第六話 歓喜 同趣の同士!
☆☆☆その①☆☆☆
翌日、登校してきた帝太郎は、朝の教室で、葵と目が合った。
「お、おはよう」
「あ…おはよう、皇上くん」
(ぅおっ!)
予想していた以上にハッキリと返事が貰えて、逆に一瞬うろたえてしまったオタク少年。
他の男子たちには気づかれなかったけど、女子たちは目ざとく、小声でヒソヒソと葵に突っ込み始めた。
「あら葵、皇上くんと何かあったの?」
「えっ–べ別に、何もないよ…っ!」
「その慌てっぷりもだけど、あんた今まで 皇上くんと挨拶すらした事、無かったでしょ~」
「そ、そんな事ないよ~」
と言いつつ、小さな両掌をブンブン振っている様子なんて、あからさまだ。
やっぱり嘘をつけない性格なのだろう。
帝太郎は帝太郎なりに、とぼける葵に理解を示す。
(常識人の目から見れば、オタク趣味なんて 幼稚か理解不能かの二択だからね)
同じ趣味だと理解し合っても、クラスのみんなの前で堂々とオタク談義に花を咲かせるなんて、出来ない。
と、一人納得している帝太郎にも、幼馴染の目ざとい友人たちからの突っ込みが来た。
「なんかいま風間っち、お前と挨拶してなかったか? 帝太郎よ」
「ヘビオタの帝ちゃんが女の子と挨拶するなんて、今日は台風か?」
とか、晴天の空を見上げて真剣に疑問符。
「たまたま挨拶できたくらいで急に台風かよ!」
友人との馬鹿話をする帝太郎を、葵もチラと見ていたりした。
自分の席に着席すると、昨日撮った写真をスマフォへと転送した時に教えてもらった葵のアドレスに、密かなメール。
(件名・返事はいつでもOKです。内容・昨日買ったベルトと特典は試しましたか?)
「ま、いつも友達に囲まれてるし…放課後にでもならないと返事は–うわっ!」
とか覚悟していたら、すぐに返事が来た。
帝太郎、人生初の、女子とのメールやりとり。
(お風呂の後、帝太郎くんに教えてもらった通り電池を入れて、変身しちゃいました! 鏡を見ながら、頭の中ではドライバー零ガール! 女子スーツがあれば良いのにって、つくづく思います。あ、お風呂上りでベルトっていっても、裸のままじゃないからね! ちゃんとパジャマ着てたんだからね! 本当なんだからね!)
送信直後での、この文章の長さに、まず驚いた。
「それにしても、お風呂……」
☆☆☆その②☆☆☆
ヘビオタは十年を経過すると、超能力者へとレベルアップする。とか、しないとか。
ヒーローオタクと同時に特撮オタクでもある帝太郎は、子供の頃から映像を見慣れているからか、男女を問わず、役者さんのボディサイズが、見て大体わかる。
「…葵ちゃんは、だいたい身長一六五センチで、上から九五、五四、九三…って感じだよな」
オタクの超能力によって見抜いた葵の裸で、シャワーシーンが目に浮かぶ。
セミロングの頭髪を綺麗に流し、ツルツルの肌を温かい湯が滑り落ちる。
肌で弾けたシャワーのお湯がキラキラと輝き、柔らかくて大きい胸のふくらみに沿って、双つの肉山を濡らす。
細い背中とウェストは、適度に引き締まった括れを魅せるように、湯を零している。
柔らかい皮下脂肪を含んだ肌の曲面を、室内照明の反射で扇情的に見せ付けていた。
美しいラインの下腹部や広い少女腰、年頃少女としては恵まれたふくらみのヒップも、暖かい湯に撫でられてツルツル。
閉じた隙間が小さそうな、プニプニであろう内腿から、細い膝を通り抜けて引き締まった脹脛から細い足首へと、湯に洗われる葵の肢体。
(なのにっさらにっ、変身ベルト…っ!)
メールで注釈があったけど、想像では、お風呂上りの全裸に変身ベルト。
五四センチのウェストにベルトを捲いて、足を肩幅まで開いて変身ポーズ。
動きに合わせてプルんと揺れるバストや、捻られた細いお腹、ちょっと突き出した感じのヒップが、堪らなくHだ。
「いいなぁ…あはは、あ」
などと想像していたら、机の下で健康男子の健全な反応が強く起こってしまった。
「やばっ–落ち着け落ち着け。ドライバーZⅢの第二十六話『恐怖の山姥伝説』のヤマンバギャル怪人を思い出すんだ…ブツブツ」
特にデザインと態度が最低だった女怪人を思い浮かべ、全身を賢者モードへと強制移行。
「ヤマンバ? 何?」
何やら瞑想しつつ独り言を零す男子に、通りかかった女子たちは怪訝そうな表情を見せていた。
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