第九話 颯爽 零ダッシュ登場!

「……お…っぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」

 恥ずかしそうな少女戦士の登場に、帝太郎の魂が感涙する。

 愛顔を隠さないヘルメットは変身少女らしさが全開で、戦うけれど儚そうな感じが、このうえなく表されている。

 細い首に巻いた赤いマフラーも、勇ましくて愛らしい。

「あの…む、胸…なんだか、強調されてるみたいな 気がするけど…」

「いやいやっ、そう感じるのは葵ちゃんのプロポーションが綺麗だからだよっ!」

 少年の素直な感想に、葵は頬を赤らめる。

 帝太郎のオタク超能力が視力だけで採寸した黒と緑のスーツも、バストが微妙にキツくてウェストが微妙に余ってて、つまり完全にピッタリ。

 豊乳を覆うカップ部分も、少女の恵まれた膨らみを柔らかく、しかしシッカリと包み込んでいて、大きさと存在感を十分以上にアピールしている。

 長袖に包まれた上腕はピッタリフィットで、腕の細さとシルエットが美しくも露わにされている。

 前腕も、ちょっと大きめで肘までの長さな手袋で包まれていた。

 ミニのスカートも超ギリギリで、正面から見るとスカートのフチのラインで、どうにか下着を隠している感じ。

 お腹に捲いたベルトが男児向けなあたりも、女体化アレンジの神ポイント。

 葵は帝太郎に対して軽く横向きになると、恥ずかしそうにやや俯きながら、スカートのお尻を軽く抑えた。

「ス、スカート…ちょっと 大胆すぎないかな…?」

「葵ちゃんは脚が長いから、黒系の色と相まって凄く似合ってるよ!」

 帝太郎は、本当に無意識にアンダースコートを用意し忘れていた。

 なので、少しでもローアングルになったら、変身少女の自前ショーツがチラりと覗けてしまうだろう。

 スカートに危うく隠されているお尻も、丸く大きく形を浮かせて魅せている。

 お尻の柔らか脂肪でスカートが持ち上げられている感じが、また堪らない。

 剥き出しの腿は艶々で、ムッチリと根本まで露出。

 恥ずかしそうに閉じ合わされた両膝も細く、柔らかい曲線で続く脹脛から、ちょっと太めの長靴へと続く。

「手袋とブーツ、ちょっと大きい感じなのね」

「うん。変身した葵ちゃん自身が、可愛らしくて護ってあげたくなる成分も全開な少女戦士だからね!」

 女子用とする際に、手足の末端を大きめにアレンジしたのは、その方が、小柄な葵がより小さく可愛らしく映えると考えたからだ。

 そしてその妄想は、変身した少女戦士を予想以上の、変身少女天使へと昇華させてもいた。

 人生初のコスプレに、葵は瞳が潤んでしまうほどに興奮している。

 色々と恥ずかしい箇所も、帝太郎の正直な言葉で喜びに変換されているようだった。

「それにしても、この衣装ってサイズがピッタリ。コスプレって初めてだけど、なんだかすごくドキドキしちゃうな…」

 言いながら、上機嫌でクルりと一回転。

 マフラーがフワりと靡いて、ミニスカートがギリギリまで広がって、もう帝太郎には眩し過ぎて、帝太郎の中の全帝太郎が合掌してしまう。

(……おおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁああああああああああああ……っ!)

 正義の少女がクルりと一回転しただけで、悪の戦士が完全敗北。

 感動して言葉も出ない帝太郎に、葵はちょっと不安そうな表情を見せる。

「あ、あれ…私 どこか変かな…?」

「そっ、そんな事ないよっ! こんな完璧な変身美少女っ、番組の中でも見たことないっ! 葵ちゃんは、完全無欠なコスプレ天使だよっ!」

 魂からの大絶賛が出る、悪の戦士。

 怪人少年の熱意と言葉に、コスプレ少女の愛顔は真っ赤に上気してしまう。

「あ、あ…ぁりがと…。こ、皇上くんの怪人も、凄く強くて悪そうっ!」

「えへへ。あ、僕たちの身長差も、いい感じだね!」

「本当ね。うふふ」

 葵の頭が、帝太郎の胸の辺りだ。

 二人でのコスプレに、葵もウキウキしているのだろう。

 笑顔で正面から並んで、帝太郎怪人の胸に頭を寄せたりして、身長差を確認したり。

「–っ!」

 女子とこんなに接近したのなんて初めてで、心臓がドキっと跳ねた。

「帝太郎くんって、やっぱり背が高いんだね」

「ま、まあ…あはは」

 下から見上げてくる変身少女が、可愛くて戸惑う。

 決して触れてはいけない禁断の果実が、目の前で無防備に笑顔を魅せているのだ。

 いつの間にか名前で呼ばれている事にも気づけないくらい、帝太郎は見惚れてしまっていた。

「そ、そ~、それじゃあ写真、と、撮ろうか」

 これ以上見ていたら、心の中の悪が、独占欲をエロスな意味で押さえられなくなりそうな少年だ。

 そんな少年心理に気づく事なく、少女は初めてのコスプレ撮影にドキドキが止まらない様子。

「う、うん。なんだか恥ずかしいな…!」

 室内で、まずは変身少女が変身完了のポーズをとって、数十枚。

「えっとっ……っド、ドライバー零 ダッシュ~っ!」

 なるべく凛々し気な、しかし恥ずかしさを隠せない愛顔で声にした名前は、自分で考えたのだろう。

 可愛い。

 こうして、新たな変身ヒロイン「ドライバー零ダッシュ」が、戦場に舞い降りたのだった。

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