な流れを披露していた。
「覚悟しなさいっ! ドライブ・ブレイクーーーーーっ!」
オリジナル、ドライバー零の必殺技だ。
つまり再逆転用の、別なる必殺技があるのだろう。
(葵ちゃんが考えたオリジナル技かな? だったら楽しみだ!)
正義のヒロインの必殺技をワクワクで待ち焦がれる、悪の戦士。
変身少女は、精いっぱいらしい小さなジャンプをすると、そのまま滞空している気分で、左足でケンケンしながら、正義のエネルギーキックを放つ。
ケンケンしながら、パワーを全開にする掛け声も忘れない。
「ハァァアアアっ!」
二人の脳内では、零ダッシュの右足が眩いエネルギーで包まれていた。
「うおおっ!」
正義の攻撃に驚愕する怪人。
というわけではなく、開脚姿勢での接近で、怪人の視界には捲れたミニスカから覗ける白いショーツと、連続ジャンプで小刻みに弾む柔らかな豊乳の姿が。
(葵ちゃんの生パンとおっぱいっ–しかしっ!)
このまま倒されてしまっては、ただイキっただけのダーク・メタルになってしまう。
パンチラ乳揺れワールドから必死に戻ってきた怪人は、素早く身構えて、右手のメカハサミを突き出した。
「見切った! どぉぅぁぁあああああああっ!」
「ええっ!?」
意表を突かれた零ダッシュ。
正義のキックと悪のツメがぶつかった瞬間、接触面で膨大なエネルギーの反発と稲妻が、二人の頭の中では発生。
必殺のキックが無効化される事実に、変身少女が驚愕をする。
「ひ、必殺キックが–きゃあぁっ!」
正しいセリフを叫びながら、弾かれたキックのエネルギーで後方へと弾き飛ばされる零ダッシュ。
数歩と後ろ歩きで下がると、コロんと転げてお尻を付いて、背中からバタりと倒れる。
帝太郎のコスプレ魂に触れたためか、葵も、屋上でスーツだけでなく艶やかな髪が汚れるような転倒も辞さない。
「むううっ?!」
強烈なパワーを出した脱力感の演技ではなく「変身少女は転倒して両脚が僅かに開き、ショーツの股間部分がハッキリと見えて、陽光によるグラデーションで薄く食い込みまで確認できた」事への、興奮の吐息だった。
☆☆☆その②☆☆☆
数秒で我に返った悪の怪人は、右手のハサミがダメになった演技で、状況を進める。
「クックック…驚いたか、零ダッシュよ!」
ダーク・メタルのメカハサミは、キックとの相殺で破壊された設定で、少しグリグリと弄ってからハサミを外す。
「で、でもこれでっ…あなたの武器だって…ええっ!?」
ハサミを失った右手からはしかし、メカメカしいディタールが施された黒い手袋パーツ「悪の右掌」が姿を現す。
まだ葵には見せた事なかったから、素での驚きも混じってて、可愛い驚愕フェイスだ。
悪の右手は、市販の手袋に切ったゴムチューブを接着してメカ指や小さなツメになっていたり、必要なのか疑わしい短いチューブが走っていたり、エネルギーコアらしいクリスタルパーツが嵌められていたりで、なかなか悪そう。
実は左手の鞭の下にも、同じような「悪の左掌」が、使うかどうかはともかく装着済みである。
「残念だったなあ…クックック!」
「そ、そんな…!」
ダメージを返されてヨロヨロと立ち上がった正義の少女は、必殺技が通じなかった事や、初めて見た右掌への恐怖を、大きな瞳を濡らして焦燥していた。
「ツ、ツメが…あなたの右腕なのでは…っ!?」
説明セリフをちゃんと振るコスプレ少女の、レベルの高さよ。
帝太郎怪人は、悪の右掌を高々と見せ付けながら、悪そうに、しかし戦士として笑う。
「コイツが本当の右腕だ。あのハサミはむしろ、俺のパワーを押さえる拘束具みたいなモノだったのさ! ハッハッハ!」
悪の説明が終わると、ピンチ感にドキドキらしい変身葵が、お尻をついたまま後ずさる。
「く…っ!」
必殺技を破られ、そのエネルギーまで浴びせられ、パワーを大きく失った零ダッシュ。
悪の戦士は、それでも油断なく勝利へと突き進む。
「今度は俺の番だ! 百%の力を喰らえぇっ!」
ある意味、葵が一番ドキドキする場面「悪の反撃」開始だ。
帝太郎怪人が、走りながら左手の鞭を、コスプレ葵の頭上へと、フワりと泳がせる。
すぐに意図を理解した少女が鞭をキャッチして、引き上げられて立ち上がりつつ、その場でヨロヨロと回転しながら、細い首に巻き付ける。
「あうう…っ!」
ピンチスタート。
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