第十二話 壮絶 屋上の激戦!
☆☆☆その①☆☆☆
撮影が始まると、葵は帝太郎怪人の挑発に対して、カメラを意識して、ノリノリで返してきた。
「あ、あなたに屈辱を味わわされた女性戦士たちの仇っ、私が討ってみせます!」
(じょ、女性戦士たちの屈辱っ!?)
少女のセリフに驚きながら、胸をときめかせてしまった。
どうやら、ダーク・メタルが言い放った「可愛がってやる!」というベタなセリフが、ピンチ好きの耳にはH系な状況ゼリフとして聞こえたらしい。
それは多分に、優しい少女に対する、欲望溢れる黒ノートの影響もあるのだろう。
零ダッシュの可愛らしい返答を受けて、俄然、やる気で燃えてくるオタク少年。
再び悪へとカメラを向けて。
「フンンっ! 逆にっ、お前も屈辱の沼へと静めてやるわっ! 覚悟するがいいいいいっ!」
引きのカメラ位置に変更して。
「いくぞおっ!」
右手のハサミを振り上げながら、身構える正義の少女へと、ダーク・メタルが走り寄る。
対する零ダッシュは、いかにもアクション初めてらしい、力強さの無いファイティングポーズだ。
怪人の背後方向から風も吹いてきて、向かい風の変身少女が、更に格好良く引き立つ。
「むむっ!」
気合を入れると、女子的には全力疾走よりも遅い駆け足で、駆け寄りながらパンチの構え。
(ダッシュパンチか)
場面として、鉄のハサミをすり抜けてのパンチが格好良いので、帝太郎怪人はあえて大きく「これから振り下ろしますよ」と、解りやすいくらいに、ツメを振り回した。
一メートルよりも近い距離まで接近すると、葵が少しタイミングを計って、ツメを避けつつパンチの一撃。
「ええいっ!」
後ろに引いた右腕を突き出すタイミングで、スーツの包まれた大きなバストがタプンっと揺れる。
「わっ–ぐは!」
揺れるバストに思わず視線が奪われて声が出てしまったものの、すぐにハっとなって芝居を続行。
弱々しいパンチが胸にヒットした直後に、上体を大きく仰け反らせる悪の戦士。
ポカっ!
「おおっ–ぐわあっ!」
更に威力のある設定のパンチに、悪戦士の足も止まる表現だ。
怯んだ怪人に向けて、変身少女は怒涛の連続攻撃。
距離を詰めつつ、左、右、更に右と、パンチのラッシュを浴びせる。
「ヤっ、ハっ、とぉっ!」
叩かれるダーク・メタルが後ずさり、零ダッシュも合わせてジリジリと前進。
打撃の楽しさか、更に少女初めての回転キックが炸裂する。
「とおぉぉおっ!」
左足を軸にして、全身を回転させてのキックをお見舞い。
葵は気づいていない様子だけど、拡げた脚でミニスカートが捲れ、白いショーツがチラりと覗けた。
ヨロヨロとした回転によって、大きな乳房がまた弾んだり。
「グゥっ、ガハっ、グォオオっ!」
打撃に合わせて、背中を丸めたり頭を上げたり。
最後のキックで、背後に向かって派手に転がる。
パンチもキックもあまり当たってないけど、攻撃受けこそ、悪役の腕の見せ所である。
帝太郎の転倒に、攻撃していた葵の凛々しい表情が、心配げに戸惑う一場面も。
転げた帝太郎怪人は、そんなコスプレ少女のスカートが風で捲れて白いショーツがチラ見えして、ラッキー。
(あっ、葵ちゃんのパンツっ!)
ほんの一瞬だけど、健全な少年の本能は、その状況を細かく脳に焼き付ける。
屋上の床の反射光も受けていたショーツは白色で、アクションの為か、中央に薄く食い込んで細い筋を魅せてもいた。
「な、なんという破壊力っ!」
つい公私混同な怪人のセリフを、少女は素直に打撃の威力だと理解した模様。
予定通りの二手~三手が進み、ここからは悪の逆転、ヒロインのピンチへと移るタイミングだ。
☆☆☆その②☆☆☆
玩具初心者とはいえ、映像媒体は見ている葵だから、悪に逆転される布石は心得ていた。
必殺技をかわされたりしての、悪の反撃攻勢。これが一番、ヒロインのピンチにドキドキ感を高めるシュチュエーションである。
「とどめよっ!」
後の再逆転を考えると、このくらいの「ちょっと調子に乗ってる感」なセリフが丁度いい。
(葵ちゃん、僕が思っていた以上にレベルが高いぞっ!)
逆転フラグもバッチリ。
可愛い同趣の同士の存在で、心からワクワクする帝太郎。
零ダッシュオリジナルの必殺技のようで、全身を一回転させながら、両手を合わせた全力パンチ。らしい技。
「零ダッシュ・ストリーーーーームっ!」
合体パンチを突き出して駆けてくる姿は、勇ましいというよりも。
(かっ、可愛いいいいいいいっ!)
そのまま受けて大爆発する事も幸せ。みたいな心境の帝太郎怪人だけど、それでは葵の努力を無にしてしまう。
ドライバーシリーズの伝統として、最強の必殺技は飛び蹴りである。
だから葵も、逆転の流れも含めて、オリジナルのパンチ技を放ってきたのだから。
(エネルギー系だな)
タイミングよく立ち上がりながら、きっと葵の頭の中ではエネルギーに包まれているであろう必殺パンチを、身を屈めて受けた。
「っぐぅぉおおおっ!」
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